第6話 冒険者ギルド ①
町でのやる事が一段落したので、俺はここへ来たついでにある建物の前に来た。
「ここが冒険者ギルドか、中々立派な建物じゃないか。」
俺のゲーム知識によると、この世界には様々なギルドが存在している。
魔術師ギルド、商人ギルド、鍛冶ギルド、盗賊ギルド等々。
その中でもやはり人気なのがここ、冒険者ギルドだ。
傭兵ギルドなんてのもあるけど、傭兵は戦が無ければ稼ぎにならないようだし。
やはりここは、冒険者になってお金を稼ぐ方が良いんじゃなかろうか。
俺のユニークスキル「★プラス1」の事もある、まずはこのスキルが使えるのか検証してみようという事。
折角のスキルだ、有効に使わせて貰う。転生特典だしな。
ちなみにゲーム「ラングサーガ」の事だが、俺が学生時代にプレイしていたファンタジーSRPGだ。
結構マイナーな人気だった記憶がある、俺も一度クリアしたら仕舞っていた。
今思えば周回プレイなどして、やり込んでおけば良かったと後悔している。
「こんな事なら攻略本を買って熟読しとくんだったな。」
うろ覚えなゲーム知識しか持たないので、今更後悔しても遅いが。
「後の祭りだな、こりゃ。」
仕方ない、今ある知識とプレイヤースキルで何とかするしかないよな。
「兎に角まずは、冒険者ギルドに入って登録だな。」
俺は大きな建物の前まで来て、看板を見る。
看板には剣と盾のマークが描かれていた。
きっとこれが冒険者ギルドの看板だろう。早速入ってみよう。
扉を開け、中の様子を見る、雑多な雰囲気を醸し出し、色んな冒険者達が居る。
入って直ぐのところにテーブルや椅子が設置されている、酒場と併設しているようだ。
奥のカウンターには、受付嬢のような人が居て、列に並んでいる冒険者の相手をしていた。
多分、あそこのカウンターで冒険者登録をするんだろう。
今は他の冒険者達が並んでいる、時間を置いて受付嬢に話しかければいいだろう。
他にも依頼票などが張られている掲示板があった、やはり他の冒険者達が依頼を見ている。
カウンターがもう一つあった、見ているとモンスターの亡骸を持って来た冒険者が置いて、素材を確認している職員が何か話していて、お金を渡していた。
「ははーん、あれは魔物素材の買い取りカウンターってやつだな。」
モンスター素材は高値で取引されているみたいだ、金に困ったら俺も利用しよう。
武装した冒険者達が、あちらこちらに居て、思い思いに腰掛けジョッキを傾けていた。
「こんな時間から呑むのか、流石冒険者。荒くれもの達だな。」
しかし、もう夕暮れ時なので、酒を呑む時間ではあるのかと思っていたら、声を掛けられた。
「おいそこの兄ちゃん、ここは冒険者ギルドだぜ。何か用事か?」
一見すると強そうな冒険者だ、俺はビビりながらも返事をした。
「は、はい。今日冒険者登録しようと思いまして。」
「ほう、登録か。だったら奥のカウンターで出来るぜ。」
中々親切な人だった、見かけで判断しちゃいかんな。
「ありがとうございます、早速向かいます。」
「おう! 最初はみんな自分に自信がある奴ばかりだが、兄ちゃんはちょっとばかし違う感じだな。気に入った! 登録が終わったら一杯奢るぜ。」
「は、はい。どうも。」
一杯酒を奢ってくれるらしい、気さくな人だな。感じも良い。
ベテラン冒険者ってヤツだな、新入りに親切にするギルドの空気だ。
ここでなら、俺はやっていけそうな気がした。
「おっと、兄ちゃん。受付が空いたぜ。」
「はい、行って来ます。それでは失礼致します。」
ベテラン冒険者と別れ、俺は受付カウンターへ向かった。
受付嬢は美人のお姉さんというのが基本なのだろうか?
ここの冒険者ギルドの受付嬢も例外なく美人だった、俺は緊張しつつ話しかける。
「すいません、ここで冒険者登録が出来ますか?」
「はい、出来ますよ。本日はどのようなご用件ですか?」
「冒険者登録をしたいんですが………………。」
俺が緊張の面持ちでいたのが気になったのだろうか、受付嬢のお姉さんは殊更に優しく話してくれた。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ、初めはみんな解らない事だらけですし、私がご説明しますので、どうかリラックスして下さいね。」
ああ、なんて親切なお姉さんだ、荒くれもの達の集うギルドに咲いた一輪の花とはこの事か。
緊張していた俺の心は、先程の言葉でかなりほぐれてきた。
続けて受付嬢が説明を始める。
「冒険者登録にはお金が必要なのですが、持ち合わせはありますか?」
「え~と、今は銀貨が3枚と銅貨が6枚ありますが。」
「では大丈夫ですね、登録には銀貨が2枚必要ですので。」
なるほど、足りるようだ。恥ずかしい思いをしなくて済んだようだ。
「じゃあこれを。」
俺は財布から銀貨2枚を取り出し、受付嬢に渡す。
「はい、確かに。では、早速登録しますので、必要事項に記入して下さい。文字が書けない場合は私が代筆を致します。」
ふーむ、俺は文字が書けるのだろうか? 確かめた事がないんだよなぁ。
村に居る時は、文字なんて必要無かったし。
「ちょっと確かめてもいいですか?」
「はい、こちらが書類になります。書けそうですか?」
カウンターに置かれた書類には、名前の他、職業、年齢、出身地などを記入しなければならないようだ。
俺は試しに自分の名前を書いてみた、しかし、ペンを持った瞬間に解った。
「あ、俺、文字が書ける。」
名前を書く欄に「ジョー」と書く、そうか、俺は文字が書けるのか。
そして、同時に文字も読めるという事も理解した。
「文字が書けるのですね、識字率は低いので、書けない人が多いのですが、どこかで学ばれたのですね。」
「ははは、多分ですけどね。」
おそらく、俺が日本からの転生者だからだろう。この世界の文字が解る。
これも転生特典ってやつか?
それともジョーがどこかで文字を学んだ可能性があるな、いや、違うか。
もしそうなら俺の記憶に残っている筈だし、やはり特典なんだろう。
転生させてくれた女神様に感謝。
他の記入欄にも必要事項を書いていく。
「はい、これで書類に必要事項への記入は終わりです。あとは冒険者としてやっていく心構えとかですので、少し長くなりますが大丈夫ですか?」
「はい、時間ならあります。」
「その前に、冒険者カードへの登録をする為に、血を一滴たらしてほしいのです。」
「血ですか?」
「はい、冒険者カードは偽造が出来ない様に魔道具で出来ています。その為にお金が必要だったのです。」
なるほど、それで銀貨2枚だったのか。
俺は差し出された針を持ち、自分の指に針を軽く刺し、血を一滴カードに垂らす。
「はい、これで結構です。あなた専用の身分を証明するギルドカードとなりますので、しばらく時間が掛かります。その間に色々と説明しますね。」
「はい、よろしくお願いします。」
「では、ご説明します。冒険者ギルドは主に冒険者の方々への依頼遂行に関する情報や知識などを提供したり、仕事や依頼を斡旋したりなど、互助会のような立場です。それが冒険者ギルドです。」
ふーむ、なるほど。話が長いので割愛するが、要するに冒険者ギルドは世界中に存在し、他の町や国へ行っても冒険者カードが身分を保証してくれるので、カードは無くさない様にしろとか。
あとは、ギルドランクがあり、Fが一番下、つまり駆け出し冒険者って事だな。
一番上がSランク、英雄とか勇者とかのランクらしい。
「僕には関係ないですね。」
「そんな事ないですよ、頑張ってランクを上げればきっと成れますよ。」
「いやー、どうでしょうかねえ。」
「ですが、命だけは大切にして下さいね、幾ら英雄的行動をしても死んでしまったらそれまでです。無茶や無謀は駄目ですよ。生きて帰る事。まずはそれを実践してくださいね。」
「はい、肝に銘じます。」
「あと、冒険者ギルドに所属するという事は、犯罪行為などは謹んで下さい。ギルドの信用問題に関わりますから。」
「はい、それも肝に銘じます。」
「カードの登録が終わったようですね、ではジョーさん。ようこそ冒険者ギルドへ。あなたの活躍に期待しています。」
「はい、頑張ります。」
俺は受付嬢から冒険者ギルドのギルドカードを受け取った。
登録したてで、ランクはFだ。職業は戦士になっていた。
よーし! 俺もいよいよ冒険者に成ったか。
これからは気を引き締めて事に対処しなければ、もう俺を叱ったり守ってくれる人は居ないのだから。
独り立ちしなくては、一人で食っていく。大変だろうがやっていこう。
あとは村に帰って、村長さんの奥さんに報告して、あ~、だけど何て言えば。
領主様には伝えたが、良い返事は聞けなかったと言うしかないのか?
何やってんだよ俺、こんなの子供のお遣いじゃねえか。
「何とか山賊討伐に繋がる事や情報でも無ければ、おめおめと村に帰れないぞ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます