生への渇望

大成 幸

不゜路路ー具 

 茜色の空が黒く染まり始め、夜に近づいていっている頃。とあるアパートの一室にて、一つの命が消え去ろうとしていた。


 部屋の壁際に敷かれた布団。そこに仰向けに横たわるのは、血色の悪い顔に虚な瞳をした青年—松田樹まつだ いつきである。

 彼の左手首に深く刻まれた水平な傷。その傷から血が止まることなく流れ出て、布団に大きな赤いシミを形成していく。その中には、刃に血が付着したままの包丁が置かれている。


 血を多く失い、混濁していく意識。松田は目を閉じ、望んでいた"死"を静かに待つ。それから程なくして、彼の意識は深い闇へと沈んだ…。

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