第二章
第47話 着せ替え人形
この日、レオナルドはステラと一緒にいつものように魔物と戦い、冒険者ギルドで
自分の部屋のベランダに
「レオ~?今少しいいかしら?」
「っ!?母上?はい、どうぞ」
戻ってきてすぐのノックに、
レオナルドの返事を聞いてフェーリスが入ってくる。
「何かご用ですか?母上」
「ええ、ちょっと。けどその前に、レオは毎日部屋にこもって何をしているの?」
フェーリスは不思議そうに小首を
「え?あ~と、今日はちょっと集中して本を読んでました」
「そう。あまり心配をかけるようなことをしちゃダメよ?」
フェーリスは困ったように笑っていた。
『レオが部屋にいないことを気づかれているのでは?』
「っ、……もしかして何度か呼んでくださってましたか?だとしたらすみません」
使用人にはこの時間レオナルドの部屋に入らないようにと言っていたが、家族ならば当然そんなもの無視してやって来ることはある。そもそも急用があれば使用人だって来るかもしれないのだ。それをレオナルドは
「ふふっ、いいえ。今が初めてよ」
「……そうですか。それならよかったです。それでご用というのは?」
フェーリスの言葉にそっと
「そうそう、そうだったわ。大事なお話があるの。レオもセレナも勉強に鍛錬とずっと頑張ってるでしょう?だから今度、二人のお勉強がお休みの日に、息抜きも
「え!?い、いえ、俺は―――」
フェーリスと一緒に買い物と聞いて、
「先にセレナに話したらね、レオと一緒にお買い物に行くのすごく楽しみだって。もちろん、私もよ。どうかしら?レオは嫌、かしら?」
セレナリーゼへと先に話が通っていて、楽しみにしているというのはレオナルドにとって大きい。その上で、嫌か、という聞き方もズルい。
「んぐっ……、わかりました。買い物、行きましょう」
そんなの断れる訳がなかった。レオナルドは
「よかったぁ。ありがとう、レオ」
フェーリスはぱぁっと花が咲いたように
フェーリスは買い物が大好きだ。特に、レオナルドやセレナリーゼのものを本人と一緒に買いに行くのが好きだった。
だが、前世の記憶を取り戻す前までのレオナルドは、魔力測定の結果が出て
そうして
そこには頑張っている二人に何かご
その後、フェーリスがセレナリーゼに三人での買い物が決まったことを知らせると、二人は大いに喜び合った。レオナルドが苦笑してしまうほど、本当に嬉しそうだった。
(まあ、時期的にちょうどよかったのかもな)
レオナルドは今回の買い物に別の目的も
『何か欲しいものがあったのですか?』
(ああ。いいのが買えればいいんだけど。後は、俺が耐えるだけだ)
『
(行けばわかるよ……。こういうのは言葉で説明するより体験した方が伝わるだろうから)
ステラと話しながらレオナルドは苦笑を深めるのだった。
そして約束通り、レオナルド達の勉強が休みの日に、フォルステッドを
そうして、買い物に来たのはいいのだが……、現在レオナルドは
しかも今回は、フェーリスだけでなく、セレナリーゼとの二人がかりだった。
「お母さま。次はこちらなんてどうですか?レオ兄さまに似合うと思うんです」
「あら、セレナ。それもいいわね。レオ、次はこれを着てみてくれる?」
「……はい」
レオナルドはすでに二時間近くフェーリスとセレナリーゼによって着せ替え人形にされていた。フェーリスと買い物に行くといつもこうなのだ。色々選んでくれるのはありがたいが、あまりにも長過ぎる。そこに今回はなぜかセレナリーゼも選ぶ側に加わっているので
『……この者達はいったいいつまで続けるつもりなのですか?』
ステラの声には
(俺にもわからん。だから耐えるしかないんだ)
『なるほど、これに耐えるということでしたか。こうなるとわかっていたから断ろうとしていたんですね』
(ああ。けど、まあ、二人が楽しそうだから来てよかったかな。いい加減試着はやめたいけど……)
『ならばそう伝えてみては?』
(ん~、楽しそうなのに水を差すのもなぁ……。でも正直そろそろ終わってほしいし……)
しばらく悩んだ結果、レオナルドは伝えることに決めた。
「……母上、セレナ。そろそろ終わりにしませんか?そんないくつも試着する必要はないかと思うのですが。新しい服なんて一着あればいいですよ。どうせすぐに背も伸びてしまうでしょうし」
レオナルドは自分の服選びを終わらせる理由を並べるが……、
「何を言ってるのレオ。ちゃんとオシャレをしなきゃダメよ。本格的に社交界へ参加するのはもう少し先だけれど、お茶会のお誘いがいつあるかわからないのだし。レオが開いたっていいのよ?」
フェーリスから
「いや、どうでしょうか。セレナはともかく俺はもう……」
フェーリスの言葉につい苦笑を浮かべてしまう。
確かに小さい頃はセレナリーゼとレオナルドの両方に誘いがあった。だが、現状そういった誘いを受けているのはセレナリーゼだけだ。魔力のない、貴族として落ちこぼれのレオナルドが次期当主でもなくなったのだ。そんな人間と
レオナルド自身、ゲームの展開を知っているから、それでいいと思っている。ゲームのように変な取り巻きができる方が
「そんなこと言わないでレオ。きっとこれからレオ自身を見てくれるような
「そうですよ、レオ兄さま!私は、その、ちゃんとレオ兄さまのことを見ていますから!」
セレナリーゼは
「ありがとう、セレナ。…まあそうですね。そうなったらいいですね」
現状そういうことに興味がないというだけなのだが、母と妹に余計な心配をかけてしまうのは本意ではないため、レオナルドは
その後も試着は続き、結局レオナルドの分は、フェーリスとセレナリーゼが選んだものを一着ずつ
―――――あとがき――――――
お読みくださりありがとうございました!お待たせしてしまいましたが、第二章始まりました。
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