23話 通達、あるいはインフルエンサーの口コミ
そう言えばコイツ自分の事を麻呂って言っていたが…自動翻訳的なナニカか?
鐘の音を聞きながらそんな益もないことを考えていた。
そんな中、教皇が静かに告げる。
「───神託が、下されました。これから申し上げる事に対し異議があるのであれば3日以内に竜族の族長及び竜神官へ異議申し立ての上認められた場合のみ意見を聞くものとする。竜族次代族長候補マァオ・サンミ。エセ麻呂の称号と共に神を挑発せし者の称号を下す」
「ほ…エセ、麻呂が、エセ?嘘じゃ…そうじゃ、自己鑑定を……………ほわああああああああっ!?次代族長候補の称号も消えておじゃるぅ!?」
悲鳴を上げる麻呂。もしやマァオの部分が麻呂変換か?…可能性あるな。
「次、次代族長候補お目付役セキ・コノエ。ムッツリショタスキーの称号と共に役目を放棄せし者の称号を下す」
「………」
セキの方は何も言わず頷いた。いやそれで良いのか?
ムッツリショタスキーって…アレ?もしや俺ロックオンされているのか?
ずっと俺を見ているのは、それで?
「最後に、次代族長候補護衛パール・ヤコ。主の指示であっても我が客人である者を傷付けようとした罪、許し難い。従って永続的神奴として彼の終生護衛奴隷の絶命を下す」
「っ!?……承り、ました」
身動き取れないまま襲撃者がそう返す。
ヤバい。一番重い罪なのに、一番まともな反応だった…もしや、コイツ苦労人だな!?
そんな雰囲気を感じるぞ!?
「尚、竜族の各族長には敵対意思があるのかは確認済み。嘘偽り無く敵対意思がないことは確認済みの上3名の処分決定を通達してある───以上です」
教皇がそう言葉を締める。
同時にセキが教皇を睨む。が、教皇はゆっくりと立ち上がり、
「おう、喧嘩か?17年前にお前ン所の族長殴り飛ばして以降喧嘩はしてねぇがよ、俺は強いぜ?この国で2番目にな」
一番は誰なんだろう。
いやこんな場面で言われたら気にならないか?
あっ、セキが目を逸らした。
「因みに私は5番目です」
エキメウスがにこやかにそう言い放った。
「上位3名は竜族とも殴り合える化け物ですので…3位と4位の間にはそれはそれは厚く、高い壁がありますので…最強は神柱島におられる神官長ですので」
えっ?
あー…ワイバーン仕留めるような神官を笑顔のみで黙らせていたなぁ…あの人。
「恐らく竜族の者に「ルク婆さんが来るぞ」といえば分かるほどには無茶やらかしていますから…」
いやあの、そのルク婆さんと言った時点でパールがビクリと震えたんだが…マジで何やらかしたんだ…
神の甘口裁定…と思ったら個人に科す罰としてはまあまあ重いらしい。
特に最後は意見が分かれた。
神子様の終生奴隷は名誉なことじゃないのか!?ご褒美だ!というちょっと何言っているのか分からない意見が出た。
ラナ…ご褒美って…お前…
まあ兎も角、何故重いのか。
これは竜族が名誉や称号に重きをおいているかららしい。
ただ、中にはそれを何とも思っていない者もいるが…そういった者は厳重に処罰されるらしい。
今回麻呂に付いたエセの称号。
これは竜族の中では2番目に重い蔑称らしい。
偽物だと呼ばれるのが2番目に重く、最も重いのは卑怯者などを表す称号らしい。
ただし策士等は蔑称では無く策略等の駆け引きなので問題は無いとの事。
セキの場合はちょっと難しいらしい。
竜族で言うショタ判定?ここ、翻訳あっているのか?は千歳以上差がある場合であり、成竜となるのは800歳辺りとのことなので人間に惚れる場合は大概この判定となる事が多いらしい。
さて、今回問題なのは2ヶ所。
ムッツリというワードと役目放棄。
余り多用したくないがムッツリは愛嬌が無しで口数少ない…なんて意味だが、そこにショタスキーが付くとまあ、ムッツリスケベのショタ版な訳で。
この時点でアウトだが役目放棄なので今後は老竜、古竜に囲まれた余生を過ごすことになるだろうとの事だった。
最後にパールだが…コイツは完全に不憫枠だった。
麻呂の親に逆らえず500年ほど従者を続けているらしく、その間の教育も最優先で麻呂の命令を聞くよう教え込まれていたようで…それ、許されていたのか?と疑問に思うとすかさずラナが、
「本来ならあり得ないはずですが、恐らく何らかの理由で孤児となった彼女を引き取りそう育てたのでしょう」
と説明してくれた。
本来竜族は孤児がいたら全員で育てるらしいが縁の深い者に託す事もあるらしい。
「そこの所は竜種も同じですが…竜族にもそういった下衆はいるのですね」
ため息交じりにそう言った。
「主様。この身、この命、全ては主様のために」
NINJA系少女を仲間にしてしまった…しかも彼女、500歳。
つまりは成竜ですらなく、生まれてずっと偏った教育を受けてきた…と言うことになる。
マインドコントロール以上の洗脳教育を受けて育った生粋のアサシン竜族を奴隷にした訳だ。
これは…弟にはとてもじゃないが言えんぞ…!?
「まあまあ、神子様の護衛が増えたことを喜びましょう」
俺が内心頭を抱えている中、エキメウスは嬉しそうにそう言ってこの場を締めた。
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