忘夜bouya

祭sai

第1話 友人を失った夜

みんなは、「忘れられない夜」がいくつあるだろうか

告白、プロポーズなどロマンチックな夜

失恋、別れなど悲しい夜

忘れたくない夜も、忘れたい夜も、深く心に残るから

全て忘れられない夜になる

昨日の夜はラーメンを食べたが、1ヶ月前の今日は何を食べたかなんて覚えていないし、来月の今日はラーメンを食べた事なんて覚えてないだろう。

それくらい「忘れられない夜」というのは、時には幸せに、時に悲しく残酷に心に残って無くならないものなのであろう。


私はその夜、突然友人を失った。


ある日、届いた友人からのLINE

文面は本人のラインを使った彼女のお姉さんからのもので、話したい事があるという内容だった。


さっそく大学が終わった夕方の帰り道、電話をかけた。


「妹が亡くなりました。」


自殺だった。

美容師になる夢を叶えるために、田舎の地元から都会の専門学校に通っていた友人との突然の別れだった。

高校の時から友達も少なく、基本的に内気なタイプで

暗いオーラを放っていたが、私に夢を語るときは、すごく明るく楽しそうだった。

ただ人付き合いが苦手な彼女が、都会に出て初めての

1人暮し、家族と会えない寂しさ、その他大きな環境の変化から無理がたたったのだろう。


その知らせを受ける前日の夜まで私は彼女とLINEで話していたが、寝落ちしてしまいそれ以降の返信が無かったので、気にはしていたが、まさかそんな事になっているとは思わず、守ってやれなかった後悔を感じながら、お姉さんの話を聞いていた。

辺りはもう暗くなっていた。


そこから先のことは正直覚えていないが、その知らせから1ヶ月経った頃には、そこら辺にチューハイの空き缶が散乱していたし、タバコの灰皿は山盛りだった。

なんとか忘れようとしたのだろうが、残念ながら

電話の向こうで震えながら、妹の訃報を伝える彼女の姉の声は、はっきり覚えていたし、大切な友人を失ったその夜の事は、いつもの夜食のラーメンのようには記憶から消えてくれなかった。



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