かえりみち

いつから私は 

転がり続ける輝く小石を 

追いかけているのだろう

どうやっても 追いつけない。

暗闇の中 脇目も振らずに

走っても走っても。



この暗闇が 世界の全てだと思っていた。

そんな世界にたった一つ輝く

この小石を

どうしたらあきらめられるの。


けれどもう…

もう、心臓が壊れてしまいそうなんだ。

追いかけることを

体が手放してしまいそうなんだ。


真っ暗な闇の海に飲まれるように

倒れ

意味なんてなくても。

それでも

手を伸ばして。


あなたは静かに私の傍に座り

私の手にそっと

輝く小石を手渡してくれた


あなたの手のぬくもりで

あたたかい小石


私は瞳を取り戻した。

でもこの瞳にあなたは

映らない


あなたの消えた世界で

あなたを想うことを

許して



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童話『人形と人間』より




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