第13話 核を治療するという重大性
あの後、リルと合流し夕食を食べつつ話をすることになった。
本体のネバネバな身体の時は食べても味はしないし、食べるための口すらないので身体に直接吸収しなきゃならない。
というか俺の身体って食べる必要あるのか?
スライムですら食べなきゃ死ぬとリルが言っていた。
あの死んでしまったお爺さんの影響を強く受けたようで、考古学が大好きで勉強もいろいろやっているとリルは言っていた。
だからウォルターの寄生で食事が成り立つ俺の特性が気になってる様子だった。
今は人の姿になっているヒビキが興味の対象なのか、触診や魔法による鑑定検査をしており、村で無事だった本をパラパラめくって言う。
「おそらくですが、ヒビキ様が元々スライム種族であるから人に擬態出来たのではないでしょうか?」
「スライムだからか?」
「はい、スライム種は様々な環境に適応して進化を遂げる生き物だと言われています。なので、核を食べたことで進化したのでは?」
「なるほどなぁ……それで合ってるか、ヒビキ?」
村にあったシャツとズボンを着せているので、誰から見てもスライム種族には見えないヒビキに問いかける。
ヒビキは自分の人としての身体をどう使うのか分かっているようだがまだ不慣れらしい。両手でパンを掴み、食べようとしてボロボロ溢していた。
その溢れたパンをアオイが糸を飛ばしてキャッチしている。
「知らねえ。俺はなんとなく女王様と同じこと出来るって思っただけ」
「だからその女王様ってなんだよ」
「なんとなく……呼ばない方がいい?」
「出来ればヒナって呼んでくれ」
「ヒナさま」
舌足らずな所はあるが、少年らしい見た目にあった言動だと思えば可笑しくはない。
「ちなみにさ、リルはヒビキが爺さんに似た見た目でも大丈夫か?」
「……いろいろと思うことはありますが、お祖父様なら『それが運命というものだ』と、そう言って受け入れるでしょう。それにお祖父様の身体を利用されたままよりマシです」
「そっか……ならさ、今から俺がやることに嫌悪感があるなら言ってくれよ」
「何でしょうか、ヒナ様?」
少しだけ思ったんだ。ヒビキが人間になれたのが────これが核を食べたことで起きた影響ならばと。
もしスライム種族ではない者が食べたらどうなるのか。
そして、俺は核を回復させることが出来るのかと。
「アオイにこのウォルターの核を食べさせる」
「それはっ」
「これから帝国に向かうなら、俺たちはもっと強くならなくちゃいけない……というかだな。大きな蜘蛛の姿で帝国へ侵入することは出来ないだろ」
「……そうですね。人であればある程度は誤魔化せるでしょう。私もこの見た目をどうにかしなくてはいけませんしね」
「ああ。だからアオイが人になれるならと思ってな」
そうして俺はアオイを見た。
「アオイ、この身体の核を食べてくれるか?」
「────!」
不意に飛び付いてきたアオイが、胸元にある核を食べようとする。
かじりつくのは蜘蛛の口では無理そうなので俺がいくらか手助けをした。核の中に俺の本体があるので、そこから抜け出す際に核にヒビを入れる。
それは、ウォルターが起きないための措置。
核を壊すとショック死する可能性もあるから、体内からそれを防ぐため。
かじりついたのを見届けた後、俺は全力でウォルターの核を治す。
なんか魔力が減ったような、魂が傷ついたような嫌な感じはあるが、身体を治していくうちにその感覚は消えた。
「どうだ、アオイ?」
「────?」
「ヒナさま。アオイの奴が微妙な顔してる」
「どうやら人になれないようですね。ヒビキ様の時のように蛹にもなってはいませんし……」
「────?」
「まあ、俺が蜘蛛のままでも帝国にはいけるようにするよ。帝国の奴に系譜すりゃあいけるだろ」
「いざとなれば俺がアオイを身体の中にしまいこんでいきます。ヒナさま」
「それ窒息しないか?」
「アオイなら大丈夫です」
妙にヒビキがアオイに無茶振りさせる。ほぼ一緒にいたから短い間でも信頼関係はあるからか。
「とりあえず様子見だな。そろそろ帝国に向けて出発したいし、何か異変があれば俺に言うんだぞ」
「────!」
アオイが楽しそうにクルリと回った。
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