第17話 意外と長持ちしないものだ
◆◇◆◇◆◇
正面から向かってくるゾンビ集団。
その奥に見える事故車両の山を確認すると、ハンドルとブレーキを操作して車体を強引に滑らせ、ゾンビ達を薙ぎ払いながら停車させる。
助手席の小型リュックサックを素早く背負って自作グレイヴを担ぐと、車内に忘れ物がないかを確認した。
「一応場所をマークしておくか」
地図アプリで現在地にマーカーを付けつつ、横目で視認した群がってきたゾンビ達に向かってグレイヴを振るう。
ゾンビの壁に一筋の切れ目が入った次の瞬間、人外の膂力により発生した衝撃波によって腐った肉片が吹き飛んでいった。
事前に地図アプリに付けていた目的地のマーカーの位置を再度確認してから、懐にスマホを仕舞う。
オープンカーの元から移動しながら、事故車両の扉を移動の片手間にもぎ取っていき、ゾンビ達へと投擲していく。
良さげな扉が見当たらない時は瓦礫などを拾って投擲していった。
近付いていくゾンビ達を各種投擲物で粉砕しつつ、人間の気配のないオフィス街を闊歩する。
「まずは此処からだな」
所々に破壊の跡が確認できる有名百貨店を見上げると、出入り口であるガラス扉跡から入店した。
飛散したガラスや商品を踏みながら暗い店内を軽快に歩いていく。
〈超感覚〉には暗視能力も含まれているため問題なく見通すことができる。
百貨店の案内マップをスマホで撮ってから地下一階から散策していった。
地上一階は婦人服など現状では役に立たない物しかないので最初から除外した。
地上に近い地下一階だから持ち出しやすかったのか、無事な商品は殆ど見当たらない。
何かのフェアだったらしい食品系の土産物なども破壊された物しかなく、考えることは皆一緒のようだ。
「まぁ、元より期待はしてなかったが」
小袋に入ってて衛生的に無事な土産菓子があったので賞味期限を確認する。
まだ数ヶ月あるようなので近くに散らばっている物を全て拾ってリュックサックに入れていく。
二つほど開封し、ガスマスクをズラして中身のクッキーを食べると、引き続き地下一階を見て回る。
和洋菓子にベーカリー、惣菜などがある場所だったようだが、土産物などの保存の効く物以外は既に駄目になっていた。
物陰から出てきた同じく腐ったモノであるゾンビの首をグレイヴの剣刃で刈り取る。
あまり派手にやると腐敗した肉片が飛散するため、屋内ではできるだけ綺麗に倒す方針だ。
結局のところ地下一階での戦利品は、土産物クッキーなどの未開封小袋と和洋酒ぐらいだった。
食品と比べると人気は無かったらしく、結構な数が棚に残っていた。
酒は詳しくないが、飲んでも酔うタイプではないので貰っておくとしよう。
値段が高い順に酒類を適当に回収していき、割れないように梱包してから丈夫そうな箱に詰めていった。
梱包した大量の酒が入った箱を荷車に載せて地下一階を後にすると、地上一階の目立たない場所に隠しておいた。
続けて向かった地下二階も食品エリアだったが、案の定全て腐っていたのでワイン類だけ回収してから地上一階に戻った。
缶詰類があったらしき売り場も見かけたが全て持ち出されていた。
「そうだよな。もう三ヶ月以上も経ってるから食い物は腐るよな……」
こういう百貨店に冷食があるイメージはないので、思ったよりも調達できる物は無いのかもしれない。
「泣けるぜ」
回収したワインの一つを瓶のまま中身を一気に飲み干してから愚痴る。
そう考えると、臨時政府に協力すれば将来的に価値が高まる生鮮食品を優先的に得られる可能性があるな。
食料問題を解決するために当然動くだろうし、以前のようなフードロス問題が出てくるほどのレベルに安定供給出来るようになるには、おそらく数十年ほどの時間が掛かるはずだ。
衣食住の食の面だけはソロでは限界があるからな……。
「缶詰やインスタントで数年は保つが、それ以降は厳しいか」
臨時政府に属する選択肢にかなり傾いたが、まだ確定するほどではない。
単独行動を止めるほどの決定的な何かがあれば別なんだが……どうなるかは未来の俺のみが知る、だな。
飲み終えたワイン瓶を放り捨てると、残る百貨店の地上階を散策するために階段を上がっていった。
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