第2話 よりにもよって
「いや、いや、そんなまさか……」
『Blessing Blossom』には悪役貴族が登場する。
その名もレオナルド=クルームハイト。いかにも悪役といった目つきの悪いキャラクターだ。登場時点では王立学園に入学したばかりのため十六歳。ムージェスト王国をメインの舞台にしたこのゲームで、ムージェスト王国のクルームハイト
ゲーム本編開始からすぐのこと、学園内でヒロインの一人である、レオナルドの義妹を主人公が助けたことをきっかけにして最初のうちは主人公と友人のようになる。
戦闘でも使用できるのだが、レオナルドは
それでも近接戦の攻撃力が高く、回復魔法が効かないという欠点はあっても耐久値も高いレオナルドは、本当に初期の戦闘では中々使い勝手がいいのだが、主人公達が色々な魔法を使えるようになるとすぐに使えないキャラと
ルートによってはラスボスになったりもするかなりウザい存在だ。しかもその際は精霊を
ちなみにラスボスになった際、ヒロインの略奪にも精霊の力を使っていたことが明かされる。
まあ、こういう悪役キャラがいるからこそ、ざまあのときには
前世で一番最後にクリアしたのはパッケージの段階で決めていたセレナリーゼ=クルームハイト。プラチナブロンドの髪に
彼は、
このルートでは最後、涙するセレナリーゼの腕の中で精霊とともに死ぬことをレオナルドは選ぶ。そして彼女は原因不明の
というか、他のどのヒロインのルートでもレオナルドは死んでしまうのだが、セレナリーゼに
そう、レオナルドはどのルートに進んでも死んでしまうのだ。しかもほとんどが殺されて終わる。ゲームとしてはバッドエンドに進んでもレオナルドは必ず死ぬ
「俺の人生、
ゲーム内では自分の死が確定していることにレオナルドは頭を抱えた。冷や汗が止まらない。ゲームの世界への転生なんていうあり得ないことが起こったことを百歩
よろよろとベッドから抜け出したレオナルドは最後の希望とばかりに、室内にある鏡に近づいていき、自分の顔を見た。
そして、やはり救いはなかったと絶望する。
輝く金髪に、サファイアのような青い瞳をもつ中性的な整った顔立ちの少年がそこにいた。
目つきこそまだそこまで悪くなっていないが、それはゲームのレオナルドを少し幼くしたような顔で、つまりはゲームのレオナルドだという現実を突きつけられただけだった。
そもそもレオナルドとしての記憶の中にセレナリーゼという妹の存在もあったのだからもう受け入れるしかない。
自分はゲーム通りなら確実に死ぬ運命が待っている、公爵令息レオナルド=クルームハイトとして生きていかなければならないということを。
時計を見ればメイドが起こしに来るまでもう少し時間がある。
レオナルドはベッドに腰掛け、深いため息を
「何とかして死ぬ運命だけは回避したい。何が悲しくて十年もしないうちに死ぬとわかっている人生を送らなきゃいけないんだ……」
前世の人生だって決して
どうせなら主人公に転生したかったという思いが強いが、それを言ってもどうしようもない。
どうすれば望みが叶うのか、考え続けるレオナルド。
「そうだよ。ゲーム通りに進めなきゃいいんだ!」
そして思いつく。まず、大前提としてヒロイン達を略奪しない。そして、主人公と友人になんてならない。
それで自分が悪役になることはないのではないか?
すごくいい案のように感じるレオナルド。少しだが希望が
けれどそれだけでは足らないようにも思う。なぜならレオナルドの死因が基本的に他殺、だからだ。相手は主人公だったり、王国騎士だったり、他国の者だったり、魔物だったり……。
弱ければどんなタイミングで殺されてしまうかわからない。レオナルドは自分に魔力がないとわかって以降、次期当主であり続けるためには他で
ただ……、と不安が
そんな不安が出てくると
「……少なくとも剣術の鍛錬を真剣に続けるのは確定だ。でも、正直剣術だけじゃ足りないよな……。もっと強くならないと。けど、剣術以外で強くなる方法なんて……」
一つだけ。前世の記憶の中にその答えがあった。精霊の存在だ。自身に精霊を宿せば、レオナルドは格段に強くなれる。でもそれは自分がゲームのようになってしまうかもしれないということも意味している。
―――――あとがき――――――
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