第2話 ウサギうめぇー!


 重い瞼を開け、体を起こす。

 周囲を確認するため、キョロキョロと辺りを見渡す。


 

 ここは……圧倒的洞窟。

 ……そうだ。ウサギさん倒してこの洞窟まで避難したんだった。

 それで安心しちゃって寝ちゃったのか。


 ……い、生きてる。

 良かったぁ魔物が来て無くて。来てたら今頃胃の中だわ。

 ウサギさんも取られてないな。


 ウサギさんから血は出てないから匂いで寄ってくることも無かったのかな。

 まあ何にせよ、生きてて良かった。


 次からは気を付けて休憩しよう。

 

 さて、僕は今非常にお腹が空いている。

 そりゃもうお腹がグーグー言うくらいにはな。

 だが僕の目の前にはウサギさん丸々一体のみ。捌く道具も無し。

 

 火も無し。


 ……生で、いくしか無いのか。

 だ、大丈夫?僕のお腹がブレイクされたりしない?

 不安すぎるんだけど!?


 い、いや、ここで躊躇ってたら飯が食えなくて死ぬぞ。生で食って腹壊したら死ぬけども。


 とりあえず覚悟を決めろ僕。気合だ気合!


 僕は目を瞑ってウサギに齧り付いた。


「……」


 とりあえず感想言って良いっすか?



 えーゴホンッ……三本ツノウサギさん、非常に、美味しいです……っ!!

 まあ毛とかも一緒に食ってるからちょっと気持ち悪いけどそこは吐き出せばいいし。

 

 魔物だからか生で食っても美味しいと感じるな。

 前世で魚以外の生肉食ったこと無いからそこらの変化はよく分からんけど。

 まあ、変わってるだろう。


 僕はめちゃくちゃお腹が空いていたので一瞬でウサギさんの肉は胃の中に収納された。

 っはぁー美味かった。


 さて、お腹も膨れたことだしステータスの確認でもしますか。

 開けステータス。



名前:お前に名前なんてねーよ! 種族:ダークゴブリン  レベル:19


HP:50

力:25

防御:20

魔力:80

魔防:65

敏捷:80

持久力:35


スキル

『逃げ足Ⅴ(MAX)』『闇魔法Ⅱ』


状態:呪い 


称号

『イレギュラー』


 

 この名前のところどうにかなんねえの?開くたびにカチンと来るんだけど。

 まあそれはいつか名前が付いたら消えるだろう。


 それにしてもすんごいレベル上がったな。

 やっぱ僕の胃に収納されちゃったウサギさんは結構強かったのか。

 実力差あっても状態異常でなんとかなる……闇魔法、強し。


 レベルも一つ上がったし、これは勝つる。



闇魔法Ⅱ:状態異常の威力が少し上昇。『気配遮断』獲得。魔力をボール型以外にも変形可能。


 ふむ……これはいけるな。

 気配遮断がでかすぎる。これで背後から状態異常をかけて『逃げ足』スキルで逃走!毒が回るまで逃げ続ける!


 うむ、良い作戦だな。我は策士だな。ハッハッハ。

 ……くだらんこと言ってないでとりあえず実戦だな。


 でも魔物探すのって大変なんだよねぇ。

 探知能力皆無だからな。一応耳と目は良くなってるけど少し離れた所の魔物とかは見つけられないんだよなぁ。


 まあ、頑張って探しましょう。

 僕は魔物を探すために立ち上がって洞窟を出た。

 そこで殺気を感じた。


 洞窟の外には……はちみつを頭から被ったデッカイ熊さんがいた。

 あるぅひ、森の中、熊さんに、であぁた。


 ……うーむ、言いたいことは沢山ある。

 まず、なんで蜂蜜被ってんの?真っ黒な体が所々黄色になってる。


 次に、お前でかすぎんだろ。

 どうなってんだお前5メートルはあるぞ。バケモンじゃねえか。

 顔怖いし。


 そして……お前、そのクソ怖い顔でポカンって顔でこっちを見るなよ。

 ちょっと可愛いじゃねえかチクショウ。


「グ、グオオオ!!」

「ワンテンポ遅いわアホ」


 熊の咆哮にとりあえずツッコミをいれて状況を整理する。

 ……これ、マズくね?あいつ、絶対この森でも上位、少なくとも中位くらいの立ち位置だよな?


 あのウサギさんより絶対強い。

 これは逃げねば。


 そう考え、全力でこの場を去ろうとした。

 だが……


ガンッ


「いっだ!?」


 な、なんか当たった?

 なんだ、これ。……結界、か。


 お前その見た目で魔法使うの?マジかよ。

 

 さて、これで逃げれなくなったわけだが……倒さなきゃいけなくね?

 そうじゃないと食われる。てかお前、身体中にハチミツ付いてるんだからそれ舐めて満足しとけよ。


 こちとら黒いゴブリンぞ?どう見ても不味そうだろ。

 諦めてクレメンス。


「さて熊さんや」

「グゥ?」

「僕の事よく見てみ?」

「……」

「汚れた体、黒い肌……おまけにブサイク。どう見ても不味そうだろ?」

「グ、グオ」


 おっ熊さん、話が分かるのかい。

 これはワンチャン……


「僕を殺しても意味無いぞ?」

「グ、グオォ」


 『た、確かに』って感じで熊さんは頷く。

 

「てことでこの結界解いてくんない?」

「グオ」


 熊さんはお手々を掲げると僕と熊さんを囲っていた結界が解けた。

 うーむチョロい。チョロ熊だな。


「じゃ、またなー」

「グオオー」


 僕は全力で逃げた。

 その途中で僕は熊さん目掛けて状態異常の魔法を放った。

 当たったかどうかは分からないけど、当たったら少しずつ毒が回り死ぬだろう。


 正直余計な行動だったけど、これで倒せれば万々歳だ。

 猛ダッシュで森を進んでると、先程の洞窟からすんごい咆哮が聞こえた。


「グオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」

「うっ……!」


 うっるさ!ブチギレとるやん。

 なんて殺気だ。

 マージで余計なことしちゃった。

 

 こっちに走ってくる音が聞こえる。

 すんごいスピードだ。


 だが、怒って追ってきてるって事は魔法が当たったってことだ。

 逃げ続ければ勝てる……っ!!


 僕はしばらく背後から迫るデッカイ足音にビビりながら森を全力疾走を続けた。

 大型犬に追っかけられた記憶が蘇ったね。


 大体三十分くらい経っただろうか。

 僕の体力も限界を迎えてきた。

  

 マズイ。これはマズイ。

 でも熊さんも毒のおかげで足も遅くなってるしHPも削られてるはずだ。


 だけどほんとにマズイ状況だ。

 僕の体力が持たない。何やってんだあの時の僕!!ブッコロスぞ!


 あぁもう!落ち着けアホ!

 あと……少しの辛抱だっ!!


「っ!!!」


 もう……足が限界だった。 

 僕は木の根っこに足を引っ掛けて派手に転倒してしまった。


 顔から派手にいったからクソ痛い。


ザッ


 もう、すぐ背後に熊さんが来てる。


「フゥ……フゥ……」

 

 熊さんは息切れしてるな。顔色も悪い。毒は確実に効いている。


 まだ、チャンスはある……っ!!


 魔力は最初の状態異常の魔法以外に使ってないし、走ってる間に回復したから満タンだ。

 ここは圧倒的弾幕でHPを削り切る!!


「ボール:連射」


ドドドドドッ


 僕がそう唱えると無数の黒い魔力のボールが熊さんに向かって放たれる。

 だが体を貫通、とまではいかない。やはり威力不足か。


 だがこのまま撃ち続ければ熊さんは動けないし、そのうち毒が回って死ぬ。

 これで……勝ちだっ!


 ……三分後


ドドドッ……


 ……ん?

 なんか音が聞こえなくなったぞ?

 一体なにが……あっ、魔力切れ……魔法を発動できてない。


 熊さんは……まだ動いてやがるっ!?

 逃げなければ……逃げなければっ!


「ぁ……」


 

 だが、僕は疲労と魔力切れで意識を失った。

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