第3話 回復に必要なモノ
◆◇◆◇◆◇
「ーーああ、美味い」
シンプルに焼いただけのサシの入った牛肉を味わいつつ、テレビのリモコンを操作してスプラッタ映像のみを流し出したチャンネルから別のチャンネルへと変える。
こんな時にも外でカメラを回す者達には脱帽だ。
まぁ、最終的には帽子が脱げるどころか頭が取れてしまっていたが。
スーパーでの食料調達の帰りに、ゴブリンとかオオカミっぽいモンスターを数体跳ね飛ばしながら帰宅した。
マンションの前に止めると、荷物が荷物なので仕方なくエレベーターを使った。
幸いにも無事にエレベーターは動き、四階の自宅へと全ての物資を運び込むことができた。
ただ、流石に一度では運ぶことはできず、一度目の搬入時に四階の自宅前でゴブリンと、三度目の搬入の時に軽トラの近くでマンションの他の住民とエンカウントした。
ゴブリンは出会い頭に血糊石を投擲し、怯んだ隙に距離を詰めてから包丁で滅多刺しにし、ゴブリンの死体は地上に投げ捨てた。
住民に関しては、荷台の食料を盗もうとしていたのでゴブリンのナイフを投擲して動きを牽制した。
両手に包丁を逆手に持ってから無言で接近してやると、持っていたカップ麺の箱から手を離し、悲鳴を上げながら逃げていった。
全く、人の物を盗もうとするとは悪い奴である。
そんなこんなな物資搬入劇が終わると、緊張の糸が切れたのかドッと疲れが押し寄せるとともに、非常に腹が減ったので賞味期限が近い肉の中から最も良い肉を焼いて昼食とした。
仕事終わりの良い肉の味を噛み締め、今日一日用に炊いていたご飯を器に盛る。
そのご飯の上に肉を置いて再び食する。
「んぐんぐ、やっぱ肉には米だな。もっと良い肉を調達しにいくべきか」
となると、あの二体のオークが邪魔だな。
食料調達を優先して戦わずに去ったが、今度は最初から倒す目的で行ってもいいかもしれない。
「まぁ、まずは身体を回復させないとな……」
初の戦闘後から調達した食料を運び込み終えるまでは、俺の身体と脳は最高にハイな状態だったらしく、今になって凄まじい疲労感に襲われていた。
身体の節々が泣きたいぐらいに痛い。
気を抜いたら速攻で寝れる自信がある。
食事も摂ったし、あとは身体を回復させるために寝るのが一番だろう。
「……寝落ちする前にセキュリティを強化しておかないとな」
玄関の扉や窓の施錠は当然だが、それ以外にもやれることをやっておくことにした。
家にある料理用の油を持ってベランダに出ると、両サイドの部屋と繋がる手摺りの部分を油でコーティングしておく。
金属製の手摺りなので、ベランダから侵入しようとしたらヌルヌルして滑り、地上へと落下することだろう。
それすら抜けてきた時ように、着地するであろう場所には無いよりはマシな気持ちで適当に画鋲を撒いておいた。
あとは成るように成るだろう。
玄関には時間稼ぎ目的で重量のある物でも積んでおこうかと思ったが、万が一にも急いで脱出する必要がある時に邪魔になるので鍵とチェーンだけにしておいた。
セキュリティの強化といっても凡人にやれることはこの程度だ。
睡魔と戦いながら最後に現在の食料在庫を確認した。
スーパーで調達したアレコレ以外にも元々自宅にストックしてあった物もある。
敢えて言うなら米と飲料の残りが心許ないが、レトルトや水道水があるから今のところは緊急性は低い。
次の調達機会にでも回収するとしよう。
「食材は冷やしてるし、最低限の武器もある。風呂にも水が貯まってたし、やれることはないかな」
汗を流したいが、もう体力が限界だ。
申し訳程度に顔だけ洗ってから、ベッドの近くにテーブルを引っ張ってくると、すぐに手に取れるように包丁やナイフを並べておく。
最後の気力も使い切ると崩れるようにしてベッドに倒れ込んだ。
おやすみなさい。
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