第25話 休息の日々
勉強にも今まで以上に気合が入っている様子で、積極的にレオナルドに質問するようになった。レオナルドは、セレナリーゼがゲームでの
そして八月に入ってすぐ、レオナルド達一家はアレンを含む数人の護衛とミレーネを含む数人の使用人を連れ、公爵領へと帰省した。現在の公爵領は先代公爵、つまりレオナルドの祖父ジェネルが代理で
公爵領は発展した街と豊かな自然が共存したすばらしい領地だが、長年
そんな中でも、レオナルドとセレナリーゼは祖父母の計らいで毎年様々なことをして帰省期間を
その日は、ジェネルに連れられて馬で遠乗りに行くことになった。
レオナルドが一人で馬に乗れるようになって以降は、レオナルドが一人、セレナリーゼはジェネルと一緒に乗るというのが
「どうかした?」
ジェネルはセレナリーゼに付き
「…………」
だが、セレナリーゼは
「ほら、セレナリーゼ。言いたいことは自分で言いなさい」
「……レオ兄さまにお願いがあるのですが……」
ジェネルの
「うん、何かな?」
「えと…、今日はレオ兄さまの馬に乗せてもらえませんか?」
「え?こっちに乗るの?」
「ダメ、ですか?」
ほんのり
「いや!?全然問題ないよ」
(かわいいなぁ!ちくしょう!)
レオナルドに
「ふははははっ。よかったな、セレナリーゼ」
「はい!ありがとうございます、お祖父さま!」
セレナリーゼは望みが
そうして遠乗りに出かけたのだが、セレナリーゼは顔を真っ赤にしながらレオナルドの背中にぴたりとくっついていた。
(妹!セレナは妹!義妹だろうと妹は妹!)
一方、
別の日、レオナルドはジェネルと一緒に川へ
ただ今年はこの釣りにセレナリーゼがついてきたがった。
釣りなんて
「あの、セレナ?こんなに近いと糸が
セレナリーゼがレオナルドの横にぴたりと並んできたのだ。
「ですが私、釣りは初めてなので、ぜひレオ兄さまに教えてほしくて」
「あ、ああ、そっか。そうだよね」
なら自分よりも
魚が引っかかるまでは時々お
「どうかしましたか?」
その視線に気づいたセレナリーゼが
「っ、あ、いや……、セレナ楽しそうだなぁって」
「はい!とっても楽しいです!」
「そっか。よかった」
満面の笑みのセレナリーゼにレオナルドもフッと笑みがこぼれるのだった。
それから、どういう訳か、セレナリーゼの方によく魚がかかり、釣りあげるのも手伝ったりしてレオナルドは大忙しだったが、セレナリーゼが終始楽しそうだったのでよしとする。
その後、ジェネルが焼いてくれた魚を三人で食べた。
(うん。やっぱりうまい)
レオナルドは一口目を
「こうしてお魚を食べるのは初めてですが
セレナリーゼもニコニコしながら美味しそうに食べている。
「そうだね。やっぱり家で食べるのとは違うよね」
「ふははははっ。それは何よりだ!」
ジェネルは孫二人が喜んでくれて嬉しそうだった。
また別の日、セレナリーゼに誘われ一緒にティータイムを過ごすことになった。それ自体は珍しいことでもないため、セレナリーゼに言われた通り、庭にあるガゼボで待っていた。ちなみに、ガゼボとは屋根と柱があるだけの、上から見れば八角形をした開放的な建物で、
「お待たせしました、レオ兄さま」
「いや、全然。俺も今来たとこだよ」
レオナルドが声の方を向けば、セレナリーゼと一緒にフェーリス、そして祖母のクオーレも来ていた。その後ろにはティーワゴンを押すミレーネの姿もある。クオーレは落ち着いた雰囲気の
三人もレオナルドのようにガゼボ内に座るが、セレナリーゼは不自然なほど自然にレオナルドの隣に座った。
(セレナさん!?近すぎませんかね!?)
ガゼボは四人くらいなら余裕を持って座れる広さがあるというのに、なぜかセレナリーゼは文字通りレオナルドの隣に座ってきたのだ。
「今日は初めてクッキーを作ってみたんです。ミレーネに手伝ってもらって、あまりうまくはできませんでしたけど、味はミレーネが保証してくれました。レオ兄さまにぜひ食べてほしくて」
「ははは、そーなんだー。それはたのしみだなー」
セレナリーゼが近すぎてどうにも気が気じゃないレオナルドは
その間にもミレーネがそれぞれの前に紅茶とクッキーの皿を置いていく。
レオナルドは自分の前に置かれたクッキーを見て目を見開く。
「……セレナ?これって俺?」
目の前に置かれたのは、レオナルドの顔をデフォルメしたと思われる大きめのクッキーだった。チラリとフェーリス、クオーレの前にある皿を見れば、どちらも一口サイズの星型クッキーがあるだけで、つまりレオナルドの分だけ形が違うということだ。立体感を出しているからか、確かにこの似顔絵クッキーだけ少し
「はい……。ミレーネにも難しいと言われたのですが、どうしても作りたくて……」
恥ずかしそうに言うセレナリーゼを見ていたら、変なことでテンパっている自分が
「すごく嬉しいよ。食べるのが
「はい」
レオナルドが一口食べると、バターの風味が口の中に広がり、甘すぎるということもなく、好みの味だった。
「すごく美味しいよ。ありがとう、セレナ」
「私の方こそ、食べてくれてありがとうございます」
レオナルドの感想とお礼に対し、セレナリーゼは少し
そんな二人のやり取りを黙って見ていたクオーレは、
「二人とも、何だか小さい頃に戻ったみたいねぇ」
フフフと優しく笑いながらしみじみと言う。
「そうなんです。ここ最近は特に仲良しで。ね、レオ?セレナ?」
そこに顔を綻ばせたフェーリスが
「そうですかね……?」
「はい……。でも私はもっとレオ兄さまと仲良くなりたいです……」
レオナルドは
「っ!?」
レオナルドがバッと横を見ると、セレナリーゼは気恥ずかしそうにしている。フェーリスとクオーレに目を向ければ、生暖かい視線を向けられてる気がした。
「…………」
(セレナが言ってるのは兄妹としてって意味だからな!?自分だけ義妹だと知ってるからって変な勘違いするなよ、俺!)
自分自身にツッコミをいれながらも、結局レオナルドも気恥ずかしくなってしまった。顔が熱くなっているのがわかる。そして今のことだけでなく、これまでのあれこれも重なって、セレナリーゼの言動で一々心を
―――――あとがき――――――
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