第19話 権能の力
『光神ルースミールがひとたび宣言すれば、それは真実になる』
【真実】の権能。
創造主より神のみに許されたスキル。
あまりにもどうしようもないほど強力すぎる力。
そしてかつて創造主すら、滅ぼした、隔絶した能力。
「ふふっ、何を怯えているのかしら?ただの問題提起なのだけれども」
ルースミールはダルテンの頭を踏みにじる
ルースミールはホホホとわざとらしい笑い声をあげた。
そしてねっとりとした粘り付くような視線をエリルに向けた。
「まあ見た目は美形、なのよねえ?天使族は創造主様より寵愛を得たはずですものねえ?」
突如場の空気とルースミールの表情が一変した。
「ああっ!麗しくも愛おしい、まさにわたくしをも凌駕する圧倒的な美の結晶、そしてすべてを支配する絶対的な力をもつ全ての創造主、ノアーナ様っ!」
ルースミールは恍惚の表情で、頬はうっすらと桜色に上気していく……
「わたくしこそがっ!ノアーナ様にふさわしい唯一の存在っっっ!!!」
ルースミールは自らを、まるで子供が無邪気におもちゃを壊すがごとく激しく抱きしめ…
「そのノアーナ様が、ついにっ!ついにっ!ついにっぃぃぃぃ!!!!!」
突如光を失った目をエリルへと向けた。
「だというのにっ!!!貴様たちゴミ屑がっっ!!!!!!」
天使族騎士団副団長のエリル・ディービッドだったものが、一瞬でチリと化した。
彼の装飾品と腰に差してあった祭典用の装飾剣が落下し乾いた音を立てた。
まるでもともと存在がなかったかのように。
「ダルテン、説明してくださるわよね?」
ルースミールは、にぃっといやらしい表情を浮かべダルテンを見下す。
「我が至高なる絶対的主、ノアーナ様が顕現された。にもかかわらず、ここにいない理由を」
光神ルースミールはもちろん知っている。
天使族に落ち度などないことを。
だからこれはただの八つ当たりだ。
魔王ノアーナの顕現は、彼女たち光の眷属により計画的に行われていたものだからだ。
しかし儀式の最中に、かっ攫われたのである。
忌々しい、魔王ノアーナに最も近きもの、によって。
その儀式を仕切っていたとされるのが、ダルテンを中心とする王国第1騎士団だ。
実際にはルースミールが最も信頼し寵愛するルリースフェルトの独断で仕切っていたのだが。
一番の責任者であるルリースフェルトにはお咎めはない。
お気に入りだからだ。
だが気が収まらない。
なので天使族に怒りの矛先を向けている。
至極単純な話だが、だからこそこの上なく厄介であった。
ただの八つ当たりによる怒りが、場合によっては神罰となってしまうからだ。
「ルースミールさまあ♡その辺で許しあげてくださいましー♡今回失敗したのはあたし、ルリースフェルトちゃんなのです。しくしく。ダルテン様はぁ、悪くないのですよ?」
先ほどから様子をうかがっていたルリースフェルトは、エリルが消されたのを確認してからルースミールに抱き着きウソ泣きをした。
光神ルースミールの眷属第3席ルリースフェルト。
燃えるようなやや癖のある赤毛をツインテールにし、いたずらっ子のように落ち着かない瑠璃色の大きな瞳。
小さな鼻に可愛らしいみずみずしい唇。
ツルペタロリ属性の少女だ。
過剰にフリフリの多い黄色のプリンセスドレスを着用している。
存在値は800。
意外なほどに強いのも、この余裕につながっている。
頭の回転が速く性格の悪い彼女はわざと馬鹿なふりをする。
実は眷属一賢い。
いやずる賢い。
ルリースフェルトは一応エリルが消されたことによって、この茶番のステージが移行したと感じ取ったため、飛び出してきた。
ダルテンを踏みつけていたルースミールは抱き着いてきたルリースフェルトをやさしく抱きしめると、先ほどまでの激情が嘘のような穏やかな顔でささやいた。
「ああ、ルリース。なんて優しい娘なのでしょう……わかりましたわ。この娘に免じてエリルの不敬は許しましょう。さあダルテン、面を上げなさい」
ルースミールは何事かつぶやくと、ダルテンにかかっていた束縛が解除された。
「…っ、……ありがたき幸せ」
何とか感情を押し殺しながら、ダルテンは強くこぶしを握り、片膝をつき、騎士の礼をとった。
「では質問を変えましょう。あなたたちはこちらにノアーナ様をお招きできるかしら?」
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