幸せな結末?

涼宮 真代

第1話 なんだこれ?

令和6年4月晴れてオレは新社会人となった。

ギリギリのところで内定をもらえたのは三流企業だが条件は悪くなかった。

高校の頃から付き合っていた彼女とは6年間の交際を経て6月には結婚するいわゆるジューンブライドってやつだ。

オレは、たちばな 幸太郎こうたろう22歳これからの人生が楽しみだ。

地下鉄を降りて3番出口だったよな…。

階段を駈け上がると目の前に会社があった。三海商事さんかいしょうじ…ここがオレの職場だ!


「やべ、信号が点滅してる…。」

時間に余裕はあったが待つのもと思い駆け出した。

【危ない!】

キィーーーッ!! ドゴン!

え?

空が青かった…。

【救急車!早く!キミ大丈夫か!!】

ながらスマホの信号無視だった…。

【しっかり…。】

【……。】

あれ?何も聞こえない…。

なんだ体も動かない…。

オレ…死んだのか…。


あれからどれくらいの時間が経ったんだろうな…。

ガヤガヤ…

ちょっと可愛いぃ。


あれ?音が聞こえる体の痛みもない

なんだフカフカの柔らかい感触…。

オレは目を開けた…。

「なんだ夢だったのか妙にリアルな…。」

汗を拭うしぐさをした時…。

え?毛?え?なんだこれ?え?

手のひらにはプニプニの肉球?

可愛いなぁ…

「じゃない!!!」

オレ、犬になってるぅぅぅ!?

ちょっと待てコレは夢の続きだ…。

あり得ん!


周りを見渡すと知らん人がこっちを見てる…。

「お母さん、この子なんていうの?」

ん?この子?オレのことか?

チラッと見て小学生ぐらいか?

「この子は…シベリアンハスキーね」

ん?オレはハスキーなのか?

ハスキーといえば彼女が欲しいと言っていた犬種か?

また、奇妙な…。

「この子が良い!」

「ダメよ大型犬なんて」

「いやだ〜この子が良い!」

全く子供というのは面倒だな…。

こんなのに飼われたら地獄だ

思いっきり無愛想にしてやる。

プイッ!

「ほら、イヤだって顔してるじゃない。」

「だって、お姉ちゃんが…。」

なんだ?姉ちゃんがハスキーを?

ん?母親の顔を見た…。


え!?義母おかあさん!?

てことは、お姉さんってオレの彼女…美羽なのか!?

「ほら、違う子見にいくよ!」

いや、待て待て待て!

『キャンキャン!』

精一杯の愛想を振りまいた。

犬に自尊心など必要ない!

「やっぱりこの子がいい!」

「仕方ないわね…ちゃんとお世話できるの?あなたより大きくなるのよ?」

「お姉ちゃん寂しそうなんだもん…。」

「そうね…あんな事があったばかりだものね…。」

そうか…やっぱりオレは死んだんだな…。美羽みわ…。

「ちゃんとお世話できる?」

「うん!」


そんなこんなで美羽みわの家に飼われることになった…。

「それでは予防接種と健康診断をしてからのお迎えになりますので明日以後お迎えに来てください。」


え?予防接種?注射だとぉぉ!

オレは子供の頃から注射は大キライだった。

ガクガクブルブル…。


そして2日後…

オレを迎えに来てくれたのは美羽だった。

「ホント可愛いね。」

「でしょ!」

「ありがとう。」

久しぶりに見た美羽みわの顔、聞いた声…。

そしていつものコロンの匂い…。

くさっ!!


犬にはそのコロンはダメだな…。


そうして美羽みわの家にお世話になることになった…。

(お世話になります。)

「名前どうする?やっぱりカッコイイのが良いよね!」

「ポチ!」

ズデッ

(どこがカッコイイんだよ)

「お姉ちゃん決めて良いよ。」

美羽はオレの顔をマジマジと見て…。

「コタロー…。」

え?

「コタローくんに決めた。」

そう言って…オレを抱き上げた美羽みわの顔はいつもの優しい笑顔の奥に寂しさを感じた。

オレは抱っこしてくれている美羽みわの頬を舐めた。涙に濡れていたから…。

「こら、くすぐったいよ~コタロー…。」

(傍にいてやれなくてゴメン。)

くぅ~ん…。


ん?だけど…なんでオレは幸太郎こうたろうの記憶を持っているんだ?

言葉も理解できるのはなぜだ?


悩む…。

「なにこの子あたま抱えて?」

「何か悩んでるのかな〜。」

せめて話せたら…。

いや、それはキモイだろ…。

というか気持ちが伝えられたら…。


などと悩んでいても仕方ない

いまはドッグライフを楽しむか…。



第2話につづく…

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