綺石譚
時里悠
サファイアの季節
サファイアの青さを海の青さと比べるのは間違いだと、言われたことがある。
佐分利川という、綺麗な青色をした水の流れる川べりで、一人の青年から言われたのだ。
青年は青いシャツに短パンを履いていた。近くには同じような青年が何人もいて、川の浅瀬に足を突っ込み、何かを探していた。
彼らの動きを立ち止まって眺めていると、例の青年が上がってきて、声をかけてきた。
「今はサファイアを探しているんです。川の水に溶け込んだサファイアを採って、売るんですよ。そういう季節ですから」
「あの青は川のものなんですか。海だと思っていました」
思わず口から出た言葉に、青年は苦笑した。そして、言ったのだ。サファイアの青さを海の青さと比べるのは間違いですよと。
さらに彼が何か言いかけた時、川から歓声があがった。見れば、一抱えもある巨大なサファイアを数人の青年が抱えて、岸に移動しているところだった。
「やぁ、今年のヤツは意外と大きいなぁ」
青年は感心したように笑うと、私に向かって手を振り、瞬く間に他の青年の一人となって、私には見分けがつかなくなってしまった。
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