ハッピー推し神とバッド推し神

「この子、この子の過去凄いんだよお?こんなに酷い目にあってるんだから少しくらいハッピーにしても良くなあい?」

目の前に居る別世界の神がそう言って私にすり寄って来る。

それをひらりと躱した私は自分の世界に居る人間の未来をノートに書き連ねる。


「うう、どうして…。どうして、この子こんな酷い目に遭うの?」

躱されてショックなのかこの人間が酷い目に遭うのが耐えられないのか彼女はそう言って膝から崩れ落ちた。

残念だったな、そんな同情を誘うようなことをしてもこの子の運命は変わらないのだよ。


「何故酷い目に遭うかって?私がバッドエンド推しだからだ。可愛い子は可哀想であればあるほど可愛いのだ。まあ、さすがに死んだ後くらいは幸せにしてやらんでもない。」

来世ならまだマシな生活ができるのではないかな。

「酷いよ!」

私の思考を見たのかどうかは定かではないが彼女は頬を膨らませてそう言った。


「大体、貴女の世界はハッピーすぎる。普通、死んだ人間は生き返らないんだよ。どうして自由に行き来させているのさ。」

彼女の世界はギャグマンガの世界に違いない。そう思うほど誰も傷つかない世界なのだ。


「だって、誰にも傷ついてほしくないし。可愛い子たちが傷つくのなんて耐えられない!」

涙目になりながら彼女は私にそう訴えた。わからない感性だな。


私と彼女の世界が両極端なおかげで他の神の世界がちょうどよいものになっているんだろうな。

そう思いながら私は自身の世界に居る人間の家族を生きたまま土に埋めた。

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