一文
Rotten flower
プロローグ
「ごめんな、何も守れなくて。」
どこから来たかわからない手紙には、最後にその一文と「南」の印鑑だけが押されていた。
同居人、南卓也の行方が分からなくなってから六日ほどが経った。今までは狭く感じていた四畳半も今ではかなり広く感じてしまっている。机の上に置いた財布を漁る。300円しか残っていない。
死が目前に迫ってきた。今はこんなことをしている暇じゃない。早く日雇いのバイトを探さなければ、って。もうそんな力も残ってないや。
不意にインターホンが鳴った。残された気力で立ち上がり、扉を開ける。
そこには誰もいなかった。視点を下におろすと、神様のようなものを模した大きな石とそれをおさえとして下に手紙、最後に俺の好物であるコロッケが置かれていた。
コロッケを食べる。まだ温かく美味しい、何日ぶりのご飯だろうか。ありがたい。
俺はそれを一頻り味わうと次に一緒に届いた手紙を確認した。
「お金に困っているのなら、ここへ来てください。」
それと赤い丸が付けられた江戸川区の地図。ここなら行っていた大学の最寄り駅だ。片道140円ほどだった覚えがある。
興味はあるし一度行ってみようか。
俺は特に何も持っていくものはないと、小銭を財布の中へ戻し、一度向かってみることにした。
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一文 Rotten flower @Rotten_flower
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