10話 資金 報奨金と、ストレージ


 学務派全員が全員問題あるわけでは無いので一度牢に入れた後に…と言うことらしくホッと一息吐いている。

 実務派内にも関係者はいるらしくあの手紙に書かれているらしいが…自分から進み出る人間も少数いた。

 この島内だけでも結構な数居たわけだから各本国でもそれなりにいるだろう。

 俺は一刻も早く使命を終えて帰りたいんだが…弟や妹の事が気になって仕方ない。

 あまり急いては事をし損じるし、焦るとロクな事にはならないと言うのはこの短い人生の中で何度か経験はしてきたから自制してはいるが、効率よく情報を収集しなければならない。

 ただ、どの大陸から行くか…いや、まあ、南の大陸から行くのはほぼ確定だろうからそこの情勢等を調べるか。


 夜、神官長らから報奨金をもらった。

 何に対する報奨金かと言えば…術式改良の報奨金らしい。

 法国と皇法国の両方からと言うことらしいが、法国は財政があまり良いわけでは無いらしいので割合法国3、皇法国7の割合らしいが…神金貨10枚、金貨40枚、銀貨100枚、合計1050万円相当というちょっと洒落にならない金額を頂戴した。

 神金貨が1枚100万円相当、金貨が1枚1万円相当、銀貨が1枚1000円相当

 待て。もしかしてこの世界、金がよく産出されるのか?

 金貨1枚がそこそこ重いんだが…金貨の価値は1枚1万円相当。

 しかしこの金貨は山吹色をしており20グラムはあるだろう。

 少し気になって確認すると、金はモンスタードロップで稀少ではあるが普通に手に入るらしい。

 そして金貨は銀を金でサンドしているため使われているのはだいたい10グラム程度だろうとのことだった。

 それでも日本でこれを貴金属として換金すれば…最低でも14~5万はする。

 ………そうか。ここでモンスターを狩りまくれば完全に兄弟だけで自立できるな。

 なんて思ったが、世の中そんなに甘くないことは理解しているつもりだ。

 そもそも俺は女児並みの生命力で紙装甲。どこまで各法術を使えるかによって今後のプランは大きく変わる。

「法国はそこまでお金を出せませんので代わりに同行聖女を増員することで話がまとまりました」

 聖室長がそう言ってきた。

 いや、そこは武装神官を増員して欲しいんだが…そう思ったが理由があるらしい。

 神官は相応の地位等があり公式な場でもそこそこの立場で居られるらしい。

 ただ、聖女や聖者は立場がぐんと跳ね上がり最上位貴族待遇となるらしく、王族などの命令も撥ね除けることが出来るらしい。

 ……その割には俺、訓練場で聖女結構見かけましたが?

「外には言っていませんが、聖女は結構いるのです。ただ、この島で9割囲っているので。

 更に言えば聖女や聖者は高位神官が一定期間だけ就くことのできる職ですので…そこまで有り難がらなくてもとは思います」

 うわぁ…ぶっちゃけたよこの人。

「一般聖女と武装聖女の2人を貴方の護衛にしますので。ああ、通常の武装神官も勿論数名派遣致します」

 それきっと野に放してはいけない類の方々では?すぐに野生化しないか?

 そんな言葉が出かけては呑み込むのに必死だった。

 お金を受け取りカバンに入れる。

「?神子様。ストレージに保管はしないのでしょうか」

 不思議そうに聞いてくる神官長に俺は首をかしげる。

 ストレージ?記憶装置?…違うな、倉庫という意味か。

 俺は素直に使ったことが無いと言うと目を見開き、落涙しだした。

「神子様…貴方様はどのような境遇におられたのですか…っ!」

 えっ?たかだかそれが使えないだけでそんな反応なのか?

 それよりもそちらの常識過ぎて俺に語っていないこと多くないか?

 ストレージとは何かの説明は単純なものだった。

 この世界に住む者達、人種以外だと高知能生命体が有するもので容量はそれぞれの素質によって事なるが、人種は大容量のカバンから倉庫までの容量らしい。

 更にこのストレージには一部保護機能がついており、最低1種。最大で5種の死後流出防止機能が付いているとの事だった。

 どういう事かというと、死んだ場合はストレージの中にあるものは全て外に弾け出るらしいが、その保護機能…保護領域にあるものは死後もそのものに紐付けされて残るらしい。

「蘇った際にも問題無くすぐに取り出せるものがあると…しかし、蘇生不可状態の場合は?」

「その場合は神の元へと運ばれるとのことです。人々は使用料と言って亡くなる前に高価な物をそこに入れる風習があります」

 実際どうなんだろうな…それよりも俺にその能力があるかどうかなんだが…無い可能性の方が高くないか?

 言語理解がデフォルト能力の1つとして認定される状態だぞ?

「どのように使うのでしょうか」

「えっと、自身の体の周辺にポケットがあるような感覚と言いますか…ほぼ無意識に使ってきた物ですから説明するとなると難しいですね」

 ふむ…要確認事項だな。

「ありがとうございます。そういったものがあるという事が分かっただけでも進歩なので、あとは自分で確認してみます」

 そう言うとホッとした顔をする神官長。

 いや、動揺が激しすぎなんだが…ストレージ無しでの生活が考えられない世界って何なんだ?

 マジで蛮族世界で稀少品は基本ストレージの中でなければ出歩くことすら危険とかなのか?

 ………これは確かに無理だと判断するよな、神も。


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