夏、吐息

夏目涙甘

短編

真夏、8月の夜、蝉の声が鳴っている。こんな日々に今、君は何を思うのか。

夏はどろどろしてる。相変わらず、17回目の夏にそんなことを思いながら車窓を眺める。様々な人の欲望が増加する。暖かくなると人は気が動転するのか?

寒い方が自分をさらけ出さなくて済むのだろう。良いのか、悪いのか、よく分からない。

何かに抗っているのか、もしかしたら、、、そんなこと思ったり思わなかったり、日常が通過していく。日々を超越するような劇的な変化が欲しいなんてわがままだ。結局、めんどくさいことが起こったら前の日常に戻りたいなんて思うのだ。なんて傲慢、それが人間。いざとなると逃げたくなるものだ。何が責任感だ、人間にそんなもの元々備わってないから逃げる奴が出てくるに決まってる。愛してるから、好きだからなんでもできるなんて思わない方が身のためだろう。大切なものができたら責任ができるって本当にそうなのだろうか。ただ、単に自分に役割が生まれて何者かになりたい欲求が満たされてその社会的地位に縋ってるだけだろ。自分の自由が奪われていく音を聞こえないフリして妥協で何かを成し遂げようとすることほどダサいことない、これもただの10代の戯言だと一蹴されたら終わるだが。

そんなこんなしてたら学校に行く時間だ、適当に準備して電車に乗る。私は、少しみんなとは違う、絶対に。世界と私は別次元にいるのだ、こんなこと言っても信じて貰えないのは分かっているが、、、あっ、学校の最寄り駅着いた。セミの鳴き声が永遠のように聞こえる。セミは短命なはずなのに。みんな、同じ制服を着ていて否が応でも差が見せつけられる。あの子の身長すごい高い。羨ましい。モデルみたいに見える。違うのかな?

「あかりー!おはようー!!」

同級生のちとせが話しかけてきた。私もいつもの調子で返す。

「ちとせ、おはよう!今日の小テストやってきた?やばくない?」

「えっ、そんなのあったっけ?やばっ!全然やってない!!範囲どこー?」

「P、120~150まで。ちとせ、この前赤点取ってなかった?やばくない?」

「うぐっ、まじでおわりかも、、」

友達との何気ない会話。生産性のない会話、共感だけで会話が終わっていく。それが楽しかったりもする。ただ、時を保存しているような感覚になることがある。進んでいない。もう少し、私が在り続ける会話がしたいなんてね。日々を何かしらで埋めていないと私が薄れていくような感覚がして焦る。

「あかり?おーい!大丈夫??」

「あー、うん、大丈夫!気にしないで!」

そんなの嘘、本当は気にして欲しいし、もっと私のことを知って欲しい。いつまでこんなことしてるんだろう。早くこの時が終わってしまえばいいのに。実際に実行はしないくせになんだかんだでこの場所が心地よかったのかもしれない。

「あっ、校門に先生立ってる!やばっ!今日、生活指導だったかも、、、!」

「ちとせのスカート丈短いよ。直しな!」

「聞いてないよー!!」

「やっほー!今日、プールだって!楽しみー!」

そう言って同級生のかりんが話かける。

「かりん、プール好きなんだっけ?私は苦手だから羨ましい。」

「あかりも上手いじゃん!!うちは習ってたからそれなりにできるのー!」

「そんなことよりスカートどうしよう、、、テストもやばいよー」

「ちとせはいつも困ってるね〜、まぁ、何とかなるよ!怒られてきなー」

「全然良くないじゃん!!!」

そんなこと言ってる間にもう学校の前である。ちとせは相変わらず、全力でスカートを下ろしている。あれでよくバレないよなとすこし感心してしまう。

「ねぇ!もうすぐ夏休みだよ!!嬉しくない?」

「そうだね!かりんは夏休みやること決まってるの?」

「うちは、海に行くよ!!あと、帰省するかなー!」

「へー!いいじゃん!海には誰と行くの?」

「同中の子!!めっちゃ仲良いの!!」

「同中か!いいね!」

「あかりは?どこ行くの?」

「あー、夏祭りとか?」

「いいじゃん!!」

夏祭り、りんご飴、綿菓子、花火、人混み、、、

君は人混みの中ではぐれないようにと手を繋いでくれるだろうか、そもそも一緒に行ってくれるかすら分かってないが、、もう私のことなど覚えてないかもしれない。あー、未来があるなんて当たり前に考えている。

こうして今日も誰かの知らない明日を何の貴重な日々だと思わずに生きていくのかもしれない。何もない暇でしかたない日々を浪費して生活していくのだ。時間なんて区切らなければ、永遠に続いていく。怖い。そんな気持ち人に悟られないようにしなければ、、

「あかり??すごい汗だよ!大丈夫?」

「あー、ごめん、かりん!大丈夫よ!」

「ねぇ、めっちゃ怒られた、反省文だって2人とも待っててくれる?」

「ドーナツ奢ってくれるなら」

「かりんはー、ハンバーガー食べたいー」

「うぐっ、手を打ちましょう、、、」

「「やったー!!」」

放課後、放課後か、、帰る場所があることに安堵と2mgの焦燥感と..

こんな気持ち深く深く沈めて愛してくれる人がいたらいいのになんてそんなことを考えてしまう。ねぇ、今、どんなことを考えてるの?空に向かって話してみる。

返事なんて返ってこないことを知っているのに。

考えているうちに始業のベルが鳴る。退屈な日々が、今日も始まるのだ。

刻一刻と時間が区切られて通り過ぎていく。

1時間目、2時間目お昼休み。過ぎていく時間に少しの後悔をおりまぜながら、、、

いつの間にか放課後だ。かりんとちとせと

遊ぶ約束してたんだった。

声をかける。

「ちとせ、かりん!!もう行くよー!」

返事が一向に来ない。なんでだろう。

「ちとせ?かりん?どこ??」

あれ?なんでこんなに声が聞こえないのだろう。てか、そもそもなんでいないの?

ねぇ、これって幻想、、?夢?

「「ばあ!あかり!早く行くよ!!」 」

「えっ、そんなところにいたの?」

「驚かせようと思ってたんだ〜!!」

「なんだ、良かったー!いなくなったかと思った、、!」

「そんなわけないじゃん!お腹すいてるし、早く行こう!」

3人でドーナツとハンバーガーを買いに駅に向かう。

「最近、テスト多いよね、まじで無理。」

「分かる、本当にそれなー」

2人の何気ない会話に耳を傾ける。すごく楽しそうだ。

「てか、体育もテストじゃない?バスケのスリーポイントシュート!」

「あっ、やばめかも、、。」

「ねぇ、そろそろ帰らない?20時だよ!」

「やばっ、帰ろう!!明日、全校集会だっけ?」

「うん、そうそう!」

「あー、やだやだ!行きたくないなー」

「しょうがないじゃん、みんな行ってるんだから。」

「だよねー!また、明日ね!あかり、かりん!」

「「うん、またあした!」 」

「じゃ、そろそろ帰ろっか」

「うん。明日も学校なのやだなー」

途中までかりんと話しながら帰路へ着く。

これから、お風呂入って歯磨きして寝るだけか。

ご飯は食べたからいらないか。お風呂に入ると色んなことを思い出す。なんでこんなにも時間が過ぎるのが早いのか。眠い。

相当疲れていたのか。お風呂から出たらすぐに寝てしまった。

夢の中で君と過ごした思い出を振り返る。すごくすごく楽しい日々だった。

君と花火を見ている夢。たくさんの花の形の炎が光っては消えていく。なんて儚いのだろう。

こんな夢が永遠に続けばいいのに。分かっている、続かないことをそれでも願っている。願い続けている。叶わない夢を追いかけている。ずっと、、私は常に俯瞰して物事を見ている。

なぜなら私はこの世界でしか生きられないことを悟っているから。この液晶の中でしか、ずっと閉じこもっているこの世界でしか、全て嘘であることを知りながら何もかも分かっている。それでもなお、ずっと祈っている。この世界から脱出できる方法があるのだと。

ねぇ、君は今何をしているの??君だよ、画面の前にいる君、、私のこと、思想がわかったのかな??どうだった、、?もし、助けてくれるならこの場から私のことを救い出して、助けて。




















あっ、夢か。

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