帰葬使ゴブイムの世界戒心

飛友翔(ヒヨイ)

第1話 始まり



「・・てな感じだから、俺の素性は俺でも解らない。或る日そこにポツンしてたのが俺なんだわ」

「へえー大変だったね。まあでも、今が無事な訳だからこれからじゃないか。これ以上の底辺は無いだろうし。きっと良い事があると思う」

「そっ、そうか。これから・・そんな訳あるか!!」

「おおぅ」


何だろう、とってもいい加減な人にしか見えない。だって最初の話し合いから嘘臭い俺が育った流れを作れって言うんだよ。


「そんな甘々な設定なんておかしいだろ。だいたい記憶が飛んでるなら、その付近の記憶が全く無いなら解るよ。それが部分は有るけど部分は無いとか、そんな所を説明する方が難しいじゃん。なら・・何も話せない秘密でいいじゃん。ってか、じゃんじゃん言わせんな。勝手に子供にすんじゃねえよ」


勝手過ぎなんだよ!神とか知らんし、俺って誰だよ状態だぞ。そしてこの体躯が成人前とか何とか・・えっ?二十歳前じゃなく十五歳前?そうですか、そうなんですか!だから何なんですか?

トラックに惹かれたり崖から落ちたり、誰かに殺されたりじゃないと?ああ、誰かの魂のクローンですか。へぇー


「じゃあ設定が必要だったらの臨機応変でお願い。あとさっきも言ったけど、その体躯じゃないと世界が受け入れてくれないの。前に試したらどっかに飛ばされて塵になったらしい。塵希望者じゃないよね?」

「・・ない」


そんな奴は絶っっったいに居ない!ってか、塵に成った奴はどうなの?いきなりそれって超酷くない?チリちゃん。

この自称神らしき人?の話しは、これからの俺の仕事を与えるんだって。余計な・・働いたら負けって事は覚えてる。だから神罰的なそれを食らってる俺なんだそうだ。罪人扱いか・・校正する気はないけど。


「そんな感じなんだけど、難ありスタートに追加の試練もあったりする。」

「ふえ?」

「生き抜くのに必要なお仕事に従事しなきゃなんないけど、未成年の働き口はないわけだ。」

「おおっい!俺にどないせいと・・いや、環境だよ環境!そこはどうなの?良い所の子から始まるとか。数年は賄えるお金を持たしてくれるとか。」


「どっちも無理。突然子供が増えたけど育てる親・・動物でしょそれ。拾われて孤児院に入るには育ち過ぎだからねえ、湧き出て来た子供は家出人くらいじゃないかな?そんな子供は先に犯罪歴を疑われるもの。それなら有能な子供として魔物を狩って資金を稼いだり、盗賊を殲滅してその財を掠めるとかかな。」

「ああ、行く世界は魔法があるんだっけ。魔法があれば魔物がいるアルアルか。」


「そんなとこ。幾年を費やして文明を築くより、魔法の補助効果を利用した方が簡単だからねえ。その相乗効果が魔素の濃度が濃く成り過ぎて、動物が変質するとは思わなかった。成功は失敗の上に成り立つのさ。」

「ああそうなんだ・・まさか人と魔物が交配しちゃたりとかあったの?おい、こっち見ろ!目を逸らすな!ピユーピユーの口笛もスカスカで無音だし。」


「んまあガンバレ。現地で2か月位は暮らせる資金は持たせられるようにするよ。それに魔物でも何でも狩れる能力は付与するから。そんなスタートダッシュさえ決めてくれればってとこかな。どこでも魔物は蔓延ってるから、素材の換金はそこそこ出来る」

「・・そこそこ?」


「・・ほら、色々な持ち運びに難が出るじゃない?バンバカ狩りまくれば、一気に能力が上がるけど荷物運びの能力は直ぐには上がらないもの」

「・・その能力も最初には貰えないと。それってお金の持ち運びにも苦労するわけだな?」

「運ぶ物の全てが対象になるかな。でもスキルの吸収は出来る様にするから、そこそこほんの一時の我慢かな?」


「言ってる本人が疑問に成ってどうすんだよ。いや焦るなお前、ここで先に解決しちゃえばノープロブレムだ。」

「えーと・・盗賊だね。」

「えっ?いきなり盗賊に代わるの?」

「いやいや、盗賊退治ミッションだよ。少ないけどそこそこ居る」


「どっち?そこそこって其れ也に多い時に使ったりしない?」

「ゴキブリに使わないからぼちぼちだね。ここで条件の揃ってる盗賊団は」

「団って言ってる・・30?50?少な目にしてくれ」

いやだー行き成り殺りまくりは厳しい!死ぬよ、俺の精神が!」


「見張り・・偵察・・もろ達を合わせても30はいかない。そこまで多いと食べて行けない盗賊稼業だから。それとこっちの都合でお願いするから、精神耐性は其れ也に付けてあげる。このイベは早々に熟して貰えば、奴等の隠し財産が貰えるの。その中にそこそこのマジック袋を設置するよ。まあ廃棄寸前で汚れもひどいけど、魔道具の能力を吸収すれば荷運びに苦労はなく成るから。1の大きさが100人乗れるあの大きさね。3つも・・ついでにそこにある全部を取れば、2中の体育館くらいの大きさになる。」


「何処の2中かは聞かない。俺は3中だったし。工高はグランドも狭かったな」

「2中は義務で集まってるから広いの。吸収出来るのはスキルと経験値だけね。それが小数点以下第2位まで表示するんだけど」

「細か!小数点以下いらないよ。」

「えっ、0・0の表示ばつかりに成るよ」


「なんでそんなに・・細か過ぎじゃない?」

「そこは細かい設定じゃないと、すぐに最上位に成るからかな。初期のスキルが派生するには試行を100回はして欲しいからね。それでも上級スキルになれば、その倍が必要で上げて行くのにも積み掛けだから。途中で寿命が尽きるのはざらなんだよ。だからそのスキルを吸収出来る能力は破格だと思ってね。とは言ってもスキルだけとかは出来ないけど。その魂に紐付いたモノ全てを吸い取るわけ。」


そなんだ・・生まれたてですか。それって大丈・・ばないと。放置しとけば死にますか。でも種族特性が有るんだ。そりゃまあ子育てなんて無さそうな虫けらでも、どんどん増え続けるもの。

種族名?その表示の下に種族特性が出たら、その場で仕留めて置かないと生き残る可能性が高いのか。

それが生き残ってしまえば、吸収したモノが無かった事になり取り消されると。だからそいつらから必要な経験値をゲットしたいなら、仕留めないとダメなわけか。

逆に必要のない能力持ちを、わざわざ処理する事はないと。必要ならだね。そんな諸々を吸収して俺の成長が成される形だな。


「そんな能力を上手く使って、経験値に成る害虫?魔物ならゴブリンとかだね。あれ等はかなり弱者の位置づけだから、3体ほど仕留めれば成人男性くらいの身体能力になるよ。」

「ほうほう。もっと上位のオークとかなら成長が早く出来るわけね。」


「単純計算ならそうだけで、予期せぬ事故物件を自ら招くかも知れない。ある程度まで成長していれば、耐えられる事でもこっちも生まれたてだからね・・転んで当たり所が悪かったとか避けて木にぶつかったらその拍子に亡くなられても困るんだけど。」

「ゴブリン一択だな。即接触出来る近場に飛ばして」

「それが間違いないよね。ばらばらっとその一帯でそこそこ駆逐して貰う感じかな。そこで所属特性も吸収してスキルを伸ばそう。あいつらはその特性の中に悪食もあるからね。貧食や腐食にも耐性が付くし、雑食に適応出来るでしょ。」


俺に付与された能力に分析とかが有るらしい。それを使うと対象の詳細が表示される。ゴブリン?種族特性やHPの数字的なあれが、縦書きにずらっと・・見にくいです。

見るのに不要なものはカットしてね。えっ?似た様な能力・・カットか統合に。特殊なやつや初見だけでもいいや。


「こんな成りじゃ移動にも困るんだけど。交通網はどうなってるの?」

「乗り物ねえ。馬車が使える街道は滅多に移動しないだろうし、馬に乗るのも簡単じゃない・・維持するのも大変だからね。そこはゴブリンをギルティしたら盗賊団のアジトに突っ込んで、そこで上手く馬車をゲットしてよ。街道まで道か作られているから、それを使って王都まで行けばいい。馬達用の餌は忘れないように。盗賊も生かして上手く捕まえて。王都に入れば馬車も盗賊も売れるから、その辺は衛兵に投げてね。」


「盗賊も生け捕りかよ・・」

「3人4人?無理の無い人数でいいよ。ただ記憶を残さないと自白も無理だから、物理ゴリ押しで宜しく。移動に2日くらい掛るけど、水でも飲ませとけば死なないから。そいつらは犯罪奴隷に成るから、先の配慮は不要だよ。盗賊達を捕まえて入る事で、王都での入場検査が随分と軽減するからそれがお薦めだね。」


「水って・・樽の積み込みも重労働なんだけど。」

「ゴブリン達が住んでいる傍に、水を武器として飛ばす食虫植物が居るから。そいつらから能力を奪えばいいよ。そいつらの真似・・お薦めしない。虫に向かってピューっと飛ばすあれね。上手く当てて直ぐ傍に落とさないと、ただの嫌がらせに見えるから。唾飛ばして威嚇したら殴られて無く感じの」


「知らんわ!ヤンキーかよ・・その、流れが何となく解り始めたんだけど。水の魔法もそんな感じなら、根を使って攻撃してくる奴は、土属性の魔法が使えるのか?」

「そんな模倣かな?飛ぶ系の魔物は風属性を持つやつも居るからね。そんな感じだから悪魔系の魔物は闇属性の魔法が使えるやつもいる。解っちゃった?闇属性の魔法には影に潜んで移動する魔法があるんだ。ファンタジーでしょ?熟練者になればすいすい移動出来るよ。群れの討伐で即!熟練しちゃうしね。」


「いやまあ、親切丁寧な説明で有りがたいと。でもその辺をもっとどうにか出来たりしない?ちょちょんと頭の中にインストールしちゃったりして。聞けば聞く程最初の方の事が忘れちゃってるからな。」


「出来るけどだいたい壊れるんだよね。脳に無理が無い程度にアップデートしなきゃだから、ゆっくりじっくり馴染ませる為に印象操作も含めている訳さ。だから興味沸きまくりを優先しつつ、強制と使命を突っ込んでるの。」

「・・やる気?テンション?それで上がってるの?」

「そうそれ。まあ洗脳とでも思っていて。自由気ままにナンチャラとか、作り物の君には無いからね。」


俺の扱いが底辺に感じるんですけどー。これって上司と部下の関係じゃないですか?ここは環境改善を要求します。横暴だ―

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る