ナトゥラ諸島の海竜
清水らくは
序
序
ナトゥラ諸島、ルイテルド島の青年テレプは草の茂る高台にいた。海からの風が、生ぬるく迫ってくる。
テレプは魔法使いである。まだ若く知らないことも多いが、できることも多い。
風の強い日には、海と空の「レル」が大地に流れ込む。レルは力であり、魂であり、気であり、力である。
レルが満ちると、生命が活気づく。木々は生い茂り、動物たちは駆け回る。そして魔法使いは、レルを心の声で集める。
声は発しない。直接の請願は、大きすぎる力を生むとして禁止されている。
テレプは心の中でレルを呼び、集めたレルを練り上げた。
彼はまだ若い。元気な魂には多くのレテが集まるが、それをうまく扱えなければ外へと逃がしてしまうことになる。彼はゆっくりとレルを練り上げていく。
彼の右手の中に、小さな光が灯った。淡い緑色の、揺れ動く光だった。
「変な風だ」
テレプは緑の光を上空に投げた。緑の光はくるくると回る。
「嵐が来るかも」
光は弾け飛んだ。
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