追いかける先の夢は
レイラ
追いかける先は
俺は
えっ? 何の世界記録かって? それは水泳。俺の得意な泳ぎはバタフライ。200mバタフライでは、自分で言うのも恥ずかしいけれど、日本新記録が出た。
でも、ここからが大変なんだ。日本新記録は出るものの、世界新記録には、ほど遠い。日本新記録は1分52秒43。世界新記録は1分50秒43。まだ、2秒もある。この2秒はかなりの差だ。
必ず世界新記録をとりたい。世界新記録をとれば、世界に俺の名を知ってもらうことができる。俺は世界で戦える選手になりたいんだ。その理由はオリンピックがあるからではない。世界と戦えることが楽しいからだ。
もちろん、その過程でオリンピックに出られることがあれば出る。オリンピックが全てではない。
良い感じ。水の感覚が良いぞ! 今日こそは行ける! 世界新記録! いや、泳ぎに集中! 自分の泳ぎに最後まで集中しろ!
あと、15m。まずい、隣のレーンが追い上げてくる。かなり差があったのに、ラスト25mから急にギアを上げたのか。
ん? ペース配分、間違えたか。かなりきつい。腕が上がらなくなってきている。最初に飛ばし過ぎたのか。
苦しい。前に進んでいない感じがする。何故だ。どこで配分を間違えた? あと何メートル? 15mから進まない。俺、沈んでる? なんで、こんなに苦しい。息が吸えない。酸素が欲しい。酸素が……
手が壁についた。あれ? ラスト15mから記憶がない。何が起きたんだ。電子版を見上げて、呆然とした。
1分56秒23。なんだ、このタイムは。どこで間違えたんだ。日本記録からも遠ざかってるじゃん。
世界新記録が遠ざかってしまう。
「ん?」
日差しが眩しい。リアルに映し出されたあの映像は夢だったのか。夢だとしたら悪夢だ。日本記録をとったときのタイムより2秒も遅い。それに泳いでいて苦しかった。ゴールが見えないような感じだった。
これは、まだ世界記録は先のことで、今の俺にはとれないということを教えてくれたのだろうか。
なら、もっとフォームの見直しをして、より速く泳げる泳ぎ方を見つけないと。俺は絶対にあきらめない。必ず、世界新記録という夢を掴んでやる。きっと、今は停滞する時期なのかもしれない。それでも大丈夫。
世界記録をとる夢を追いかけ、今日も俺は練習しに行く。
追いかける先の夢は レイラ @kasunaka
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★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 18話
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