転がり出した思惑 Vol4
バイク乗りとバイク屋さん。それにキャンプ場でしょ。
美味しいお食事と開放的な屋外バーベキュー施設……
そうだわっ。樹々のアーチが素敵なあの林道が在るじゃない。
スチールとか動画でご紹介すれば、疾ってみたいって思うわよね。
これって掛け替えのない自然なんだから売りになるのじゃないかしら?
「自然が豊かな林道って魅力的だと思わない? バイクで疾ってみたいって思って貰う決め手にならないかなぁ」
「そうね。リゾート地だと自然を売りにする事は珍しく無いわね。だからこそ難しいのよ」
「競合が多いって意味で難しいの?」
「正解。弥生だって旅行の計画を立てる時は下調べしたりするでしょ? 自然を満喫したいって考える人は魅力的な風景に惹かれるのは当たり前なのよ。リゾート地の自然を売りにするウェブページはそれを熟知してるから、プロのカメラマンに依頼して素敵なスチールや動画を掲載してるの」
「それもそうよねぇ。ウェブページで視掛ける画像って魅力的だもの」
「でも逆説的に考えれば自然だけを売りにしなければ良いのよ。ニーズを限定したり、自然と何かを抱き合わせて魅力的に映る方法を考えるのも有りだと思うわ」
「ニーズの限定って狭めるって事よね。広げなきゃ駄目なんじゃないの?」
「狭めて広げるって相反する事なんだけどニーズの発掘でも在るのよ。気軽に出来ないからとか敷居が高くて二の足を踏んでる人達にアピール出来れば発掘出来るかも知れないって事なの」
「なるほどねぇ。チャンスが無かったからやってみたい事でもチャレンジしてないって云う層を開拓して行くのね」
自然と何かを組み合わせって何か在る?
豊かな自然の林道とバイクとキャンプ場かぁ……
景色が良い所をツーリングするのは普通過ぎて売りにするには弱いわね。
キャンプ場の多くは自然が豊かな場所に在るものよね。
この組み合わせを変えると……
バイクとキャンプ場ってイメージ的には繋がるけど、実際にキャンプ場にバイクで行く人って少ないと思うの。
キャンプって思ってる以上に荷物が多くて、バイクに積載する事を考えると確かに躊躇してしまうわ。
あたしだってやってみたいけど、実際にはやった事も計画を立てた事すらも無かったわね。
このラインで考えてみれば何か在りそうな気がするけど――
「愛ぃ。覚えてるかな? まだあたし達が高校生だった頃に、ウチの家族と愛の四人でキャンプ場に行った事が在ったでしょ?」
「うんうん。覚えてるわ。愉しかったわよねぇ。あの夏休みは忘れられないから当然覚えているわよ。それがどうかしたの?」
「あの時は父さん達と車でキャンプ道具を積んで行ったけど、結構な荷物だったじゃない。もしよ、荷物は着替えとか簡単な自分の身の周りの物だけでキャンプ体験出来るとしたらやってみたいかな? って想ったのよ」
「良いわねぇ。物質的な手軽さを提供して気軽にキャンプ出来るなら選択肢に入るわよ。だってさっきの話しを発展させたのでしょ?」
「勘が良いわね。その通りよ。バイクにキャンプ道具を積載するって大変だと思うのよ。それに以前ウェブサイトで視た事が在るのだけど、バイクに積載を考えたテントとかキャンプ用品って小じんまりして愉しそうに思えなかったの。あれはキャンプ慣れしてるベテランさんが使う物なのかな? って感じたのよ」
「そうかも知れないわね。私も詳しくないけど、あの夏休みのキャンプでも荷物は凄い量だったって感じわ。あの荷物を全部バイクに積載出来るとは到底思えないからその通りじゃないかな」
「やっぱりそう思うわよねぇ。現地調達じゃないけどレンタル出来れば裾野も拡がるんじゃない?」
「そのラインで考えて行くのも面白いわ。私も手伝うわよ。取り敢えず思い付く事は……ブログとかのバイクでキャンプした記事のアナリティクスを調べて需要のリサーチね」
「良く解からないけど簡単に出来る事なの?」
「弥生には難しい事だろうけど、私には簡単なのよ。だってアナリティクスを調べてそれを元にプレゼンするのもお仕事の一つなんだから、朝飯前よ」
「愛の負担にならないならお願いしても良いかな?」
「任せなさいって」
蛇の道は蛇って本当ねぇ。
愛ちゃんが凄く頼もしく視えて来るわ。
こんなに何から何まで頼って良いものなのかしら。
あたしの事なんだからもっと自分で出来る事はしなくちゃいけないのに。
何かの形で愛ちゃんにお返し出来れば良いけど直ぐには思い付かないわ。
ちょっと情けなくなるけど、愛ちゃんにとって一番いい方法でお返ししたいからその時まで待ってね。
必ずお返しするから。
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