第4話 放置

ある日の仕事終わり。

明日香から連絡が来た。


『ご飯食べてから帰るね。』と。

…無視した。


すると。10分後電話がなった。


『LINE見た?』

『うん』

『返事くれないの?』

『楽しんできて。すぐ返せなくてごめん。』


機械の様にそう伝えた。


お互い翌日が休み。合わせた訳では無いが基本日曜休み。僕は当然ふてくされていた。


そんな時、また電話が鳴った。


『久しぶり。』

『うん。 』

『わかる?』

『わかる。消してないから。』

『明日香さん、お客さんとご飯行ったよ。』

『だろうね。』

『大丈夫?』

『殺したい。』

『そうなるよね。でも一応、女性のお客さんだよ。』

『そんなのその後男出してくるかもしれねーじゃん。』

『…一輝』

『うん?』

『好き勝手言えてる?』

『…どういう意味?』

『好き勝手言えてるかって。』

『…千聖ちさとみたいには行かない。甘えられるけど、甘えんぼのままで居ないと捨てられるかも…とは思う。』


『…会う?』

『行く。飯行こ。』

『うちで食べない?』

『いいよ。どうせ男の匂いする。』

『居ないから。』

『嘘だ。お前可愛いもん。』

『本当に。別に可愛くない。』

『行きたい。』

『おいで。待ってるから。』



――――――――――――千聖の家。

「……。」

玄関に入れてくれた千聖を真っ先に抱きしめた。


「一輝…。」

「…そういう目的じゃない。そう思われたくない。お前の事傷つけたいわけじゃない。」

「傷ついたりなんてしないよ?一輝はどうなの?」

「見ない方がいいと思う。」


千聖に手を引かれてリビングのソファに座らされた。


「脱いで。」

「……。」

「聞こえなかった?」


無言で上だけ脱いだ。


「……。」


千聖は言葉を失っていた。

赤い傷が至る所にあって、青紫の箇所も転々とある。


「だから言ったじゃん。でも、お前には無理でしょ?」

「……なんで?なんでここまでしないとダメなの?」

「わかんない。でも安心する。全身に明日香あいつが居る。」

「…これは?入れられたの?」


胸に入った名前を見た。


「俺が金出して入れてもらった。」

「私は無理かも。」

「分かってる。でも、もう別れようと思って。」

「耐えられないの?」

「……俺を放置し過ぎてる。前はこんなんじゃなかった。こんなに寂しくなかった。…結局ね、こんなに体中に明日香あいつがいたところであいつ本人が居ないと無理…。」


僕がそんなことを行ってる間に千聖は僕を抱き寄せていた。


「…やっとわかった?こんな事しなくても大丈夫。こんなにしなくても大丈夫だから。」

「もう『普通』が分からない。」



千聖は迷いなく僕に口付けた。

「戻っておいで。」

「もういい、疲れた。」

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