昏いと光は遠いから

折橋弥生

第1話

五月闇暗き家路を渡る度地獄の門に餓鬼が生えてく


ほととぎす死出の山路へ渡るなら我も連れ行け一声鳴いて


つめた過ぎる冷房のようなあなたの面影のスイッチ切るとき


裏切りはゆびさきの針より痛いだからあなたを憎むことにす


背骨きしみ手指ふるえる目がくらむハーブティー飲む膝を丸めて


死にそびれてみたもののいいことなんにもなかったよ誰に言おうか


わたしは「あんきょ」を漢字で書けますが、ここから未だでられずいます。


憤らしい心地とはいかようか思案するうち今日も終わりぬ


終わる今日閉じゆく頁静かな夜56mgに消える


望むならいくらでも持ってゆくがいいここには絶望しかないが


金網の如き傷跡を引っかく一段暗い淵を考え


闇の淵病がみせる泥濘を泳ぎ越すのか溺れ死ぬのは


脱皮する家守をさしてこんな人生だったら素敵と夢見る


汚されちゃうといけない、と彼女はそこでタイプをやめる。


2weekカラーコンタクトを廃棄するとき何を思うかによる


今夜の月は澄んで明るいらしいから世界を呪うことにした


拝啓そろそろ蝉の幼虫が這い出てきますね苦しいですか?笑


地底からの山吹はうつくしいから露をなめていようとおもう


ほととぎすもあやめ草も卯の花も塗りつぶされる蝉の鳴き声


いま目の眩む一瞬にここに居てよなにも言わないで

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