33話 実食、ようこそカレーの沼へ。


 昼前に白金達が、昼過ぎに武装神官達がダンジョンから戻って来たので白金達が持ってきてくれたお土産を使った。

 カレーと言うには色々足りないが、深みは無いが辛さと風味あるものはできた。

 クミンとコリアンダー、そして黒胡椒と塩を小袋でゲットした以上作らねばならんだろう?

 全然足りないのは分かっている。

 完成品にはほど遠いと材料と力不足は悔しい。

 だが、部隊で購入した僅かばかりの乾燥野菜の中に乾燥玉ねぎがあったから作りたくて作った。後悔はしていない。

 それに何と言っても干し肉に使われているスパイスが赤唐辛子とローリエ、塩、蜂蜜等なので…使える!と思った。

 結果は…大惨事となった。

 白金達は何処からともなく少し小さめの鍋を用意して上下に揺れまくるし、一人一皿と言ったのに全員2杯目を狙うし…ロティも狙うし…

 ルイや皇法国の連中の分が無くなるだろうが…って、なんでそっちの雑務神官が残念そうな顔をするんですかねぇ?



 武装神官達からの報告ではトラップもモンスター異常発生も見られなかったとのことだが、片道一時間半程度の範囲なので何とも言えないそうだ。

「通常モンスターと遭わないモノなのですか?」

「いえ、通常であればこのダンジョンは30分探索すれば1~2体は襲いかかってくる程度との事でした。ただ、採掘者がいたとのことでしたので其奴らが狩ったのであろうと判断しました」

 んっ?

「狩れる程度のモンスターなんですか?それに、そんなに出ないものなんですか?」

「?はい。浅い階層にいるモンスターはそこまで大型では無く物理攻撃にはそこそこ強いですが、問題無く狩ることが出来ると」

 言い方が悪かったか。

「一般人でも狩れるんですかね?それって」

「…………ああ、そう言う事ですか」

 漸く察することができたようだ。

 基準が基準なだけに気付かないよな…これ。

 俺らは被害者が目の前にいたから被害者の声だけを聞いて判断したが、相手の言い分もあるよな…

「まあ、何とも言えないですけどね」

「ところで…今日の夕食も昼の物が良いのですが…」

 ラナ、まだ昼食食べて30分経ってないだろうが…まあ、そのつもりで作ったから問題無いんだが。

 俺はまたロティ造りに勤しむ羽目になった。



 夕食少し手前に皇法国実戦部隊とルイが戻って来た。

「ただ今戻りました…」

 ああ、ルイがなんか疲れてるぞ?

「グダグダでした。全員が全員中途半端というね…」

 えっ?どういう事だ?

「まず商国ですが、国自体は禁止していますが形だけで調べる気も無い状態でした」

 その時点でアウトだろ。

「次に商団隊ですが、足りない物を確保するためにここに入り暫く採掘をしていたようですが、目を離した隙にナーパが居なくなり、慌てていたところをモンスターに襲われ負傷者を出しながらも退治。彼等は仕方なく引き上げてきたそうです」

 まあ、それはそう言い訳出来る範疇だが、ほぼ事実なんだろうな。

「そしてあのナーパ・セ・ロスですが、落ち着きの無い子の様でして…先の商団隊の話を別室で聞いたあと彼女の行動を聞いていると…商団隊の話と一致しました」

 うわぁ…

 アスハロアが無茶苦茶微妙な顔してるし…

「ただ勝手に入った挙げ句闇採掘をし、人を取り残す行為はあってはならない事ですので商国側もここの踏破に対して文句を言えなくなりましたし、商国内のダンジョンに入るフリーパスも頂きました。

 お詫びとして色々皇法国側にちょっとした物資援助に同意して貰いましたし、商団側からは神子様のリストにあった物の半数は手に入れましたよ」

 そう言ってルイはニヤリと笑った。

 …これ、多分ルイがひたすら交渉しまくったんだろうな…

「お疲れ様。因みに半数とは?」

「野菜類と、調味料、穀物類の追加などですが…調味料が高過ぎたので安い調味料と野菜類、三級挽き麦を購入しました」

 メモを返され、それを見ると購入量が書き加えられていた。

 おっ?トマトと玉ねぎ、あと乳脂もある。よし、あまり良くは無いがカレーに追加投入するとしよう。

 干し肉で味を調えればイケルイケル。

 俺はルイから荷物を受け取り、急いで食材を追加投入した。

 数人から「えっ!?」って顔をされたが知るか!そんな顔されたら食わさんぞ!?

 10分くらいすると俺の周辺でウロウロとし出す鬱陶しい集団ができた。

 ふははははは!この香りだ!再現性はまだまだだが近付いてはいるぞ?

 そして残りのロティを一気に焼いていき…結構な枚数になった所で白金達が戻って来た。

 また鍋を持って。

 なんだろう、非常に申し訳なさそうにソッと鍋を差し出してきているんだが…貴方達の方が余程善性がたかいんですが?

 俺は出来上がったカレー擬きをその鍋にたっぷり入れ、ロティを5枚渡す。

 白金達は何度もお礼を言うように上下に揺れて消えた。

「ああっ、我々のおかわり分が…」

「そんなものはない」

 だいだい20センチくらいあるロティ2枚とカレー一皿半食ってまだ足りないと申すか。

「神への捧げ物に対して文句を言わないでください」

 ───その日は全員カレー擬き二皿とロティ2枚を食べきった。


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