第9話 挫折
実家に就職した俺は病気で働けなくなった親父にかわり会社の社長になった。高齢化した職人達のうち精密加工が出来る一部の職人を残して65歳以上の職人達は解雇し、安く使える派遣社員と外国人労働者で日本語が堪能な人を雇い入れて徹底して人権費を抑えた。
当初は経営は順調だった。
数年はこの方法で営業利益は右肩上がりだった。しかし待遇の悪さから離職率が上がり腕を上げた派遣社員や外国人労働者は去ってしまい昔のような高精度な金属加工ができる職人が居なくなってしまってから経営は傾き始めた。
親父が社長だった頃は町の自治防災の団長や町内会長、商工会議所の会頭等、他の人が引き受けたがらない事を自ら買って出た為困った時には仕事をくれそうな企業や個人を斡旋してもらったりしていた。
親父は俺にもそう言った活動に参加する様に強く促したが、人付き合いの苦手な俺はそう言った活動から逃げて来た。半強制的に入団させられた自治防災の活動も仕事が忙しいといって土日も誰もいない会社に1人こもっては仕事をする振りをしてはアイドルの顔写真と裸の女性の画像を合成するアイコラと言われる物を作る事に励んではシコっていた。
人付き合いを避けて来た俺を助けてくれる奴は誰も居なかった。
取引のあった地銀や信金からも今後の融資は打ち切られ商工ローンの融資担当に頭を下げる日々、この頃から親父のお陰で取引出来ていた取引先に営業に回ると必ずお父さんはお元気ですか?とよく聞かれるようになった。
恐らく親父が死んだらうちとの取引をやめるつもりなんだろう。
梅野さんと同じ職場で働きたい気持ちに偽りは無いがこんな倒産寸前の会社から逃げたかったという気持ちもあったのは間違い無いだろう。丁度その頃画家になる夢を諦めて戻ってきた弟龍二に後事を押し付けて俺は会社から逃げた。
第十話に続く
※この話はフィクションです。実在する人物団体とは関係ありません。
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