艶やかで気高く、けれど生きるための食事(血液)を必要とするリサと血を提供する僕。はたしてそれは本当に「生きる」ためだろうか? 時に人間は栄養を摂ることを義務のように感じることがある。現代では一日分の野菜、ビタミンといったパッケージ化された「食」に頼ることで不足分を補う場合も多い。けれど吸血鬼としてのプライドから血を飲むことを欲する彼女を、世界は許すだろうか。普通に食事ができる環境で、それでも血を求める高潔さを、世界は許すだろうか。そう、真っ向からの問いを突きつけられ、私はただ呆然と宙を見上げるしか無かった。飽食の時代に、ただお腹を満たす為だけだったら食という選択肢が溢れすぎた時代に、それを娯楽的に消費することを良しとしない人だっているだろう。人間側(ヴァンパイアハンター等)の都合で隅に追いやられたために、可視化されない層への配慮に欠けるといった問題は、作中世界だけに留まらないはずだ。本作ではそうしたひとと人外とのあわいを描き切っている。企画への参加、ありがとうございました。