涙色ルビー

真塩セレーネ(魔法の書店L)短編小説

1ページ完結 涙色ルビー

私から言葉と音を奪っているのは、何だ。

──私だ。


叫べ、声ある限り、言葉ある限り、思いある限り。


扉を閉めたのは誰だ。

──私だ。


押し出せ、その手がある限り、夢ある限り、思いある限り。


見えない白線を引いたのは誰だ。

──私だ。


飛び立て、その足がある限り、望みある限り、思いある限り。


限りじゃなくても、心の臓が脈打つならば望みがあるなら叶えに行こう。叫べ、振り払え、魂を震わせよう。そうすればまた走り出せる。


1番の敵は、何だと思う? 

──自分自身だ。


敵が他人なら耳を塞ぐか、相手の口塞ぐか、立ち去れば良いだけさ。そう、自分だけは敵に回っちゃいけないよ。1番弱さと急所を知っているから鋭い。


自分と戦って、流した涙は情熱のルビーへ変わる。


正解か綺麗かじゃない、泥まみれで汚くても恥ずかしくても……その石を大きな海へ放り込むんだ。


いつの日か、その波紋が脈打って振動で遠くまで伝わるかもしれない。


最も伝えたいのは言葉ではないよ。

────────愛だ。


私を見てくれる全ての人に対する感謝の愛。私に希望をくれてありがとう。おかげさまで元気ですと伝えたい。生きた証。


ほら、言葉にすると色々あるし限定的だから……違うんだ。


荒削りでごめんね。ルビーやダイヤモンドにしてみせるから許してね。



ようやく知った。謙遜はやりすぎるとエレガントじゃなくなるって。


ありがとうと感謝を笑顔で伝えたら良いんだ。自分を認めてくれる人、愛をくれる人たちに返す感謝は元気な姿だって。


初めて『好きに生きなよ』と言ってくれた貴方を目の前に、私の涙はきっとルビーに変わっているだろう。


だから手のうちに落ちたこのルビーは大きな海に投げ入れよう。


あとは波に任せて──。



END.



【あとがき】

 本書に真実は一切ありません、虚構楽園フィクション パラダイスです。小説は全てフィクションであり、実在の人物や団体などとは関係ございません。少しでも楽しんで頂ければ幸いです。 


 あなたと出会えたから私は石を磨く。波音に耳を傾けて。


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