めタァ! ~岩崎結羽人世界を渡る
御片深奨
Prologue 女神との邂逅と…
異世界召喚。
そんなジャンルのマンガやアニメ、小説は一体何時位からあったのだろうか。
殆どが特別な力を得たり、試練を受けたりして帰ってくる。もしくはその世界で暮らす…なんてパターンだと思う。
マヨヒガもそういったパターンだし、世界中にある英雄譚だってそうだ。
確かそういうものをモノミスといったかな?
そんな事を思考の端で考えながらも目の前にいる人知の及ばぬモノと対話をする。
「でさー、アンタみたいな下の下世界の人間が来るなんて思わなかったわけよ」
人のカタチをとってはいるが、それは俺がそう望んでいるから見えているだけ。
恐らく実体はまったく違うもので、見たらいけないモノなのだろう。
しかしうちの世界は下の下か…となるとそこより上の世界だと。
「もしかして、適度に力を使わなかったせいでイレギュラーとして吸い上げてしまったということですか?」
必要な力をケチった結果通常であれば発動しないがランダム召喚となってしまった的な感じではないか?
「そそ。えっ?なんで分かるの?下の世界の存在って馬鹿が多いと思ったんだけど」
「馬鹿なのは我々地球位と思っていたのですが…やはり俺の見識が不足しているか」
二重の意味で。馬鹿だらけなのは…うん。俺も含めてモノを知らなすぎると思う。
「一応聞くけど、君って長命種?それとも転生5~6回目とか?」
「転生に関しては覚えはないので何とも。平均寿命6~70歳程度の種族です。ふた昔前は平均寿命80歳くらいだったらしいですが」
「…見た目12~13歳よね?えっ?何この子まったく動じていないのもそうだけど、思考読まれている前提で普通に会話できているとか怖すぎるんだけど」
───
「ふっ、ふぅん…そうよね。当たり前よね…」
───因みに、表層思考しか読み取れていないようですが…現在二重思考で対話を行っていましたが、読み取れていないようですので今後気を付けて戴ければと。
「ちょ!?いや貴方本当は上位世界の人間でしょ!」
「取るに足らない下位世界の人間です」
「~~~!神々の盟約で呼び寄せたモノが余程の不敬や危害を加えなければ滅してはならぬという協定がなければっ!」
老婆心ながら申し上げた事で怒らせることはよくあるとは思うけど、セキュリティの問題点だけにここは聞いて欲しい。
「ここより上位世界の者を呼び寄せ、分割思考で害することを策動されたらどうするのですか?」
「ぐぅっ!?確かに、そうだけど…童に指摘されるなんて!」
「数百年前はこの年でも元服…成人の儀をしていた年なので気にしないでください」
「いやその言い分だと今は違うんでしょ?」
「そうですね。過保護になって…全世界だいたい18~20歳ですね」
「それは…過保護だなぁ。いえ、文化や人種的な違いもあるとは思うけど」
人知の及ばぬモノはそう言いながら虚空に様々な文字の羅列が現れた。
それはどこかから情報を参照しているよう───まあ、雉も鳴かずば撃たれまい。
「あれ?君の情報が…えっ?なんで?」
途轍もなく不穏なことを呟いたんだけど?
「あっ、これは───通報案件だわこれ。マズイマズイマズイマズイ!召喚できているからなかったことにも出来ないし!」
いや、本当に何事?
「えーっと、君。自分の住んでいる世界が何と言われているかとか、神の名前とか…分かる?」
「外的生命体とのコンタクトは取られたという公式文書はありませんが、住む星を地球と呼んでいました。神は自分が住んでいた地域、日本では八百万の神々呼ばれ、とても沢山の神が居るとされています。
天地開闢の天之御中主神、高御産巣日神、神産巣日神の造化三神もしくは天照大神、月読尊、素戔嗚尊の三貴子が有名でしょうか…ただ、神代の話であり現代にては存在したかどうか含め分かりません」
「は?神が居ない世界?それはないわ…あぁ、似たような話があったわ。神を恐れ敬わず滅びたっけ…まあ、想像上の神かどうかも分からないと。検索もヒットなし。益々マズいわ」
人知の及ばぬモノ…面倒なので以下女神とするが、その女神は何やら慌てた様子でどこかへと連絡をしていた。
それから暫くの間大変だった。
どうやら俺はこの世界全て…上位世界、下位世界、平行世界含め該当しない人間らしい。
そして裏世界と呼ばれる世界消滅の先、断絶の壁の先にある世界群の人間であろうとのこと。
何故断絶の壁の先に世界があるのか分かるかと言えば、かつてそれを調べた神が居たとのことだった。
───神達が調べるために穴を空けたせいで断絶の壁に”動く穴”ができ、その穴は以降世界共通の敵となっているとのことだった。
ゲートでもあるが、意思を持ち、世界を分解してエネルギーとする第三の世界とか何とか。
細かいことを省くと、そのゲートを経由してあり得ない確率で召喚されてきたのが俺という事だ。
心から思う。巫山戯るなと。
弟と妹が待っている家に一刻も早く帰りたい。
両親…特に母親は育児放棄をしており父親を独占したいがために俺らに一軒家を宛がって放置している。弟も妹も幼く、小学校低学年と幼稚園生だ。
弟は簡単な料理は出来るが年齢が年齢だけにあまりさせたくない。
お金は…一応何かあったときにと父親から定期的にもらっている生活費の一部を3分割してうち2ヶ所を教えているし、近所の人との交流もあるから大丈夫だと思うが…
冷静になれ。冷静に。
兎に角俺はすべき事を終えて帰ることだけに集中しよう。
万が一どころか天文学的な偶然であってもこうやって来る事が出来たんだからゼロではないと思う。
「───俺の与えられた役目は何でしょうか」
「えっ?本気?」
「はい。召喚された以上はそれを為さなければ俺は元の世界へ帰る手段がないのですよね?」
「まあ制約上はそうなんだけど…今最上位世界の神々が協議しているのよ?」
女神は少し戸惑ったように言う。
「質問ですが、神託等はどのように?」
「神官や聖者に降光と共に圧縮言語を落しているわ。場合によっては国全体にとかもできるけど、あまりしたくはないかな」
負担が掛かるという事だろう。
「では要所要所で神託を受ける形であれば問題無いのですね?」
「あー…うちの世界、エセ神官もいるからなぁ…」
苦々しい声の女神に俺は首をかしげる。
「エセ神官や生臭坊主って何処にでもいると思っていました」
「そっちにもいるんだ…まあ、神官同行させるわ。そっちの方が都合良いし。あと、君に世界の言語理解を
「言語理解に関しては翻訳機能は入っていますか?」
「えっ?あー…文字理解や書面記載、多言語翻訳も重要よね。それらもまとめて言語理解に入れて与えるわ」
「ありがとうございます」
「他は…自分で何とかしなさい。召喚の際には対応力第一と言う条件を付けて召喚したからなんとかできると思うし、何よりも与えられる能力は1つって決まっているからこれ以上は無理よ」
成る程。ルールがあると…
「それで、俺がすべき事は」
「世界情勢の確認とダンジョンの間引きね。少なくとも20~30は潰して欲しいわ」
「……この世界にもあるんですね、ダンジョンは」
「殆どの世界にあるんじゃ無い?そっちは分からないけど穴を空けられて以降奴等の侵略手段として創り出したのがダンジョンなんだから」
「侵略手段…」
もしかしてとは思っていたけれど、本当にそうだとは…だとすると地球は今とんでもない状態って事か。
「何も知らないのね、本当に。まあ、それも含めて学びなさい。帰ることができるか分からないし、この世界に永住するかも知れない。
分かっているとは思うけど、学びは大事よ」
「はい。学ばせて戴きます」
「宜しい。下も受け入れの準備が出来たようだし…さあ、行きなさい我が使徒……えーっと、名前は?」
「名前は結羽人です。岩崎結羽人」
「ユートね。行きなさいユート、適度に世界を救うのよ」
いや適度って何を───
そう言おうとしたら光に包まれ、勢いよく下に落ちていった。
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