幽閉のアイソレート〜償いは新月の夜に〜

海原珊瑚

第0話 はじまりの神話(プロローグ)

「貴方様がそこに座る資格などとうにありません」

「魔王などという存在と交わってはなりません」


それが、一番初めに言われた言葉だった。感想は何を言っているんだこいつらは、だった。でも見放してしまえば貴方達という人間は玩具になってしまうから。

だから何を言われようと良い。何をされようが構わない。これが最善と信じた道を進むだけだ。それが、それが善い筈だ。善い、筈────



「水竜?邪魔なので消しました」

「聖人?奴らは寝返ることを良しとする生き物です」


「魔王?娶ろうとしましたが腹に槍を突き刺して死にました」


────そうか


この時が始めてだ。

人間を滅ぼしてやろうと心の底から思ったのは。


そうだ、滅ぼそう。それは悪い事だと知っている。それは成してはならない事だと知っている。でも構わない、先に裏切ったのはお前ら人間だ。


それは酷い酷い一手で滅ぼそう。嘆く暇も、悲しむ暇も、まして喜ぶ暇も与えてなるものか。非道と揶揄されそうが構わない。

それだけの事をやられたと自覚し、罪を償え。

罪は償うもの、そう教えたのはお前ら人間だろう?


───償え。血筋が途絶える事を悪とするならば。

───償え。かつての事を偉業と崇めるのならば。




そうこれは数百…いいえ、数億年も前の出来事。とある神様、人を愛していた神様。人を良い道へ導き、発展を楽しむ…まさに善神が悪神へと堕ちるその様。

そして永夜町に人外が蔓延ったその原因。人が忌まわしいと避け、隠した歴史。その一端。


これより語られるのは善とは、悪とは何か。不明確なものとひたすらに向き合った青年のお話。






────記録。永夜町。


「奥様が産気づきました……っ!」


11月9日、新月の夜。


「旦那様は…?!」


永夜町の所謂地主、罪の具現、永夜家。


「もう少しですよ!」


神話の時代から億年も経過したある一点を除いた平和な時代。


「……!男の子です!」


永夜家に男児が誕生。


「奥様…?!」


難産の末である為か母体は助からず。


「……子は無事。それだけでも私は嬉しい。」


子供は特に問題はなく、黒髪が夜に映えた。


「そうだな、名前は……誠也だ。誠也。」


その日のうちに誠也と名付けられる。


「誠也、お前は誠を貫く人になりなさい。」


───"永夜誠也"この話の主人公である。




"お前は誠を貫く人になりなさい。善悪を超越したものこそが誠であるから。"

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