第九話 突発的な任務

「わぉ…ここか?」


驚愕の声を上げるのを許して欲しい。さっきの豪華ホテル寮を見た後だとこっちの普通の寮がオンボロ寮に見えてしまう。失礼極まりない考えを変える為、一呼吸おいて扉を叩く。


「はーい、あらいらっしゃい。新入生ね!」


「はい、大呀陸朗です。これからお世話になります」


「うんうん元気があってよろしい。私はこの寮の管理人、護藤琴音(ごとうことね)」


管理人さんはおおらか(?)快活な人でニコニコと嬉しそうに俺を案内してくれた。一階は主に共同スペース。台所と食堂、リビング、お風呂、管理人部屋、中庭。

二階は寮生の部屋で俺は1番奥から二つ目の部屋、202号室に案内された。


「今日からここが貴方の部屋よ。自由に使ってね!」


案内された部屋は六畳ほどの広さで整理されたベッド、机、クローゼット、そして一つの窓があるシンプルな作りの部屋だった。その部屋を見て泣きそうになる。初めて鹿目の家に行った時の事を思い出したからだ。


(鹿目さんの家は広いのに片付けが行き届いてなくて酷い有様だったからな…)


「荷物の整理ができたら着替えて降りてきてちょうだい。着替えはクローゼットにかけてあるから」


「はい、ありがとうございます。改めてよろしくお願いします」


クローゼットを空け中を見る。中には学園の制服とローブが入っていた。着替えながら思う。魔術師と言えばやはり黒いローブだよなと。


とりあえず着こなし下へと降りる。


「あ、陸朗くんネクタイ曲がってるわよ!ほらこっち来て」


下のリビングで待っていた護藤さんにネクタイを直してもらう。気恥ずかしい。


「毎日着ける物だからしっかり覚えないとね!はい、できあがり!うん!やっぱりカッコいいわね!」


「あ、ありがとう…ございます」


恥ずかしさが限界突破しそうなのですが!


「護藤さん、新しい子?」


階段上から顔を覗かせる糸目の青年。同じ制服、同じ色のネクタイ、これらの事から同じく新入生だと考察する。


「そうよ〜。お隣さんだから仲良くね♪陸朗くんこの子はー」


「203号室、鵺嶋律(やしまりつ)や。覚えといてや〜」


護藤さんの会話を引き継ぎ鵺嶋がその先を答える。糸目、飄々とした態度、あれだ。よくアニメや漫画で出てくる絶対に信用できないタイプの人…!!


「よ、よろしく…」


結構失礼なことを考えていると鵺嶋は階段を降りて玄関の方へと進み振り返る。


「ほな行こか」


「え?行くってどこに!?」


「んー?学園や」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


寮を出て街を走る電車に乗り込み中央に聳える一際大きな建物へと向かう。魔術学園。魔術を学ぶ為の学舎である。

鵺嶋に着いて歩き、教室までの道を覚えた。鵺嶋に背負っている筒について聞いた時「いつか分かる。今はナイショや」とはぐらかされた。まあ武器である事は間違いないと思う。俺も筒に入れて刀背負ってるし。

教室内は前の方に入り口があり、上下スライド式の黒板を前に階段上に机が並んでいる。全部で六段。教室に入るまでの風景込みで言おう。広いし綺麗なんだけど?あれじゃね?お金持ちのボンボンが来るようなところ。場違い感が凄い…ん?って事はこいつもボンボン!?

またまた失礼なことを考えたが考えても仕方ない事なので頭を左右に振りモヤモヤを消す。

教室内には既に何人かの生徒がバラバラに座っていた。20人足らずといったところ。見た目もバラバラ。黒髪ツイテール、金髪ショート、青髪メカクレ、赤髪とまぁカラフルーだ。ん?あの赤い髪の毛のやつどっかで見た気がする…


「お前あん時の田舎もんじゃねーか」


その声で思い出す。港に降りたばかりの時に声をかけてきた奴だ。でも逃げたんだよなぁ…面倒だな。


「なんや、もう友達居ったんか」


「いや違います」


「誰がこんな貧乏臭ぇ奴と友達だよ!」


「なら無視や無視。変に関わったらろくな事ないでぇ〜お・た・が・い・♪」


「そう思う」ボソッ


「チッ…」


鵺嶋くんと同じ列の机に座り待つ事10分弱…前の扉が開き人が入ってくる。


「今日からこのクラスの担任を押し付けられました。片群刻斗(かたむらこくと)です…よろしくー(棒」ハァ…


モサッとした短髪黒髪。クマの酷い目。最後ため息吐いたしなんか…


「やる気のない先生ぇやなぁ〜」


「鵺嶋くん!?」


「まぁ、押し付けられたからなぁ…でも任された仕事はキッチリやるんでそこは信用してもらえればと。あと急で悪いが今から任務に行くぞ」


「ほんまに急やなぁ〜」


「今みんなの携帯にデータを送った。場所は日本、山梨県にある青木ヶ原樹海。常世から悪魔が出てきたことが観測された」


「山梨名物ってなんやろ?」


「鵺嶋くん!?」


「悪魔の推定等級はA−〜B+ほどの中級悪魔と推定される。以上何か質問あるか?無いようだから出発するぞ〜」


・推定等級

ABCDの4段階と+と−で表される悪魔の脅威度のこと。基本的にAに行くほど悪魔は強くなる。上級悪魔はA〜A+。中級はA−〜B−。Cから+−表記が無く、下級悪魔と総称される。そして隠された危険度Sが存在する。


先生の事前説明を受け、俺たちは山梨県にある青木ヶ原樹海へと向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る