20話 謁見、権力者と…えっ?ああ、そう。
城下町を過ぎ、城門を潜るとそこは修羅の国だった。
まさに戦闘真っ直中といった状態で、時折流れ剣や流れ槍が飛んでくる。
どうやらこれも「乱戦の訓練になる」と言うことらしいが…明らかに殺意をもって「死ねぇぇっ!」というかけ声と共に槍が飛んできたりするのはどういう事なんですかねぇ?
まあ、俺にではなくエキメウスに対してだが。
貴方どんだけ嫌われているのさ。
訓練場という名の広場を抜け、中央にそびえ立つ大聖堂へと向かう。
豪華絢爛ではなく、質実剛健といった感じがとても強い。
白の彫像や陶器などが回廊の両サイドに等間隔で並んでいるが、これは…
「成る程。ここも再利用か」
「お気付きになりましたか」
粉末状にして繋ぎとして粘度のような物を使ったのか?
「白磁に近いが、少し荒さが目立つのは釉薬を使わず素焼きだからか?」
「そのお話、詳しくお聞かせ下さい」
そういってきたのはエキメウスの隣に居た聖女ミステーアだった。
「ミステーア、これから教皇との謁見ですよ」
「エキメウス、重要度はどちらが高いと?」
「知識の収集ですね」
「では分かっていますね?」
「…謁見の場でその話をすれば良いのでは」
「そ れ で す!」
うわぁ…教皇可哀相すぎないか?
俺ら一行は2人以外は何とも言えない空気で謁見の間まで進んだ。
大扉が開き中へと入る。
「ようこそ教国へ…ああ、皇法国というのは対外的な名であって我々は法国のもう一つの国と思って欲しい。それと同じ神の信徒、跪く必要もないからね」
入って早々最奥にいた教皇が大声でそう声を掛けてきた。
「「元々そのつもりはありませーん」」
おい、所属の聖者と聖女。
教皇の両脇にいる人達…頷いてるし…
「挨拶は終わりましたね?それでは次に「待って待って!まだ終わってないからね!?私の自己紹介してないから!」チッ、早くして下さい」
エキメウスぅ…お前どこまで…
「しかしエキメウス。何をそんなに急いでいる?」
「商国の艶皿に対抗出来るかも知れない知識を神子様がお持ちだからです「何それ詳しく」」
謁見ってこんなんで良いのか?
教皇の元に着く。
そして俺は聖女ミステーアの持ってきた商国の艶皿を見る。
「……ムラがあるが、裏は?…成る程。塗るのではなく粉を掛けた訳か。失敗してこの方が良いと判断したのか」
大皿の表面はガラス質になったソレがある程度覆っていたが、見目がそこまで良くは無い。
いや、こうなったのに割れてないってどうなんだ?やっぱり地球とは基本的に頑強さが違うんだろうな。
「神子様、如何でしょうか。何か分かったようですが」
「恐らくですが、高温で焼く作業の際に上に振り掛けられた粉がガラス質となって覆う現象で間違いないと思います」
空気が、張り詰めた。
「詳細を、情報を詳しく」
ぇえー?
…まあ良いか。
俺は釉薬について知っている情報を簡潔に話すことにした。
ありがとう、学校図書館の端にポツンとあった『はじめてのこども陶芸』という本よ…中途半端に専門用語満載だったが、今異境の地で役に立っているぞ。
俺は何をしているんだろうか。
幾つかの釉薬を作り、釉薬の塗りつけを行っているわけだが。
ここに来て二日目なんだが…元々素焼きされた皿はあるわけで、それに幾つかの試験釉薬を塗り、本焼きを行っている。
寝てない。
現在、夕方の恐らく6時過ぎ。
昨日の昼にここへ来て謁見後にすぐ釉薬を作って、夜中に焼き始めて…今窯を開けようとしているわけで…水分補給以外は飲まず食わずなんだが?
俺12歳で更に色々ステータス低い扱い受けていたんですが?
まあ、他の神官方も同じように見守っていますし、何よりも温度と火の管理は俺がやらないと怖い。
この人達大雑把な人と細かい人の差が激しすぎるから。
少し中間が居て欲しいんだが…
窯を開け温度を少しずつ下げて落ち着いた頃中の物を取り出す。
ムラのある青磁と透明、そして濃い緑の物が出来上がっていた。
「やはり青磁は難しい。透明な物は絵付けを行えば良いか」
吟味しながらどんどんと外に出していく。が、他の神官達が動かない。
「どうかしましたか?」
目を見開いて皿を見つめたまま動かない。
それもほぼ全員。
働け。俺は空腹と眠気で色々ピークだぞ?
割れて失敗という物は無かったが、釉薬の塗りムラや火の当たり具合など失敗作が多数あった。のだが…
「これが失敗なんてとんでもない!このざらつきが僅かに感じられるのが良いのです!自然が創り出した芸術ッ!ああ、この出会いに感謝を!」
「ああ、これまで商国や帝国の器を趣味で買い集めていましたが…これからは自身で作るのを趣味とします」
「よし、早いうちにこれまで買い集めていた器を売りに出そう」
俗物神官が多いんだが?皇法国。
法国の神官達も苦笑しているぞ。
「いやあ、余裕が在る事は良いことです」
「私達は余裕ができれば武器を買いますからねぇ」
「確かに。これが新たな技術の進化になれば良いのですが、この釉薬で軽量で強固な陶器の鎧ができたりとか」
…法国は法国でおおらかな戦闘民族だったよ。
もう、俺食事して眠りたいんだが…早く窯出してくれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます