第6話 新メニュー開発部 〜これは輝き続ける夢と友情と青春の記録〜
俺たちは一気に鉛筆を置き、テスト終了を告げるチャイムが校内に響いた午後3時。
大空のてっぺんには、太陽が昇っており地表全土を焦がす。
「終わったァァァァァァ!!!!!!」
「よかったね!」
テスト終了後の教室の端ではバイト組の俺たち、アズリア、奏音、隆一、俺のメンバーで俺の席の周りに集合していた。
「え、えっとなんで俺の周り?」
「そりゃあ、奏音と霧矢の席が近いからな。」
「そういうことか。」
俺と隆一がそんなどうでも良いことを話していると、目を輝かせた奏音が
「で、今から何するの!?!?」
と割り入ってきた。
「私、早く帰りたいよ〜」
「アズリアも頑張ってくれよな!!」
隆一は羞恥を隠しながらも、強めの口調で言った。
「え〜!隆一くんなんか私への当たり強くなーい?」
なぜかアズリアは少し口角を上げながら言う
「い、いや!俺はいつもこんなんだぞ!!!」
「隆一、顔赤いぞ。」
俺は隆一の心のクリーンヒットの大ダメージを狙い言い放つ。
「多分この前のキスのせいでしょ?」
どうやら図星なようで、隆一は「ぐ!!!」と焦りの混ざった声をあげ、顔を真っ赤に染め上げる。
「ふふ…図星みたいだねぇ〜」
アズリアは、口を押さえながらプププと笑うと、さらに真っ赤なって、隆一が反論を始めた。
「だ、だが!!俺が少し首を横に振らなかったら、あのまま本当にキスしてたぞ!!!前は、頬だったからよかったものを!!!」
さらに隆一は怒りなのか、太陽のように赤く顔を染め上げて、さらに強い口調で言った。
「そ、それに!!!俺が初めての相手なんて、嫌だろう!!!?????」
「私…初めてなんて言ってないけどなぁ〜」
「んな!?初めてじゃないのか!?」
「まあ、あえて言うなら…」
アズリアはくるりと一回転してから、少し溜めると「まだかなぁ〜」と嘲笑った。
「まだなのかよ!!!!」
「ふふふ…別に隆一くんだったら私はいいんだけどなぁ〜」
アズリアは口を手で押さえて、ふふふといった感じに笑った。
「んな!?!?」
さらに隆一の耳が赤く染まった。
「まあまあ…二人ともそんなにいちゃいちゃしないでさ…早く要件言ってくれないかな?隆一くん…」
と、ここで奏音が横槍を入れ、無理矢理に会話を中断させる。
「い、イチャイチャだと!?!?」
なぜか戦士みたいな口調になった隆一を見ながらアズリアが
「良いところ突いてるじゃん、奏音ちゃん」
と、隆一をさらに笑う。
「お、俺はイチャイチャなんて…!!!」
「はぁ…その真っ赤な顔で言われても説得力ねぇよ…早く始めようぜ。今日は森崎喫茶の新メニュー考えるんだろ?」
俺がため息混じりに隆一に言うと、「ぐぐぐ…!!!」と唇を噛む。
それに対し、アズリアは「ふふふ」と女王のように微笑した。
「えーっと…今日は俺が王様ゲームで言ったこと…つまり、新メニューを考えて、森崎喫茶を繁盛させちゃおうぜ!大作戦の作戦会議をしようと思うんだけど肝となる部分が…」
「どんなメニューを作るか!だよね!」
奏音は、片手を俺の机に置き、もう片手の人差し指を胸元で伸ばして、決め台詞を言うようにした。
「そうだ。で、どんなメニューを作ればいいか、考えてみたんだけど…」
「思いつかなかったんだな。お前に料理の才能とかなさそうだし。」
そりゃあ、そうだ。善意の一心でやろうと思っていても、調理の才能なんてこいつにはなさそうだしな。
「ぐ!!ま、まぁそう言うことだ…」
「ということで!今日はスペシャルゲストを読んできましたー!!」
え?急に?
「どうぞ〜」と奏音が言うと、俺の後ろから
「やっほー!!!みんな!!パフェのことなら私に任せてー!!!」
という元気な女の子の声がした。
後ろを振り向くとそこには、ツインテールのピンク髪の女子がいた。
その女子は可愛らしい丸い眼鏡をかけていて、首元には一眼カメラをぶら下げている。
「やっほ〜!霧矢!隆一!」
「やっほ」
隆一は知り合いのように、手をあげて反応する。
え?いや普通に誰だ?
俺は心の中に疑問が溜まり、声に出した。
「え、えっと…ごめんなさい…どちらさま?」
「は!?私のこと覚えてないの!?」
怒ったのか、驚いたのか、前屈みになって、俺に聞き返した。
「そういえば、現実で、話したことなかったかもな〜」
現実?それってどう言うことだ?
写真…新メニューの専門家…
もしかして!?!?
「えっと、2回目になるけど、私は写真部所属の1年C組の生徒…
決めポーズを言ったように、顔を天井に向けて胸を張る彼女は、多分だが、ラインでパフェをアイコンにしていた、あの梓だろう。
「梓ちゃんひさしぶり〜」
「おひさしぶり!!!アズりん!!!」
「おひさ〜」
アズリアと梓は仲がいいのか?
「それで?喫茶店のバイトしてるんだ?」
「うん」
「新メニューを考えたい?」
「うん」
「助言…してあげよっか?」
いきなり、その言葉が出てくるとは…
口ぶりから梓はどうやら初めて受けたことではないように思える。
「話が早くて助かるよ〜!!」
ほっとしたように奏音は両手を握り、胸元に留めると、「それじゃあ、今日の放課後とか空いてる?」と質問した。
「放課後?今日は部活もないし…うん!いけるよ!!」
「それじゃあ、住所あとで送っておくからここに来て!!」
「うん!わかった!!」
このまま、男子の俺たちは話に混ざれず、女子(だいたい奏音と梓)を中心として、ほぼ話がまとまったようだ。
「す、隙がないな…」
「あ、ああ…」
「ほんと、二人の会話の密度ってすごいよね〜」
「ははは…」
俺は少し苦笑いした。
「ゑ、今日お客さんが来るの?」
「そうなんです!!!!」
「それって確定なの?」
「はい!!!!」
奏音はカウンターに座り森崎さんに今日のことを伝えた。
「じゃあ、新メニューが作りたいんだ?」
「はい!!!ど、どうかお願いできませんか…!?」
祈るようにして、森崎さんの前で、両手を合わせながら奏音は言うが、森崎さんは頬をぽりぽりと掻いて「うちもやりたいのは山々なんだけど…」と気まずそうに言った。
「え!?ど、どうして!?」
「その…研究…っていうかさ、新しいメニューを作るときって実験もしないとでしょ?食べて、味を調整する…そのためにお金が必要になるし…うちの経営が厳しいから、あんまり、研究もできないし…新しい材料も取り入れないとなんでしょ?それって…言っちゃあ悪いけど…それにもお金が掛かって…うちにはそんな余裕がないからさぁ…」
驚いた。
森崎喫茶は、そんなに経営が厳しかったとは…
「確かに、俺も新メニューを作りたいけど…どうにかして、今のままでいけないかなぁ?俺が言うことではないけどさぁ…」
「な、何かあるんですか?」
俺は恐る恐る聞いてみる。
「ここの店。妻が残した唯一の店なんだ。」
「え?それってどういうことですか?」
「実はさ、俺の妻、昔に事故で亡くなっちゃってて…俺の妻…物欲がなくてさ…唯一の仕事場のこの森崎喫茶しか、残らなかったんだ…」
しばし沈黙が流れる。
「俺の妻、いつもあんまり楽しそうじゃなかったけど…仕事の時だけは笑顔で仕事してたから…壊しちゃうのはあまりにも勿体無くて…俺が続けてるけど…もう潮時なのかな…」
すると、隆一は、その沈黙をどでかい声で破った。
「それじゃあ…繁盛させましょう!!!この店を!!!」
「え?…そんなことできるかなぁ…」
「僕たちからも、お金出してみますから!!新メニュー開発しましょう!!!!」
「……いいの?」
「はい!!!絶対に繁盛させましょうや!!!」
森崎さんはいつの間にか溢していた涙を拭き取ると、
「うん!!!ありがとう!!」
と涙声で言った。
「そういえばさぁ、梓なかなか来ないね…」
奏音が店の大きな窓を見ながらぼやくと、「ライン!」と通知音が喫茶店の中に鳴り響いた。
「ん?」
それに気づいたアズリアは、羊のようにモコモコしているカーディガンのポケットをゴソゴソと漁る。
ポケットからは、丸めた紙屑や使われたティッシュが溢れ落ちる。
「あ、あはは…アズりん…後で、裏の方来てくれる?」
「え?もしかして…愛の告白?」
「いや、愛の説教かな…?」
アズリアは「えぇ…」と言うと、LINEを開いた。
しばらくすると、アズリアはスマホを見ながら言う。
「なんか、道に迷ったみたい」
「あー…ここら辺、迷いやすいからね…」
確かに、俺も初めて来る時は、スマホを見ながらでも迷ってしまっていたな…
あれからもう1ヶ月か…
すでに森崎喫茶への行き方は覚えているが、一つ道を間違えると迷ってしまうことがある。
「それじゃあ、迎えに行かないとだね…アズリン行こっか!」
「え〜!!!」
半ば強引に引き連れられて、アズリアと奏音は森崎喫茶を出て行った。
「それじゃあ、どうやったら人気になるか、考えてみるかぁ…」
そう言うと、カウンターに肘を突き隆一は自分で頼んだブラックコーヒーを啜ると、一度皿の上に置いて、角砂糖を4つ入れた。
隆一は甘党派なのだ。
梓ちゃんビジュ公開!!!
https://kakuyomu.jp/users/Worstgift37564/news/16818093079614792825
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