間話1 絶対私達だけのものにしようね

 あの日通り魔事件に巻き込まれた私達姉妹は殺されていても全く不思議ではない状況に陥った。命の危機が迫り過去が走馬灯にように見え始めた時、私達姉妹の人生は今日が最後だと本気で思ったのだ。

 しかし私達は救われた。同級生でありクラスメイトでもある平凡な男子、八神涼也の手によって。あの時周りにもたくさんの人がいたがあの場で私と里緒奈を助けようとしてくれたのは八神君ただ一人だけだ。

 そして八神君は自分を犠牲にしてまで私達を守ってくれた。そんな姿を見て好きになるなという方が到底無理な話だろう。

 今までの人生で誰かから好かれる事はあっても逆に誰かを好きになるような事はなかった。だからこれまで彼氏というものができた事は一度もなかったし、別に欲しいとも思わなかった事が正直なところだ。

 だが今は八神君という人間の事が心の底からとにかく欲しくてたまらなかった。私は昔から他人よりも独占欲が強いタイプだったため自分だけのものにしたい。他の人間には指一本触れさせたくなかった。

 ただし双子の妹である里緒奈だけはこの世界で唯一の例外だ。私と里緒奈は元々一つだった受精卵が二つに分裂した事によってこの世に生まれている。

 つまり私と里緒奈は元々一つでありいわば半身とも言える存在だ。だから里緒奈のものは私のものであり、逆に私のものは里緒奈のものでもある。

 そんな私達は一卵性の双子という事で好みもかなり似ていた。だから里緒奈も私と同じように八神君をたまらなく好きになっている。


「遠隔監視アプリは大丈夫そう?」


「問題なく動いてる」


「良かった、これで悪い虫がつきそうになっても先回りできるね」


 八神君の病室を後にして家に帰った私は里緒奈とそんな会話をしていた。先程連絡先の登録をした際に八神君のスマホに里緒奈が仕込んだ。

 遠隔監視アプリはスマホ上のメールやSMS、LIME、ウェブサイトの閲覧履歴などをこっそり見る事ができる本来は子どもの見守りとか盗難防止用に開発されたアプリだ。

 私達はそれを悪用して八神君の行動を監視しようとしている。ちなみに遠隔監視アプリを非表示にする機能もついているため隠蔽も行えるが一つ問題があった。

 それは常に遠隔監視アプリがバックグラウンドで動作している事だ。それによってスマホが重くなったり充電が急激に減るなどのトラブルが起きている可能性がある。ただ古いスマホだったのでそれが原因と思っているかもしれないが。


「ちなみに”女子と連絡先交換、付き合える可能性”って今インターネットで調べてる。私達と付き合いたいと思ってるみたい」


「やっぱりしっかり男子なんだね」


 言うまでもなく私も里緒奈も八神君と付き合うつもりだ。むしろ私と里緒奈以外の女の子と付き合う事なんて許さない。


「絶対私達だけのものにしようね」


「うん、他の誰にも渡さない」


 とりあえず明日以降も毎日面会に行ってまずは仲良くなるところから始めよう。八神君もまんざらでは無さそうな様子に見えたし、お見舞いという名目で会い続ければもっと距離を縮められるはずだ。


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