第43話 時には勢いも大事
◆◇◆◇◆◇
「ーー片方は鎧騎士タイプで、もう片方は……たぶん魔法使いタイプってところか」
少し離れた場所で車を降りてから近付くと、そこには気配探知で索敵した通りの二体のボスらしきモンスターがいた。
こちらを待っていたのか、ボスモンスター達がいた公園内には他のモンスターの姿が見当たらない。
一体は、デュラハンとは違って頭部があり、馬にも乗っていないが、妖しい雰囲気を漂わせる長剣を持つ重装鎧騎士姿のモンスターだ。
そしてもう一体は、豪奢な飾りの金色の杖と王冠に加えて、ザ・魔法使いなローブを纏った骨と皮だけのゾンビ?みたいな姿のモンスターだった。
「どっちがいい?」
「お兄さんの話によれば、モンスターが持つアイテムがアーティファクト化するんですよネ?」
「ネット上ではそれ以外もあったけど、少なくともヤルングレイプはそうだったな」
「元の形から変化するみたいですケド、近いタイプの方がいい気がしますカラ、私はあの騎士がいいデス」
「見るからに硬そうだぞ?」
「なんとかしマス」
「分かった。じゃあ、俺はあの魔法使い……適当に〈リッチ〉とでも呼ぶか。騎士は〈デスナイト〉ってところか」
二体に近付いていくと、デスナイトがリッチを守るように立ちはだかった。
すると、デスナイトの背後でリッチが何かを呟き出した。
数秒ほど理解できない言語を呟くと、リッチとデスナイトの周りの地面から大量のスケルトン達が現れた。
ただのスケルトンではなく、骸骨戦士と評するのが相応しい装いをしており、剣や槍、盾には使い込まれた感のある一種の凄みが感じられる。
「……ネクロマンサーってか?」
〈錬金鎧〉で全身を金属鎧化し、背負ったグレイヴを引き抜くと、剣刃に〈双炎掌〉の蒼紫色の炎を纏わせた。
更に、それら全てに〈黒化〉を発動させたことで、黒い全身鎧に剣刃に黒い炎を纏う黒いグレイヴという黒だらけな姿になった。
「お兄さんの方がアンデッド達よりも地獄の死者みたいな姿デス」
「カッコいいだろ?」
「確かにカッコいいデス」
最後にヤルングレイプが発する銀雷にも〈黒化〉を使い、黒雷もグレイヴの剣刃に纏わせた。
なお、グレイヴに使っている謎金属の電気抵抗は下げてあるので、黒雷は弾かれることなく剣刃に纏えている。
全ての準備を整えると、片手にグレイヴを持ったままクラウチングスタートの体勢をとった。
「先に行くから、少し離れてから後に続いてくれ。巻き込まれるからな」
「分かりマシタ」
此方の準備が終わったタイミングで、ちょうどリッチが全ての骸骨戦士を召喚?し終わった。
まるで壁が迫ってくるように走ってくる数十体の骸骨戦士達。
その壁が動き出したと同時に、リッチに向かって駆け出した。
「〈強蹴〉〈突進〉」
デカウサギとミノタウルスから手に入れた能力を同時発動させることで、爆発的な速度の初速を得て疾走する。
骸骨戦士達に接触する瞬間、〈怪力〉で黒グレイヴを横薙ぎに振るう。
黒炎と黒雷が付加された〈衝撃刃〉が骸骨戦士達を一掃する。
〈衝撃刃〉が直撃しなかった残りの骸骨戦士達にも黒炎と黒雷が広がっていき、少なくないダメージを与えていった。
炎と雷のダメージで動きが大きく鈍った骸骨戦士達へとそのまま突撃し、ボウリングのピンのように弾き飛ばしながら前進していく。
そんな俺から少し離れてから続くソフィアが、俺が放った黒い炎と雷へと風を送り込み更に大きく育てると、そのまま螺旋状の暴風の中へと取り込んだ。
あっという間に炎と雷を内包した竜巻のドリルを作り出すと、残っていた骸骨戦士達へと竜巻ドリルを振り下ろす。
そこで視線を後方から前方へと戻し、再びグレイヴを振るった。
先ほどと同じ攻撃だが、一撃目とは違って、解き放った炎と雷の壁の向こう側からデスナイトが剣を振り上げながら飛び込んできた。
「飛び込み乗車はお断りしております」
〈強蹴〉を発動させて地面を再度強く蹴って急な方向転換でデスナイトの攻撃を回避する。
そのままデスナイトの横を通り抜けると、後方でソフィアがデスナイトへと竜巻ドリルを放った気配がした。
ボスモンスターなだけあって、あのデスナイトはデュラハンよりも強い気配を発しているが、まぁソフィアなら何とかするだろう。
「っ! はははっ、心でも読めるのかな?」
リッチが追加で十体以上のデュラハンを召喚しようとしているのが見えて思わず笑いが出てしまった。
流石に多勢に無勢だが、そういうことなら此方も追加の手札を切るとしよう。
オーバーキルな気もするし、コレを使うと最高にハイな気分になってしまうのが欠点なのだが、力試しにはちょうど良い相手なのは間違いないので使うことにした。
「〈闘牛本能〉ッ!!」
ボスモンスターである黒ミノタウルスから手に入れた、全ての身体能力を爆発的に上げる時間制限付きの能力を発動させると、更に勢いを増した突進力を持ってリッチ率いるデュラハンの集団へと突撃していった。
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