作曲の天才〜資産家の作曲家への夢〜
赤坂英二
第1話 資産家の夢
有名資産家ボナンス氏の邸宅に一人の発明家が招かれた。
「おぉ!よく来てくれた!」
ボナンス氏は上機嫌に発明家を自室へ招いた。
「ボナンス様、本日はどのようなご用件でしょうか?」
そう問われるとボナンス氏は発明家を自室のソファへ座らせ、グラスにワインを注ぎ、語り始めた。
「私はね、音楽に深い教養があるほうだと自負している。いくつものコンサートに足を運び、私ほど多くの演奏を聴いた人間は現代にはおらんだろう。これはただの予想だがね」
ボナンス氏は嬉しそうに目を細めた。
世界中の音楽というものに触れ続けてきたボナンス氏、彼は彼自身の資産を多く音楽のためにつぎ込んできた。
世界各地で音楽コンサート開催を支援し、人がいるところであればどんなへき地でもコンサートを行えるように尽力した。
音楽家を育てるための投資も欠かさず、教育機関への投資も惜しむことなく自身の資産をつぎ込んだ。
間違いなく彼は現代の音楽界を支えてきた一人であると音楽関係者は語る。
そして彼自身もそうであると自負があった。
スポンサーだが傲慢な態度を取らない彼の人柄は多くの音楽家から支持されてきた。
そんなこともあり日頃から多くの音楽家と交流を持って来た。
ある時から彼には一つの新たな夢ができたというのである。
「私も音楽というものを創ってみたいのだ。実は私自身昔から多くの曲を頭の中で思い描いてきた」
ボナンス氏は目を瞑り、頭の中でそれらの音楽を再生した。
指揮者のように両手を胸の前で小さく動かした。
彼の中で様々な音色の音楽が奏でられる。
「しかしだね、私は楽器を演奏することができない・・・そして楽譜を読むことすらできないのだ」
彼は深くため息をついた。
今日まで多くの資産を音楽につぎ込んできたにもかかわらず、自分は音楽を演奏することができない。なんて皮肉なことだろうかと思った。
しかしそんなことで立ち止まる彼ではない。
「私にはどうしても諦めきれんのだ! 自分で創った曲を自分だけが抱いたまま棺桶の中に入るのは・・・!」
そこまで聞いて発明家は問う。
「・・・私は何をすればよいので・・・?」
ボナンス氏はそこでにんまりと笑い、高らかに宣言した。
拳を突き上げる。
「そこでだ、君にはある発明をしてもらいたい! 楽器ができなくとも作曲できるものを!」
*読んでいただきありがとうございます!
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