第47話 ジュリエッタ視点(ラスト)
お父様が死んだ後の葬式は憎らしい程何もアクシデントもトラブルもなく滞りなく進んだ。少し突っ込むと参列者が異様に少なかった事くらいね。
お父様が死んだと連絡が来た時はとても悲しかった。そしてバティス兄様が爵位を継ぐ事になるのを思い出した時全身の産毛が全て逆立ったの。バティス兄様は絶対私を屋敷から追い出す。だからお父様が死んだというのは出来る事なら隠さなきゃいけないとさえ思ったわ。
でもいざサナトリウムについたらバティス兄様とお姉様が先にいた。そして葬式が彼らの手によってあげられた。
はあ、何よそれ。それしか言葉が今は出てこない。
(雨、やまないかしら)
今、私はバティス兄様により王都の郊外にある別荘へと移動させられてそこで暮らしている。田舎だし山に囲まれた場所だからここに来るのは嫌だった。でもバティス兄様は有無を言わさず私を馬車の中へと放り込んだの!
「どうせお前の事だから嫌がると思ってたよ。ほら、さっさと移動しねえと工事に巻き込まれて死んじまうぞ?」
「なっ……!」
そう。バティス兄様の指示で本家の屋敷は改装工事に入った。だから私は致し方なくこの別荘へと移動したのだった。それならバティス兄様が暮らしていた屋敷へ移動すればよかったのにとも思ったけど……。
(ふんだ、でもここは建物自体は綺麗だからまだましだけど)
これから商人を呼んでアクセサリーを買う予定。商人は私が子供の頃からお世話になっている人物だ。やっぱりアクセサリーやドレスは好き。たくさん買ってしまいたくなる代物だ。私はきょうだいの中で一番かわいいんだから豪華に飾らないとね。
だからお姉様がこれまで私より派手な格好をしているのは許せなかったし、お姉様と距離が出来ても美しく着飾っていた。私はジュリエッタ。きょうだいの誰よりも美しくいないと。
「こんにちは」
メイドが商人を連れてやってきた。この別荘にはちゃんとメイド達がいるしコックも何人かいる。それは私にとってはとても良い事だ。あのバティス兄様のくせにその辺は詰めが甘いのか私の為にと思ってくれたのかは分からないけど!
「どうぞ」
「アクセサリーをご用意いたしました。どうぞ見ていってください」
小太りの中年くらいの商人がトランクを開けて中に入っているネックレスや指輪を私に見せて来る。メイドは一礼して部屋から去っていった。
うーーん、どれにしようかしらね。どれもきらきらと輝いていて美しいわ。おおよそお姉様が身につけそうなものはなさそうなくらいだけど、あのお姉様にはギルテット様がいる。ギルテット様は第5王子。母親が側妃で王子の中でも下の方の位だけど王族なのは王族。私よりお姉様の方がこれから美しく着飾る可能性も無い訳で。
(お姉様はぐずでのろまだけどね……)
「この中で一番派手なものにしたいわ。どれかしら?」
「それならこちらがよろしいかと」
商人が取り出したのは真珠とルビーのネックレス。真ん中に大きなルビーが雫型にカットされて配置されている。
うん、これは良いわ、ルビーも真珠も大きいし。
「じゃあ、これにするわ。お姉様より派手に見えるでしょう?」
「お姉様? シュネル様の事ですか?」
「ああ、そうだけど?」
「そういえば最近ルナリア公爵家の養女になったそうですねえ。それにギルテット王子との婚約も進んでいるとか」
「は?」
何よそれ。お姉様がルナリア公爵家の養女? そしてギルテット様との婚約?
いや、ギルテット様と婚約するのはほんのちょっとは読めてたけど……ルナリア公爵家の養女になるとか全然意味が分からない。しかもルナリア公爵家よ? 国一の貴族でマリアーナ様は王太子の婚約者で未来の王太子妃であり王妃となる人物。そのような家へお姉様が養女に?
「何よそれ……許せない!」
「ジュリエッタ様! 落ち着いて!」
許せないに決まってる! ぐずなお姉様がルナリア公爵家の娘としてギルテット様と婚約するなんて……!
「ねえ、私どうにかしてお姉様を超えないと! 今王族で独身なのって第3王子のウォリアー様よね?」
「ええ、そうですね……ですが彼は今はアルテマ王国にはいないと聞いてますが」
「じゃあ、他の王族か公爵家で誰か婚約するのに良さそうなのいないかしら?!」
「ううむ……誰かいいのと言われましてもほとんどご結婚されているか婚約者がいる方ばかりで……」
「何よ! 誰かいないの?!」
「私にはわかりませぬ……」
「使えないわね! ちょっと、第3王子のウォリアー様はどこにいるかしら?」
ウォリアー様は私より年上。容姿はギルテット様より劣るけど筋骨隆々な人。それに王妃様の実子だから側妃の子であるギルテット様より格は上だ。あと有名な植物研究者で医学薬学にも精通してるとか。
ソアリス様が亡くなった今、早く婚約者を見つけたい所なんだけど……!
「確か、隣国のクラリティア国とは聞いています。そちらへ仕事でいく用事はありますが」
「なら、手紙をウォリアー様へと渡してくれない? 今から書くわ」
「かしこまりました」
本当はメイドに代筆させたい所だけど、私が書いた方が話が早いわね。
ウォリアー様に会いたいと手紙を書き、商人に渡す。そして真珠とルビーのネックレスも購入した。
「では、お手紙はウォリアー様にお会いできたらお渡しします」
「ちゃんと渡してよね」
それから幸運にもすぐにウォリアー様とお会い出来る事になった。実は商人が別荘から帰ったあとすぐにウォリアー様とお会い出来たそう!
しかも彼はわざわざ私がいる別荘まで来てくれたのだ。
「そなたがジュリエッタか?」
「ええ、ジュリエッタと申しますわ。この度はお会い出来て光栄にございます!」
玄関ホールで狩猟用の服装を身に纏ったウォリアー様を出迎える。
改めて見ても強そうな人だわ。茶髪なのはバティス兄様やお姉様と同じ。それにヒゲを蓄えた姿。ギルテット様より容姿は劣っても雰囲気は負けてないわね。
「ウォリアー様、お話しましょ! 私あなたとたくさんお近づきになりたいの!」
「そうかそうか、じゃあ色々話すとするか!」
ふふ。良い感じだわ。このまま彼を落として婚約まで漕ぎ着けば私がお姉様やバティス兄様より上になる!
世間話なんかを適当に済ませるとウォリアー様はもういかなくては……。というので最後に私は思い切って切り出す事を決める。
「ウォリアー様! 私と婚約してくださいませんか?!」
「……ジュリエッタ……」
「私、ウォリアー様をお慕いしております! あなたと結婚したいのです!」
ウォリアー様は口をつぐむ。何か考え込んでるみたいに見える。そして1分くらいして口を開いた。
「すまない。俺はそう言う趣味じゃないんでね。他をあたってはくれないか?」
「えっ本当ですか?! えっ、えっ?!」
なんでよ! ウォリアー様が私をぎゅっと抱きしめて、これなら私は幸せになれる! ウォリアー様と必ず結婚してみせるわ! ってなる所だったのに!
だけどウォリアー様にはまだ話があるみたい。
「そうだ、これから王都に行きたいの! 今すぐにでも移動したい気分!」
「なぜ?」
「だってパーティー間に合わないでしょ? 今からでも移動しなきゃ!」
「いや、別に今移動しなくとも……ってか参加するのか?」
「勿論! 決まってるじゃない!」
「はあ、わかった。では馬車に乗るが良い」
ドレスはもう着替えなくて良いわね。お化粧も良いでしょう。あの真珠とルビーのネックレスも持っていかないとね。
メイド達に荷物をまとめさせた私は、ウォリアー様と共に馬車へと乗り込んだ。婚約はできなかったけどいずれ私のものにしてみせるわ!
それにウォリアー様は植物研究者。となると……毒草にも詳しいんじゃないかしら? ああ、それならいい事思いついたわ!
馬車に乗って移動して王都に到着した後は離宮に泊まる事になった。私の目は離宮で働くメイドに向いている。
「ねえ、ちょっといいかしら?」
メイドにそう優しく声をかけてみた。
あとがき
ジュリエッタが思いつくままに行動するのはよくあります。ウォリアーについてですが、どうやら彼にはある計画の元、ジュリエッタと会ったようです。
それは次回明らかになりますのでお楽しみに。
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