第26話 友達のコトを話すコト


 いつの間にか寝ちゃってたや。


 そう思いながら体を起こして時計を見ると、時刻は18時半だった。

 1時間ぐらい寝てしまった。


 なんて思いながら、そろそろご飯だと思って一階に行くと、なんだか騒がしかった。


 リビングに入ると、お父さんとお母さんが仲良く話していた。


「今日はパーっとやるぞ!! ってお! マコト起きたか! おはよ! マコト、友達出来たんだってな! 父さんめちゃくちゃ嬉しいよ! なんせ引っ込み思案でいつも一人だって、毎年先生に言われてたからな。それが悪いとは思ってなかったけど、いざこう、仲良くする子が出来たと聞かされたら嬉しくてさ……。ってことで今日はお祝いだ! 友達出来たよ記念日!」


 そう言われてリビングのテーブルを見ると、そこには珍しく豪華な食事と、大きな丸いチョコレートケーキが置かれていた。

 

「そうよ! マコちゃんの好きなものたくさん買ってきたから早く食べましょ!」


「う、うん。あ、美味しいハンバーグもある!」


 席に着いて改めてテーブルの上を見ると、ハンバーグからお刺身、サラダにスープと、普段なら並ばないようなものばかりが並んでいた。

 おまけにピザまである。


「い、いただきます」


 そう言って食べ始めると、お母さんとお父さんがワクワクしたような様子で、喋りかけてくる。


「それでマコちゃん、その灘くんはどんな子なの??」


「あ、えっと、灘さんはなこちゃんって名前で、転校生で頭がすごく良いんだ!」


「「なこちゃん!?」」


「う、うん? 女の子だから”くん”じゃないよ」


「あらどうしようパパ、私勘違いしてたわ。マコちゃんが知らないうちにこんなに成長していたなんて……」


「ああママ。これは一大事だ。ケーキも18cmどころか30cmのやつを買ってくればよかった……」


 急に二人とも食べる手を止めて、驚いてこっちを見てくる。

 どうしてそんなに気になるんだろうって思いながら、僕はハンバーグを口に入れる。美味しい。


「そ、それでね、灘さんは本当に頭良いんだ! 学年で一番ぐらいに! だからこの前もテストの勉強教えてくれたんだけど、凄く分かりやすくて、びっくりした! あと相田さんって女の子にも教えて貰って、凄く助かったんだ! その子も二番目ぐらいに頭が良くて……」


 僕が話の続きを喋っていると、二人ともいつになく静かに僕を見ていて、不思議な気分になった。

 そして喋り終わると、二人とも肩を落として、やれやれという感じで笑顔に戻った。


「あ、相田さんも女の子だったのね!? もうちょっとパパどうしよう、マコちゃんったら知らない間に女の子に囲まれてて、ママびっくりして食べ物が喉を通らないわ」


「そうだなママ、俺としては誇らしい息子だが、突然友達が出来た上に女の子だなんて、びっくりしちゃうな……」


 そしてお父さんがごほんっと咳を打つ。


「ただそうだな、よし! 今度お礼も兼ねてその子達も連れてきてくれないか?? せっかくだし、みんなで大きなケーキ食べよう! マコトが良くて、そのお友達らが良ければ、だけど」


「う、うん。分かった! 聞いてみる」


「おう! お願いな! いやぁでも本当にビックリだなぁ。あのマコトに友達が出来たなんて……。でもパパはなんか嬉しいなぁ」


「ママは嬉しいより安心したわ。マコちゃんが一人ぼっちじゃないって分かってホッとしたわ」


 そう言うと、二人とも食べ途中だった手をまた動かし始めた。


 そして、食べてる間ずっと質問攻めにあった。


ーーーー


 食べ終えて、お風呂に入って、歯磨きをして。

 寝る支度をした僕は、今日の宿題をしていた。


 最近は楽しいことばかりだけど、宿題するのが夜になっちゃってるから、そこだけ嫌だなと思っていた。

 というのも、僕の宿題を解くスピードが遅いからだ。


 今までは宿題を終えてから本を読んだり、ゲームをしたりしていたけど、最近は帰ってくるのが遅いせいで、この辺が少しズレてしまっている気がする。


 そんなこんなで宿題を終わらせると、ふとぬいぐるみのことを思い出す。


 ぬいぐるみ、明日帰ってきたら忘れないうちに自分の部屋のクローゼットに入れないとなぁ。


 なんて思いながら宿題をランドセルに詰めて、僕は久しぶりにラノベを読む。


 この前灘さんと買った「僕たちはイケナイコトをする」だ。

 半分ぐらい読んだけど、結構面白い。

 

 今読んでるところは、主人公とヒロインが都会に行って買い物をするんだけど、夕方になると急に悪い怪獣が現れて、ヒロインが取り憑かれてしまい、二人とも離れ離れになってしまうってところだ。

 

 この後どうなるんだろう。

 

 そう思いながらページを捲ると、主人公がどうすれば良かったんだろうと悩んでるページが描かれてる。


 でもなんかいつもより本の文字が頭に入ってこない。


「今日は疲れてるのかなぁ」


 そう思い、ベッドに入る。


 そして、ふと、明日はテスト返しの日だったことが頭に過ぎって、眠れなくなってしまう。

 

「そうだ、明日テスト返しだ。緊張する……。嫌だなぁ……」


 僕はやっぱり起きて、テレビを観てから寝ることにした。

 

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なことマコトのダメなコト 来栖みら @kurusumira0

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