星空の欠片
朝日屋祐
第一話 告白
星谷学園高校の校舎に爽やかな風が吹き抜けた。
「……」
「雪代? 大丈夫か?」
体育の先生の
「はっ、はい」
「雪代、具合悪かったら、遠慮なく俺に言えよ〜。今日は隣に
佐倉は言う。
すると女子生徒がざわついた。
「えー! アイツのせいで体育祭負けたのに〜?」
「あのお荷物女が〜?」
「
「……雪代、顔色悪いけれど大丈夫?」
「あっ、ありがとう……!」
「ああ、なら、良かった」
「……わたし、椎葉くんと絹月さんにも迷惑をかけちゃったかな」
「そんな事はない。気にするな。俺が聞く限り、絹月達も好きで言ってるわけじゃないと思うし」
「そっか。なんだ。良かった」
千早は、喘息の発作を起こした。夏樹が声をかける。
「雪代。大丈夫か?」
「……あ、ありがとう……ゲホッ!」
「なら、椎葉くんは……? ……ゲホッ。 わたしの……ゲホッ。 事を親身になってくれて嬉しい、ゲホッ……。ゲホッ。けれど椎葉くんも大丈夫なの?」
「俺は大丈夫」
千早は貧血を起こして、ふらついて転んだ。膝から思いっきり、擦りむいた。
「……い、痛い」
「佐倉さん! 雪代が怪我をしたので俺は保健室に連れていきます!」
「おお! 椎葉! 頼むぞ!」
夏樹はジャージのポケットに入れていた、絆創膏を膝に貼って、止血した。
「肩貸してやるよ」
夏樹は千早に肩を貸してくれた。また男子に面倒かけてしまったなぁ、と千早は思った。またふらついて、夏樹の胸板に顔を埋めた。
「……椎葉くん。ごめんね。また、ふらいついちゃって」
「俺は大丈夫。雪代。そんな気を遣わなくて良いんだよ。俺は雪代ほど、そこまで真面目ではないし、気楽に生きてるから」
「そっか」
「なら、雪代は? 体調は大丈夫?」
「スポーツドリンクの
蓋を空けてくれた。なんと優しいのだろうか。この間、千早は夏樹の友人の
『雪代はいいよなあ! 堂々と体育の授業をサボれてなぁ!』
『
『オレは
千早は真琴に平謝りしていた。
見兼ねた夏樹が千早を見る役になったのだ。
千早は保健室のベットで体を横たえた。夏樹は椅子に腰掛けた。熱が出たようで保健室にいることになった。彼は時間が来たら帰るらしい。
「椎葉くん。ごめんね、迷惑かけちゃって」
「……迷惑? そんな訳ないだろう? 俺はただ好きで雪代の事の面倒見ているだけだから」
「へ?」
「今のは聞かなかったことにしてくれないか? それに俺あんまり女子とつるまないし。それにただ……」
「……ただ?」
「な、何でもない。それよりお前。熱大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
「……うーん。そうか」
(俺の都合がよかったら雪代ともっと居たいのな)
「雪代。俺のことは椎葉って呼んでくれ。雪代の下の名前はなんていうの?」
「千早」
「じゃあ、お前。雪代千早って言うの?」
「いい名前だね。……それよりお前は結構……胸、……なんでもない」
夏樹は咳払いをした。
「俺の家には猫がいるんだ。その猫。黒猫なんだけどデブ猫ちゃんでさ。すんげえ、ふてぶてしいんだよな。俺の姉貴が病院に連れて行っているみたいだよ」
「猫アレルギーあるんだよな。俺」
「え? 猫飼ってるのに猫アレルギー?」
「そうなんだよな。雪代はそういうの無いの?」
「猫アレルギーはないかな」
「そっか。なあ、雪代……」
「……うん?」
「今度の休み、よかったら俺と「夏樹ー! 帰る時間だぞ〜!」
「分かったー! 行きます! どうやら、竜馬さんが来てくれるみたいだ」
夏樹は名残惜しそうに帰っていった。
クリスマスシーズン。イルミネーションが光る夕暮れ。星谷高校の門を潜った。千早はマフラーをミラノ巻きにした。
「貧血を起こしたのなら病院に寄ってから帰ろうかな」
遠くに景吾がいた。
「千早?」
幼馴染の本城景吾が声をかけた。景吾は千早の顔を覗いた。景吾は雑誌のモデル業と学業を並行しているようだ。景吾は美形で涼しげな目元をした美青年だ。夕焼けが赤く染まる頃に景吾が迎えに来た。雨雲があり、今にも降り出しそうだ。
「お。二人共、相合い傘? 一緒に帰るのか?」
「は? 佐倉先生になんか関係あるのかよ。千早。ほら、一緒に帰ろう?」
景吾は相合い傘をしてくれた。二人で帰路につく。
「千早。頬赤いけどどうしたの?」
「また佐倉になんか変なこと言われたのかよ」
「景吾くん、先生つけてあげなよ」
「千早。……お前好きなやつでもできたの?」
「え?」
「お前。恋してる顔をしてるな。俺の気の所為かもしれないけど」
「椎葉くん、良い人だなぁって」
「……椎葉?」
「ああ、あのムッツリ男?」
「そんな事を言わないでよ……」
「椎葉夏樹ってあの帰国子女の女男みたいなやつ? 椎葉はハーフみたいだけど、あれは完全に外国人顔だよな」
「椎葉の連絡先なら知ってるけど俺はお前には絶対教えない」
「ど、どうして?」
「俺が嫌だから」
「そんなぁ」
「へぇー。俺なら椎葉みたいにお前のこと不安にさせたり、困らせたりはしないけどな」
「そんなぁ……椎葉くんの連絡先、知りたいのにな」
「んなに椎葉と友達になりたいのか?」
「……う、うん」
「俺がお前と同じクラスならなー。こんな思いはさせないのに」
ザーザーと雨が降り出した。
千鶴は景吾を見上げる。景吾の表情が読めない。景吾の男物の香水の香りがする。
「千早」
「え?」
「俺とお前は単なる友達なのか? 俺はそんなのは嫌だ。お前と……俺は友達じゃない」
「そんな……景吾くんの事は優しい友達と思ってたのに」
「お前が俺の事を友達じゃない。彼氏彼女の関係になりたいと思うなら、そうだと言ってくれ」
「景吾くんの事は友達以上の気持ちとは思えない。景吾くんとわたしは、友達として、思って欲しい」
「そうか。分かった」
「実は俺にも千早の他に気になる子ができた頃だったんだ」
「千早、俺はもう次の恋に進むよ。はっきりと断ってくれてありがとうな。これからも俺とお前は友達だ。今度は俺とその子の恋路を応援してくれ」
「ありがとう! 景吾くん!」
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