錬金術師と女騎士の幸せレシピ
セクシー・サキュバス
1
あわい風が小屋をかすめ、窓をぬける。そして、『錬金釜』のまえにすわりこむ私の頬をなでた。
私、モリアは見習いの錬金術師。今日も錬金術で料理をつくっている。
今日の料理は弁当だ。干し肉をこまかくして、きび砂糖で味をつけたもの。
「よし、これで完成。さあ、セタンタさんをよんでこよう」
同棲している女騎士セタンタさん。彼女が私の料理をたべて、満足そうにわらう顔がすきだ。だから今日も料理をつくる。
「おはよう」
噂をすればなんとやらで、二階からセタンタさんがやってきた。
頭に寝癖がついていて、かわいい。
「モリア、今日の食事はなにかしら」
私は笑顔でこたえる。
「きび砂糖で味づけした干し肉です。一時的に力をあげるバフや傷を回復する効果がついています……どうぞ」
「モリアの料理は最高だわ。いつもありがとう」
「い、いえ……口に合うようでよかったです……」
セタンタさんは私の手を取り、指先にそっと口づけをした。
私ははずかしくなって顔を赤くそめる。セタンタはそんな私の頭をそっとなでてくれた。
「もう、ちぢこまっちゃって……この」
「セタンタさん……」
彼女の手はあたたかくて、さわるだけでしあわせになってくる。
私たちは見つめあい、おたがいの体温をかんじながら微笑みあった。
そして私は弁当を詰めた袋を差し出す。
「あの……今日もたくさんつくってきたので、よければみなさんにもわたしていただけませんか?」
するとセタンタは、私の手を優しくつつみこみながらほほえむ。
「モリアの料理は騎士団のみんながまっているわ」
私……モリアがセタンタさんに、料理をふるまった『あの日』。
そこから、私たちは親しい関係になっていた。
「じゃあ、またあとで」
「はい……」
セタンタさんが小屋から出発するのを見おくる。
「よしッ!」
私は腕をまくり、今日も修行をはじめた。
まずは畑の水やりから。井戸水を桶でくみあげて、植物にあたえる。すると葉っぱがつやつやとかがやきはじめた。
この植物は砂漠にはえる特殊なもの。
私が錬金術で品種改良をほどこし、普通の畑でもはえるようにした。
ここからは、弁当のおかずづくりだ。今日はハンバーグをつくろう。
材料はあいびき肉と玉ねぎとパン粉。
まず魔法木の葉にレシピを書き、錬金釜についているひきだしにいれる。
そして、釜の蓋をあけ、材料を投入する。
「最後に素材にねんをこめて、ハァァァッ!」
魔法をかけて、しばらく時間をおけば……。
「おいしそうなハンバーグの完成〜!」
セタンタさんにもたせる分はとくに丁寧に、愛情をこめてつくった。
やはり、魔法をかけてつくるからか、錬金でつくった料理にはバフがつくのだ。
効果は回復以外にも、病気への抵抗力をたかめたり、解毒作用をたかめたりなど、さまざまだ。
「まあ、こんなものかな」
ひとしごとをおえ、私はかるくのびをした。
なんだかおなかがすいたので、あまったハンバーグをたべてみる。
「味見してみよっと……」
ひとくちかじると……うん、我ながらおいしい!
私は小さくガッツポーズをする。
セタンタさんはよろこんでくれるだろうか。
「モリアの料理は美味しいわ」と、セタンタさんはいつもほめてくれる。
だから私はもっと腕をみがいて、セタンタさんによろこんでもらおう!
そう意気込んで、私は再び錬金釜にむかって、弁当をつくった。
夕方。日が暮れ始めた頃……
ガチャ。
小屋のドアがひらき、セタンタさんがかえってきた。
「ただいま戻ったわ」
私は笑顔ででむかえる。
「おかえりなさい。どうだったんですか?」
「ええ、今日は特になにもなかったわ」と言って微笑むセタンタさん。やはり女騎士はつよし……ということかな?
「弁当どうでした……? おいしかったですか?」
「もちろんよ。いつもありがとう、モリア」
「い、いえ……口に合うようでよかったです……」
「もう、ちぢこまっちゃって……この」
セタンタはそんな私の頭をそっとなでてくれた。
彼女の手にふれると、やっぱりしあわせな気分になる……。
「セタンタさん……はずかしいです」と私の口からもれた声は、すこしうわずってしまった。そんな自分がはずかしくてさらに顔があつくなるのをかんじる。
「で、今日の晩御飯はなに?」
「それは、その……今日はカレーにしようかなと……」
あまったカレー粉と野菜、そして干し肉があることだし。
「あら、いいわ。それならあたしも手伝うわ」
「あ、ありがとうございます、けど、私の錬金術で……」と私。
するとセタンタは笑顔で私の手をとった。
「たまには一緒にしましょう?」
「ひゃ……ひゃい……」
鍋に干し肉とカレー粉をいれ、水をはる。
作業をこなしながら、私はかんがえていた。
セタンタさんはどうして、こんなにキレイなんだろう。
蜜のような金色の髪に、かわいらしいつり目。
たかい鼻に、ととのった顔。
そして、バストが豊満な、スタイルのいい体。
「どうしたの、モリア」
「……いえ」
私ははずかしくなってしたをむいてしまった。顔が赤くなっているのが自分でもわかる。でも……。
でも、好きなんだもん! しょうがないじゃん!
私は表情をさとられぬよう、うつむきながら鍋をにる。
となりでは、セタンタさんが野菜をきってくれていた。
セタンタさんは料理も上手で、手際がいい。
「切り終わったわ」
「じゃあ、鍋におねがいします」
鍋にきった野菜をいれてもらい、私は木べらでかきまぜる。そのたびに、スパイスがかおりたつ。
あくをとりながら、しばらくにつめたら、おいしそうなカレーになった。
「セタンタさん、お皿をだしてもらえますか?」
「わかったわ」
セタンタさんは棚から皿をだし、私はカレーをもる。そして二人でテーブルにはこんだ。
「じゃあ、いただきます」
スプーンで一口食べると……うん、おいしい!
セタンタさんが切ってくれたから、野菜が食べやすくなっている。玉ねぎの甘味と、カレーのスパイシーさが絶妙だ。
「おいしいわね」
セタンタさんも満足そうに、カレーを口に運んでいる。
「セタンタさんのおかげですよ」
「あたしは野菜をきっただけよ」
カレーの味をかみしめながら、おたがいにわらいあう。
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