闇を纏う瞬間(とき)
コツ、コツ、コツ、コツ……
響く足音が暗闇に吸い込まれて消える。
木々に覆われた山道は満月の夜に似つかわしくない程に暗く、心地好いほどに不気味だった。
コツ、コツ、コツ、コツ……
人気のない山道に響く足音は一定のリズムで生み出されては瞬く間に消えることを繰り返した。まるで世界にはその足音以外に音が存在していないかの様な錯覚すら抱いてしまうほどの静けさがそこにあった。
コツ、コツ、ココツ、コ……
不意にリズムが乱れ、足音が
それは
息苦しいほどの孤独感が胸を締め付けた。だがそれは決して暗闇や無音が原因ではなかった。
暗闇と無音の中をただ一人歩んでいたその者は自らの視線の先にあるそれを視てしまった。それを視た瞬間、その者は歩むのを止めた。
伸ばした自らの手先を見通す事すらも儘ならない暗闇に浮かぶそれは黒かった。
暗闇よりも更に暗いそれは
数秒か、或いは数分か、立ちはだかる
その瞬間、その者は大きく息を吐き、そして吐いた分だけ大きく息を吸い込んだ。まるで数年ぶりに行われたかの様なその呼吸は清々しさに満ち、その者が抱いていた
その者はゆっくりと歩み出した。
コツ、コツ、コツ、コツ……
再び歩み出したその者は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます