死亡フラグ友人

「俺、帰ったらあの子に告白するんだ。」


帰り道、目の前にいる友人はワクワクしたような表情でそう言った後しまったという表情をした。

「こんなところに居られるか!俺は部屋に戻らせてもらう!」

「帰ったら一杯やろうぜ!」

「ここまで逃げてくればもう安心だな。」

真っ青な顔をした友人はすぐさま次々に死亡フラグを立て始めた。


しばらくすると上から友人の真横に鉄骨が落ちてきた。

「なあ、毎回毎回これ何とかならないか?」

俺が友人にそう聞くと彼は首を横に振った。


「無理だね。この体質とは昔からの付き合いなんだ。」

友人はフラグを立てると必ず回収してしまう性質の持ち主である。意味が分からないだろうが実際、このような出来事が何回も起きたため信じざるを得ない。

何回も別の死亡フラグを立てることで逆に生存フラグにすることができるらしい。こんな雑でいいのかについては疑問が残るが生きているのなら良いということなのだろう。

言わなければ良いのにうっかり死亡フラグを立てる癖のある彼が平穏に生きることは不可能だな。


ちなみに彼の告白は失敗したとその夜に聞かされた。

告白も上手くいきそうな死亡フラグだったのだが失敗したということはあれは死亡とセットのフラグなのか。


数週間後、友人が亡くなったという知らせが入った。

どうやらうっかりフラグを立てた後に別の死亡フラグを複数立てるのを忘れたらしい。


遺体を直接は見ていないという理由で俺に話が回ってきた。

具体的な死因も教えてもらえなかったということはあの茶番をしなければならないのか。

ああ、めんどくさい。


俺は外に出て周りを確認した。

よし、だれもいないな。


「目障りだった奴が死んだと部下から報告を受けた。あのビルから落ちたそうじゃないか。俺は死体を直接見たわけではないがあんな高い所から落ちたんだ。もはや生きてはいまい。」

謎のポーズも付けて俺は悪役のような口調でそう言った。


「それはどうかな?」

という友人の声が聞こえたので俺はすぐにそちらを見る。そこには無傷の友人が立っていた。


何度見ても意味が分からない。

こんな雑な生存フラグっぽい何かでも友人は生き返る。

生き返った場合、その前に埋葬されていたら遺体は別人になったり実はただの木だったりするのだ。


「いい加減、その性質を何とかしてくれよ。」

生き返って一安心した俺は友人にそうぼやいた。

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