異世界生活も楽じゃない

第1話『いつもの朝』

 眩しい朝日がカーテンの隙間から差し込み、目が覚める。

 相変わらず静かで穏やかな気象を終え、廊下を歩き、台所へ入る。


「おはよう、エリス」

「おはようございます、エレナ」


 エリスを手伝い、食卓に朝食を並べる。

 パンと目玉焼き、それとサラダ。

 洋風の、朝食というよりもモーニングと洒落た呼び方の方が似合ってるかもしれない。

 こっちの世界の食材が魔物の肉以外は同じで良かった。

 抵抗なく食べられている。


「いただきます」


 朝食が終わると片付け、着替えを終えると、教会内の清掃を始める。

 

「昨晩は遅くに帰られたのでしょう?休まれては?」

「大丈夫、少し寝れば体力は全回復だし、美味しいご飯用意してもらってるんだから、これくらいするよ」

「ありがとうございます。では、高い所の掃除をお願い出来ますか?」

「もちろん」


 エリスには洗濯や、別室の掃除をお願いし、空を飛んで上から掃除を始める。

 とは言え、人の出入りが極端に少ない教会で、昨日も掃除しているから、それほど汚れているわけでもなく、大した掃除ではない。

 しばらく掃除をしていると、関係者用の扉が開いた。


「おはよう、遠夜とおや

「おはよう、朝陽あさひ


 掃除を中断し、眠そうに目を擦る朝陽を連れ台所に。

 同じメニューの朝食を用意し、食べさせる。

 その間に掃除を終え、朝陽が使った食器を片付ける。

 着替えを終えた朝陽と合流し、エリスの下へ。

 3人でのお祈りを終え、後は自由時間。

 元の世界の教会がどんなものかは知らないが、この教会では、これがいつもの流れ。


「エリス、昨日の依頼の報告に行ってくるよ」

「ええ、お気をつけて」

「いってきます」


 朝陽がオレの中に入るという表現が正しいのか分からないが、合体というのも違う。

 身体の中に朝陽が入り、主導権はオレで、力を借りてる状態。

 ただ、容姿は変わる。

 髪色が朝陽と同じ白銀になり、顔も少し変わる。

 目の色は、右目が黒で、左目が水色。

 オレと朝陽の目の色だ。

 性別的には女の子。

 誰も教会にいる2人だとは思わない、と思う。

 髪色はともかく、顔が朝陽とはそれだけ違うから。


「お願いします」

「ほ、本当に1人で・・・・・・あっ、ごめんなさい。これが報酬です」

「ありがとうございます」


 新たな依頼は受けず、そのまま外に出て、食材の買い出しをする。

 道中、隠れてまた2人に別れて、店を巡る。

 

「ただいま」

「おかえりなさい。早かったですね」

「依頼受けなかったから」


 エリスに感謝されながら冷蔵庫に食材を入れ、昼ご飯を食べ、少し運動をし時間を潰す。

 たまにくる来客も、基本はエリスと他愛もない雑談をしにくる人のみで、お祈りはない。

 いつもの平和な日常。


「失礼します」

「あら、団長様」

「いつも申し訳ございません。やはり、来ていませんよね?」

「ええ。・・・・・・どこに行かれてしまわれたのでしょうね」

「1人居ないだけでも、もしもの場合には脅威になってしまいますからね。早く見つけ出さないと」


 王族直属の騎士団団長が探しているのは、1ヶ月前この世界に召喚された別世界から来た勇者31人の内1人。

 園宮そのみや遠夜とおや───オレだ。

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