第3話 被害魔物①ゴブリン被害者②漁師
どこにも無いじゃん!家も、街も!
どうなってるんだこの世界は!!
まさかこの巨大な大地にまるで一つも街も家もないとは思わなかった。
昔はココにたっくさん街があって村があって人がいたはずなのに……おっかしいなぁ。
不思議なこともあるのだなぁ。そんな言葉が口から出たその時の事。
「ぐゲゲゲ?!」
ゴブリンが現れた。
背丈は実に1m程、ただ特筆すべきは、腕の中に死骸を抱えていたことである。
「?はぁゴブリンかぁ。……待てよ?魔物なら普通に反転させればTSでは?……そこのゴブリン、動くなよ?……それ!」
わずか数秒の間にゴブリンはメスに変わった。あまりの判断の速さに思わずゴブリンは固まる。
そして自分が置かれた状況に気がつくと困惑しながら股を触るのであった。
やはりわしの目は凄いのぉ。なんせオスかメスかすぐに見分けがつくんじゃから。
そんな特技さっさと捨ててくれと勇者とやらから何度も言われた気がするが、そんな言葉を聞き入れるオータムでは無い。
ついでオータムは奴の恐怖と困惑の表情からこいつはまだ獲物を狩ったばかりで興奮しているのではないか?そう予測を立てる。
……って待たんかお主っ!
ブツブツと言っていると、気味悪くなったのか知らないがゴブリンは一目散に逃げていってしまった。
───ああ貴重なサンプルが……。
まあいっか。んじゃあさっさとこの大地から降りてあの先に見える大地に行くとするかぁ。
オータムが今居るのは【未完の大地】と呼ばれる場所。ここはかつて古代文明が栄えた場所であり、自分が昔来た時は村も街も栄えておったはずの場所じゃ。
しかし今はどうやらそこん中にいたヤツらはさっさと別の大陸にでも移動したんじゃろ。
つーわけでわしは今からあの近くに見える……大地に行く!
そう言うと地面を蹴ってオータムは飛び去った。
……余談だが大地までの距離は実に100キロ程あるんですけどね。
◇◇◇◇
ゴブリンは村に帰って何が起きたのかを報告しようとした。
しかしそのからだから発せられるフェロモンに他のオスが魅力されてしまっていることに気がつくのが遅れた。
……ゴブリンはメスが生まれにくい。それは遺伝的な話もそうだが、何より種族としてゴブリンにはメスがほぼ生まれない。
故にゴブリンのオスは割と遺伝子が近しい人間を襲って繁殖を繰り返すのだ。
───まあ人間は代替品な訳です。ではここで質問でございますが、代替品で我慢していた連中の所に本物のメスが来てしまったらどうなるのか。
その日ゴブリン(元オス)のゴブリンとしての生は終わりを告げた。
ただの繁殖のための的として、そのゴブリンは利用されることになった。
そして数ヶ月後、そこに新たなゴブリンの巨大な集落ができそうになったタイミングで────、
大地が崩壊した。
海からの侵食により長年限界まで削られていたその大地は、簡単に崩壊を起こしたのだ。
────しかし運命とはどうしてこんなにも不愉快なんだろうね。
一匹だけ生き残ったのだよ。
ゴブリンのメスが。
そのメスゴブリンは、近くの大地に流れ着いた。そしてそのゴブリンはゴブリンでまたしても……その大地に厄介な種を産み落としていくのだが……それはまた先の話。
◇◇◇
「な、なんじゃこの街は?!」
とある大地にたどり着いたオータムは素っ頓狂な声を漏らす。
片っ端から男、男、男、男男男!!
マッシブで、マッスルな男しかいないじゃないか?!
「す、スマンがこの街に女は居るのかね?」
オス臭い匂いを振りまく、褐色の男……まあ漁師だと思うやつに話しかけてみるオータム。すると。
「あ?港町に居るわけねぇだろうが?にしてもアンタボロボロな服だな……あそこに服屋があるからよォ、ほら……ボロボロな服でももらってこいよ。」
「──それはありがたいが。ところでお主良い筋肉じゃな?……うむ、良い体をしておるわ。うんうん……反転。」
いきなりノールックでの反転を受けて、驚ろく男。
しかし次の瞬間にはそこには男などいなく、筋肉で引き締まった女がいた。
「いやぁ……この街、女が少なすぎて彩りが足らんわ。つーわけでのぉ、お主今日から女な。」
「────は、は?……は、おいま、待て……って俺の声っ!俺の……」
慌てて漁師は自分の息子を見る。そして───、
「な、無いっ?!俺の息子が……30年連れ添ってきたはずの俺の息子が無いっ?!」
「ちなみに胸もおまけで盛っておいたぞ?──まあお主はこれからTS女として頑張って生きるんじゃぞ。──いやぁわし、いい仕事したのぉ。」
困惑する男を置いてオータムはどこかへと去っていった。
そしてその場に残されたのは、魚の匂いと、メスの匂いを漂わせる褐色筋肉質な女だった。
◇◇◇
え?どうなったかって?知らんよ。
少なくとも暫くはその港町では女に飢えた奴はいなかったんじゃないのかのぉ?
まあ話すと少々むごい話になってしまうのでなぁ、この話は弟子が出来た話の後にでもしてやるとしようか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます