魔族と牧師様

天然無自覚難聴系主人公

プロローグ

第1話 プロローグ

 厚い雲が空を覆い、昼間と言うのに暗い空。天気も不安定だからだろうか、村はいつもより静かだ。そんな静寂を壊す音が森に響き渡る。鳥が騒がしく飛び、森が騒めく。一度ならず、二度、三度と響く地響きここまで揺れが伝わり、大きな魔法を使った余波が感じとれる。


「今日は荒れていますね。洗濯物も乾きそうにありませんし、取り込みますか」


 風も出始め、いよいよ天気が怪しくなってくる。一枚の洗濯物が風に飛ばされ、落ちる。面倒ながらも拾いに向かい、騒がしい森を見る。


 ガサガサと草木を雑に掻き分ける音が近づいてくる。ただの小動物ではない。

「――ハァ、ハァ……」


 傷がつき、泥に汚れ、フラフラとする少女。誰かに追われているのだろうか、なぜ森から来たのか。そんなことは後回しに体が動く。


「たす……けて――」


 そう言って少女は眠るように目を閉じた。これが最初の出会い。世に言う禁忌であり、神が言う救済である。

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