3.ダンジョンとの戦い、人との闘い

31話 突撃、ダンジョンで遭遇を求める我々は間違っているんだろうか


 目的のダンジョンまでは予定より早い2日で到着した。

 途中耳長ウサギを見たが…あれ、地球人が見たらトラウマになるぞ?間違いなく夢にでる。

 毛深くてごつい腕。それが兎の耳代わり。

 それがどしどしと歩いてくる。

 本体はブランブランしている。

 それだけなら良い。

 その耳で木に登る。カサカサ走る。

 指先は器用に動かないと聞いたが…うん。

 これは、ない。

 本体が腕だとしか思えないレベル。もしくは腕は寄生生物。

 ───忘れよう。今は。

 で、現在。

 ダンジョン前の広場でスタンバイ。

 突入班と基地設営班に別れるとの事。

 今日突入班がすることは入って周辺の確認とモンスターの変化が無いかチェックすることだそうだ。

「相手にこちらの情報がどれだけ漏れているか分かりませんが、今日の偵察探査は武装神官が2人1組の3チームで行います」

 ということは本格的なダンジョンアタックは明日からか…

 少し緊張はしていたが、息を吐き気持ちを切り替える。

 今日中に瞑想と循環を行い取り込めるだけ力を取り込もう。

 そして何よりも食生活の改善をしなければ…!

 干し肉と乾パンだけというのは健康上あまり宜しくない。ドライフルーツや乾燥野菜もない。

 何より乾パンが嵩張るのに硬すぎるのが一番の問題だ。

 穀物袋には小麦1袋と全粒粉1袋がある。

 普通に外で作れば良いんだが…通常の大鍋が1つしかない。

 せめて中華鍋があれば…片手でも両手でも良い。

 設営をしながらそんな事を考えていると雑務神官がやってきた。

「何かご不便ごとですか?」

「不便というわけではないのですが、鍋が欲しいなと思いまして」

「鍋、ですか?」

 やはり不思議そうな顔をされた。

 そこで形状の説明をし、そう言った鍋があるか聞いたところ、

「その形状ですと…ロビロンド鍋ですね。片手両手どちらもあります」

 あるのか。

「商国で販売しておりますので「お使い、行く?」」

 パールがヒョコッと姿を現した。

「雑用もしていたから、商国のお店、分かる」

「ああ、竜族は商国に入国する際手続き不要ですから」

「…少し頼んでも良いか?」

 金貨5枚渡して依頼する。

「ロビロンド鍋、大きめで片手でも両手でも良い。金貨5枚で買えるモノ」

「ああ、お願いしても?無ければ無いで大丈夫だからな?」

「任せて。行ってくる」

 パールはそう言って姿を消した。

「…平均価格は金貨2~3枚ですが、結構ギリギリの価格かと。竜族相手にぼったくる奴なんてそうそういないと思いますから、まあ妥当な金額でしょうね」

 雑務神官はそう言って作業に戻っていった。



 一時間もしないうちにパールが金貨5枚で目的の鍋を2つ買ってきたのでメッチャ褒めた。

「主様、これで何を作るのですか?」

「チャパティを作ろうと思う」

「ちゃぱてぃ?」

「うん。まあ、思い出しながらだけど…明日はロティで良いかな」

 俺はそう言いながら記憶を頼りに作り始めた。

 食の細い弟に興味を持ってもらえるように色々な料理を作った。

 洋食、和食、アジア、中近東…様々な料理を作って食べさせていた。

 まあ、10歳からの手習いというか、出来るレベルからコツコツとだが。

 カレーも作り、カレーにナンとライスも作ったが、その時チャパティとロティも作った。

 妹からはカレーライスの方が良いと言われたのでアレ以降作っていないが…

 全粒粉はある。塩、水もある。ならば作れる。

 生地を寝かせる時間は必要だが発酵はさせなくて良い。

 全粒粉に塩をひとつまみ入れ、水を少し加えながら捏ねる。

 ひたすら捏ねて耳たぶくらいの硬さと言えば良いのか?そのくらいになるまでこね続けてまとまったら切り分ける。

 だいたい団子より少し大きく分け、2~30分ほど寝かせる。

 寝かせなくても良いが、その間に鍋を温めたり他の事ができるので俺は寝かせる。

 そしてピザ生地の如く…いやそこまでは広げないが、適度な薄さになるまで丸く広げ、焼く。

 以上。

 時間は掛からないし多少は作り置きも出来る。そしてパン代わりになる。

 と、調子に乗って30枚ほど作ったが…全員からジッと見られている。

「………味見、して見ますか?」

「是非!」

 その場に居た全員が俺に群がった。


 12名に12枚渡すわけにも行かないので4等分して食べてもらったが…もの凄く人気だった。

 あっ、やっぱり堅パン嫌だったのか…あれは本気非常食扱いで良いと思うんだ。

 雨で何も出来ないときとか、他の食糧が尽きたときとかで。

 作れるときに作る。それが一番…

「作り方?いやそんなに難しいことではないですが?」

 何この状況。

 全員無茶苦茶興奮しておりますが?

 作り置きを全員が狙ってる…いやあんたらこれから食事作るんだろうが。味見は良いから───

「全班戻りました!行き倒れ1名救助しました!」

 ああ…何というタイミング。

 彼等にもお裾分けをしないといけないのか…

 いやちょっと待て。その行き倒れは本当に人か?

「怪我の様子は無く空腹による行き倒れのようです。簡易確認も行いましたが、討種兎人族に間違いありません」

「分かりました。ちょうど今お試しに作った物が出来たので皆さんも味見をどうぞ」

 そう言って武装神官に四等分、その兎人族の女性には半分を渡した。


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