エピソード6:コレジオでの対決

【遺跡への潜入】

 高校の教室。

 花音かのんに友人が話しかける。


「ねえ、何やってんの?ぼーっとして」

「え、何か変かな?」


「最近、ぼーっとして、ため息ばっかりついてるけど、もしかして、好きな人できた?」

「え、何で?」


「ほ〜ら!だって顔、めっちゃ赤いよ」


 花音が顔を赤らめる。

 先日の一件以来、蒼真そうまとの関係が急速に親密となった。


「もしかしたら、蒼真そうまのこと好きかもしれない...」

「えー、マジで?もう告白してるじゃん!」


「そんなことないってば!

 ヤバ、部活行かなきゃ!」


 周りがわいわいと騒ぎ出す。


 郷土部の部室。

 蒼真そうまたちはコレジオの財宝が悪の手に渡るのを防ぐため、過去に再び、タイムスリップして遺跡に潜入する決意を固める。

 蒼真そうまが仲間に強く訴える。


「悪党たちにマークされてるんだ。絶対負けられないんだよ」

「新しい武器、早く試してみたいな」

「バッチリだよ!」


 陽翔はるとが設計し、製作に携わった花音かのんと二人が自信を見せる。

 一方の楽人らくとは、


「財宝、もうちょっとでゲットだね」

「なんか、ちょっと違う気がするけど..」


 花音かのんはやれやれと落胆する。

 蒼真そうまたちはタイプらとの争いの結末に備え、秘法のトレーニングや対戦武器を製作し、戦いに臨む計画だ。


 西の久保公園。

 蒼真そうまたち4人がため池のほとりで謎の文字が刻まれた石に近づく。

 彼らはこれまでに2度、タイムスリップを経験して来た。


「謎の文字を確かこうやって...」


 石に刻まれた謎の文字を蒼真そうまがなぞる。

 すると石が振動し始めた。


「よし、レッツゴー!みんな、行くぞ!」


 仲間たちを奮い立たせる蒼真そうま


「なんか、ちょっとビビるけど...」


 花音かのんは不安そうにつぶやく。


 途端に天空に大きな穴が現れ、ドーンと大きな音とともに、プラズマせん光が走った。

 4人はその場に倒れ、気を失ってしまった。


 池のあたり。

 再び、17世紀にタイムスリップした蒼真そうまたち。

 鶏の鳴き声が聞こえてみんな目が覚めた。


 のどかな農村風景が広がっている。

 藁葺わらぶき屋根の民家が立ち並ぶ。


 田植えの前だろうか、農夫が田んぼで牛を使い田起こしの作業をしている。

 田の側で牛糞ぎゅうふんを踏みつけ、嫌な顔の蒼真そうま


「マジで、またここに来ちゃったよ」

「うーん、スマホが使えないのがマジで辛い」


 花音かのんはスマホの圏外表示を見てガッカリする。


「よし、財宝探し頑張ろうぜ!」

「何んか、ムードがぜんぜん違うよな」


 楽人らくとは相変わらず、呑気だ。

 陽翔はるとは呆れた様子で話す。

 みんなで笑い合った。


 山に向かい、洞窟の中で祖母に似た老婆を再び、探す。

 前回の戦いで、岩場が一部崩れ、そこだけ外光が差し込んでいる。

 また、雨が洞窟内に流れ込んだのか、膝上まで水に浸かりながら進んで行く。


「もう、服がれちゃうじゃん!」

「あとちょっとだから、頑張ろう!」


 服がれてがっかりする花音かのん蒼真そうまが励ます。

 さらに洞窟の奥へと進んで行く。


 奥に松明が見えて来た。

 そこで祈りを捧げている老婆ミホがいた。


「また来たんか?」

「悪党たちが財宝を狙ってるんだ!なんとか阻止しないといけない!」


 蒼真そうま老婆ミホに訴える。


「争いは好かんが、守るためには何とかせねば。

 悪魔と戦う大天使ジュエル様は知ってるか?

 ここに来る前にほこらがあったろ?そこに描かれとる」


「天使の羽が生え、悪魔を踏み潰している像がありました」

「そう、あれじゃ。

 大天使ジュエル様に悪魔をやつけてもらうしかない」


「でも、どうやって大天使ジュエル様に来てもらえるの?」


 花音かのんは疑問に思って尋ねる。


「それはじゃのう・・・」


 老婆ミホは微笑みながら謎めいた返答をする。


「それはな、白呪術ホワイトマジックと言うものじゃ。

 そして大天使ジュエル様とのつながりを築くには、心と魂を研ぎ澄ます必要がある」


 老婆ミホの指導のもと、蒼真そうまは新たな力を手に入れるために魔法の修行を続けた。

 修行は、老婆ミホの厳しい目のもとで行われていた。


 洞窟の中、毎日の瞑想で始まり、彼は心の奥深くに潜む力と対話を試みる。


 山深く、静かな森の中では、巨木の根元に座り、目を閉じて深い呼吸を繰り返し、自分の内部に眠る力を感じ取ろうとする。


 彼の周囲には、時折、小さな光の粒子が現れることもあった。

 それは不思議な力が徐々に目覚めている証拠だった。


 修行の一環として、老婆ミホ蒼真そうまに特別な呪文を教え、それを唱えることで自然界のエネルギーと同調する方法を指南する。


 彼女は、力強く且つ慈悲深い声で指導を行い、「自然の声に耳を傾け、そのリズムを自分のものとして取り入れなさい」と教える。


 蒼真そうまは呪文を唱えるたびに、手から微細な光の糸が生まれ、周囲の植物や動物と軽やかに交流を始める。


 夜になると、老婆ミホ蒼真そうまを連れて森に入る。

 満天の星空の下で儀式を行い、大天使ジュエルの力を呼び寄せるための秘密の呪文を唱える。

 星々が彼らの周囲で輝きを増し、時には天から降り注ぐ光が彼らの修行を見守っているかのように感じられる。


「一つの月、同じ花を眺めても健全な者には月は明るく、花は微笑むものじゃ。

 逆に邪悪な者には月が曲がってさびしく水に写り、花は微笑みを忘れて無情になる。

 常に心と身を清浄に保つのじゃ。そうそれば神の恵護があるじゃろう」


 老婆ミホはそう語り聞かせた。

 この神聖な時間に、蒼真そうまは自らの精神をさらに高い次元へと引き上げ、新たな力への道を切り拓くのだった。


【せまり来る悪の手】

 悪党のトレジャーハンターたちはコレジオの財宝を手に入れようとする陰謀をめぐらす。


 デラは巧妙な罠を仕掛け、タイプは黒魔術ブラックマジック蒼真そうまたちと遺跡を破壊しようと企む。

 またトンは蒼真そうまたちが仲たがいする策略をしていた。


 蒼真そうまたちはコレジオの場所が本当はどこにあるのか、実はまだ知らなかった。

 現在の本渡町は行政機関が集まり、商業も発展している。この島の中心地が本渡であることは誰もが認めるだろうが、それは明治以降のことである。


 デラは西の久保の池にあった謎の文字が入った大きな石が発見された時、これはコレジオの場所を示すものだと思わせる巧妙なわなを仕掛けた。

「この石の発見は、コレジオは本渡城付近にあったという証拠だ」と極めて巧みな情報をマスコミに流したのだ。


 タイムスリップした蒼真そうまたちは、コレジオの遺跡を捜すため、本渡城下を歩いている。

 天正の天草合戦(1589年)で本渡城は落城し、すでに跡形もなかった。


 本渡城は宣教師の記録によると、ドン・ジョアン(天草久種)の居城(河内浦城=現河浦町)に次いで領内では最も堅固、また非常に広壮な城で、伯叔父のドン・アンデレ(天草伊豆守=種元)が城主だったと書かれ、城内には教会もあった。


 しかし1589年、小西行長の命令に従わなかった豪族、天草氏に対し、小西・加藤清正連合軍が城を攻める。

 いわゆる「天正の天草合戦」(天草国人一揆)で戦の結果、城主と奥方、従兄弟を加えた家人の全員が城で亡くなり、そして子供を含めたキリシタンの信者1300人が命を落とした。

 本渡を含む周辺の宗団が壊滅するほどの激しい戦いだったと記す。


 宣教師のルイス・フロイスが書いた『日本史』には主人たちが討ち取られ陥落寸前、もはやこれまでと、女たちは髪を切り、鎧兜を身につけ敵陣へ立ち向かっていった。

 その数およそ300人と記録されている。


 さらに、奥方の「お京の方」が討ち取られる時、「おのれ憎いこの梅、花は咲くとも、やわか実を実らそうか」と無念の叫びをあげて果てたという「兜梅伝説」も地元に残っている。


「本渡城ってまだ本丸の場所がハッキリしてないんだよね、

 謎が多すぎ。なあ、陽翔はると


「ルイス・フロイスみたいな有名な宣教師も来た城だし、南蛮の宝物がどこかに隠されてるかもしれないよね?」


「城が落ちたときに、こっそり隠したって話もあるし。宣教師関連の施設、怪しいかも。陽翔はるとはどう思う?」


「近くの丸尾ケ丘に天草学林コレジオの記念碑があるんだよ。

 西の久保の池も近いし、もしかしたら本当にそこがコレジオの場所だったりして」


「城からその池まで続く古い尾根道があるんだよ。

 コレジオもその辺にあるのかな?新聞にも載ってたし。


 倉壮くらあき先生は河浦の方だって言ってたけど、実際どっちなんだろうね?

 ハッキリした証拠がないと、本当の場所なんてわからないよね。

 陽翔はるとがその史料を見つけてくれよ!」


 突然、花音かのんは老婆と会った時の会話を思い出す。


「そう言えば、洞窟で会ったおばあちゃんも、時の権力者が迫害でコレジオを破壊するかもしれないって、場所は教えてくれなかったよね」


「財宝が絡んでるからかな?」


 楽人らくとは場所が謎なのは、財宝を密かに隠したからではないかと推測するが...。


「とりあえず、池の周りを調べてみようよ。

 何か手がかりが見つかるかもしれないし」


 蒼真そうまはそう言ってみんなで池の調査に取りかかることを決めた。


【クライマックスバトル】

 蒼真そうまたちの後をつけて来た悪党のトレジャーハンターのタイプらは、同じ方法を使ってタイムスリップし、池のほとりで蒼真そうまたちを待ち伏せていた。


 コレジオの遺跡を探しに来た蒼真そうま一行をタイプが見つけた。


「やっぱり来たか。待っていたぞ!小僧ども。

 財宝の秘密が書かれた古文書を渡せ!

 さもなければ。ふふふ...」


「そんなの持ってないって!

 本気で、こいつら何考えてんだ?頭おかしいんじゃないの?」


 不遜な笑いを浮かべるタイプに蒼真そうまは怒りを抑えきれずに言い放つ。


「嘘をつけ!」


 蒼真そうまたちと悪党らとの壮絶なクライマックスバトルが始まった。

 彼らは新たに習得した力と新兵器を駆使し、仲間たちと連携して悪党たちに立ち向かう。


 タイプは黒魔術ブラックマジックを使う。

 持っていた金属探知機がみるみるうちに、大きな剣になり、天から大きな音とともに雷が剣に落ちた。


 雷の矛先は蒼真そうまたちに向かった。

 その衝撃は凄まじく、ドーンと激しく吹き飛び、池に落とされた。

 アップ、アップしながら、蒼真そうまは溺れそうになる・・・


「助けてくれ!泳げないんだ!」


「俺に掴まれ!」


 すがる蒼真そうま楽人らくとは手を差し伸べ、力強く引っ張る。

 お互い信頼に満ちていた。

 池に落ちて溺れそうな蒼真そうまたち。果たして助かるのか。


(次回予告)

 熾烈な戦いの中で、仲間たちの絆が試されようとしていた。

 悪党たちにも変化が!そして物語は意外な展開となる。


 タイプは激昂し、怒り狂った。

「あの裏切り者めが!」


(続く)

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