聖女エロイーズと予知夢を見る僕 ~聖女様の前世は、魔王になった勇者らしいです~

月杜円香

第1話  聖女の予見?

「聖女の出現の預言が出ました」


 その日、光の神殿の神殿の実質なトップ、三賢人と五人の予見師が会議室に集まって、話し合いがされていた。


「光の精霊、グレシャスの波動を掴んだのか?」


 三賢人の一人、テイラー大神官グレイス・ルーストが、予見師のオッドの顔を見る。


「それは……まだ……」


 オッドは、手に水晶玉を持って自信なく下を向く。

 そりゃ、そうだ。

 光の精霊、『グレシャス』の波動を捕まえるなんて、昔の予知100%っていう予見者でもない限り無理だ。


 もう一人の大神官のギイラス殿が僕の方を見る。

 僕は、大欠伸をして知らんぷりを決め込んだ。


 今のところ、聖女出現の預言をしているのは、水晶占いのオッドだけだ。

 僕を含めて、四人の予見者は何の兆候も掴んでいなかった。


 だいたい、光の精霊『グレシャス』は、神の名前の一つを人間に与えられ、具現化したものなのだ。


 今より、二百年前、光の神がこの世界を去る時に、ある少女に名前の一つを打ち明けていった。

 精霊使いだった、彼女は、光の精霊『グレシャス』を生みだした。


 彼女自身は、その力を使うこと無く命を終えたが、その孫に『グレシャス』を宿らせた者が誕生し、死者を蘇らせて大騒ぎになったことがあった。

この世界で初の聖女と呼ばれる人物の誕生である。だが、これは神殿のトップシークレットである。


 先の聖女様候補の(本人否定)アウグステ様が没してより20年。世の中は、一段と騒がしくなっている。

 神の存在せぬ人間中心の世の中が来たのだ。


 精霊は、だんだんと姿を消し、魔法使いがエリートだということも無くなった。

 神殿の権威は失墜してきている。


 それでも、僕らのような予見師は銀の森の、光の神殿に集められ幼い頃から、教育された。


 そんな所に、聖女様出現の予知があったものだから、たまったものでは無い!!


 今の僕には、何を言われても無意味だった。

 の僕が眠れないのだから……。

 激務が続いたせいだ……。

 やれ、今年の天候占いだの、どこそこの王家の子供は、男か、女かだの

 果ては、逃げ出した逃亡犯の居場所まで捜させられて……。

 もう、僕は疲れ切っていた……。

 



 僕の名前はアルゴッド・マーロウ、神殿の重要ポストであるところの予見師だ。

 まだ16歳なのに!!

 ――生まれは、西域のジェダイン・オアシス。

 僕の淡い金髪と緑色の瞳もオアシス生まれの特徴である。

 古くは王家の血を引くという一族に生まれた。

 そして、占術の一族だけあって、占いにに秀でた者が多く生まる。


 水晶、カード、水占い、方法はいろいろ個人で違っていたけれど、僕はを見ることが出来た。

 それもかなりの確実で当たる、正真正銘の予知夢だった。


 この力は、珍しいことから、神殿側は、僕が五歳になった時から、聖地に連れて来て、されるようになった。

「僕が本物か、だだの正夢視師か」判定されるのは、今年一年のにかかって来るらしい。


 一族の繁栄、名誉、そんなものは他の一族の人がたくさん持ち帰ってる。

 僕は、気楽な気持ちで生きられたら良いんだ。

 それが僕の唯一の願い……。


 ん? 16歳のくせにじじくさいだと? 言ってろよ!! 僕みたいに幼い頃から、神殿のじじい神官ルーストとばばあ巫女リーアに育てられたら、明るい自分の未来なんて見えないってもんだよ。


 ここの森の葉っぱは、銀色で年中枯れずに光輝いていることから、リドムの銀の森と言われいる。

 ついでに僕のいる神殿は、神剣の納められている光の神殿だ。

 光の神を崇める、世界の神殿の総本山的な処なのだ。

 もう神は、いないけどね。


 ルナシエ歴650年____


 ここに一人の少女がやって来た。

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