第14話 帝国編へのプロローグ
それは、まだヒナ達が帝国へ向かう前のこと。
帝国にてある方面で潜伏する集団が三つ存在していた。
一つはもちろんヒナに属するアレックスを筆頭としたアムリタ教会。
一つは海ノ旅団たるゲームの主人公を筆頭とした冒険者達。
そしてもう一つは、帝国にとっては想定内。
ヒナにとっては予想外の集団。
帝国は半分ほどが海に面する国だ。
魚介類が主な名産であるが、勝手に領海を荒らしたとして海に住まう人魚と長い間戦争状態となっている。
そして帝国は500万人を越える人口を抱えているが、その財政を維持し続けられるのには、ある事情があった。
それは、帝国に地下街が存在するということ。
地下街にいる人口も含めて、500万人となるからだった。
地下は表に出せないものばかりが並ぶ
奴隷だけでない。例えばだが、ファンナム村で起きた残劇により連れ去られた人を改造し、いらなくなったら捨てるゴミ箱とも言われている。
そんな様々な事情で住まうイカれた輩が多い地下帝国────スラム街中央市場を占拠する、
「時は来た!」
様々な武器を手にした男共の視線を集める一人の青年。
痩せ細った身体。しかし他よりは背が高く、190cmはあるだろうか。碧の集団に相応しく、深い黄緑色の髪をしている。
ギザギザの歯が特徴的な彼は、小さなナイフを手に笑う。嗤う。
「俺たちは長年苦しめられてきた。人を物のように人体実験し、商品に扱う貴族共。見て見ぬふりをしてきた王族。そして都合のいいことしかやらない兵士共。そいつらに復讐をと考えてる奴らは多いだろうな……」
青年は帝国の旗を切り刻んだ。それを見ている周囲の熱気は高まる。
「だが俺は違え! 俺は別に復讐なんて考えてねえんだ! お前らの中にも俺と同じ奴はいるだろう! ────ただ、戦いたいだけの奴らが!」
青年は辻斬りとも呼ぶべき殺人鬼。殺しに飢えた狂人であった。
そんな彼に共感するものは地下に多く存在する。
いつからだろうか。個々人としてではなく、皆がそれぞれの思惑をもって暴れたいと願うようになったのは。
地下に無理やり閉じ込めていた狂人に武器を与えた商人がいた。
帝国にダメージを負わせたい人魚がいた。
そして────帝国の奴らを切り刻んでどんな反応をするのかみたい殺人鬼たちがいた。
「殺せ! 国を血で満たせ! 根絶やしにしろ! 俺達はやりたいことをするチャンスに恵まれた!!」
拳を掲げた青年に向かって、誰もが雄叫びを上げる。
「やるぞ、帝国への反逆! 上にいる連中を切り刻め!!」
────それは、帝国転覆への序章だった。
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